第18話:救出完了と魔道具の検分
シアの指輪を起点に彼女の元へと飛ぶと、いつものメイド服では無く別の服を着ていた。
「シア!」
思わず抱きしめながらシアの細い身体に回復魔法をかける。
「あははーすみませんユウキ様、ご学友を助ける為に毒を使いました」
気まずそうなシアの声が腕の中から聞こえる。
「そうか、シアは大丈夫なの?」
「はい、ユウキ様と過ごす様になって毒物が効かなくなりました」
「だとしてもごめん、無理させたね」
「いえ、私が望んでやった事ですし。それにアイツに対して凄くムカついたんで……」
シアが指差す方を見ると、何かの水溜まりとその中心に真新しい頭蓋骨があった。よくよく見ると周囲の人攫い達は皆、原形をとどめていなかった。
「シアさん……ちょっとやり過ぎ……」
「てへっ☆」
可愛らしくてへぺろをするシア、可愛らしけど流石にスルーできない。
「帰ったらお説教ね」
「うぐっ……駄目ですか?」
「いくら効かないと言っても、ここまで強い毒を使うのは心配になるよ……」
「すみません……ですが……」
俯くシアが左手を見る、そこには禍々しい模様がシアの綺麗な手を侵食していた。
「これは?」
「あちらの部屋の扉を触ったら弾かれまして……触った左手を見るとこうなってました。更に影魔法が使えなくなったんです」
「魔法が?」
「はい、でも魔道具はつかえました」
「そうか……『——鑑定』」
鑑定で見えたのはシアの左手にある文様はどうやらユークニア産の魔道具の様で呪術・呪いの類で使うと触れた者達の魔法の発動を阻害する様だ。
「ユークニアか……魔道具は?」
「えっと……すみません。鍵穴が魔道具の本体だった様で、私の毒で溶けていしまいました」
「いや、まだ使えるなら危険だったし壊れて無かったら壊すつもりだったしね『——解呪』」
シアの左手をなぞると呪紋が浮かび上がり消えていく、解呪が出来なかったらかなり不味かっただろうな。
「とりあえず、皆を運び出そうか」
「はい」
建物の外に運び出し、回復魔法と解呪をかけるしばらくすると皆が目を覚ます。
「うぅ……ここは……」
「確か、道で絡まれてる女の人を助けてたら変な男達に囲まれて……」
目を覚ましたみんなは攫われる直前の事を覚えていた様だ。
「大丈夫皆?」
「あ、上凪……」
「ごめん、救出に時間がかかった」
みんなの前で頭を下げる、すると攫われたみんなが驚いた顔をする。
「いや、俺達もすまない。何か出来る事が無いかと思って勝手に住民の避難を手伝ってたのが原因だ」
「うん、兵士の人達も現場に行ってもらっちゃったし。私達も危機感が足りなかったよ」
「俺達以外の皆は?」
「えっと、攫われたのはここに居るだけ。他は皆城に戻ってたよ」
「うがー、となるとやらかしたのは俺達だけかぁ、すまん上凪!」
「ごめんなさい上凪君、私達先走りすぎました……」
「狙われるのがわかってて、無理しちゃってごめんなさい」
「囮になれないかなぁと考えて、上凪君を呼ぶの後回しにしちゃった……ごめんなさい」
「正直、甘く見てました……」
頭を下げて来る、攫われたクラスメイトたち。
「いや、俺も皆の保護を最優先にするべきだった、すまない……それと、俺の事を考えてくれてありがとう」
互いにペコペコと謝り合う、それから俺は一度クラスメイトを城まで送り届け魔道具に詳しいユフィを呼びアジトに戻って来た。
「そういえばユウキ様、こちらが皆を拘束していた鎖になりますご確認を」
厩に停めてあった馬車には皆を攫う際に使ったであろう魔道具がそのまま積まれていた。ユフィは魔眼を、俺は鑑定で調べていく。
「これは……眠りの魔道具か……」
こっちは眠りの魔法と、内側の面が触れると自動的に拘束する魔法が付与された仕組みの様だ。
「眠りの魔法は一時的、だけど自動拘束の魔道具と組み合わせると半永久的に使える」
「これは、厄介だね……」
「それと影収納が付与された魔道具の樽になります。二重底で上には普通の物資を入れれる様になってます」
空けられた樽はぱっと見普通だが、底を外すと影収納に自動的に繋がっているみたいだ。
「うわぁ……これ便利だね」
規格外の空間収納の魔道具と比べるのは間違いだが、影収納であれば容量次第ではかなり便利に使える。
「ん、影魔法の付与自体がかなり高度。だけどこれは結構雑に組まれてる」
「雑?」
「ん、付与術式をコピーしてペーストしてるだけ。粗悪品」
「コピーした粗悪品か……」
「ん、大元作った人は良い魔道具師。だけどコピー品を作ってる人はかなりがさつ」
「そうなんだ……」
「そうみたいですね~こっちは壊れてますし」
シアが壊れたという樽を見せて来る、確かに魔道具の術式が雑に組まれてズレてるな……。
「ん、ここはもう良い。後は私の工房で検分する」
「それじゃあ、あの部屋に向かいましょうか」
「そうだね、ユフィに見てもらいたい方はあっちだし」
「ん、楽しみ」
三人で、クラスメイト達が拘束されていた部屋へ向かうのだった。




