第35話:昼食会と歌姫たち
「今日はみんな~集まってもらってありがと~今日は私のお友達と一緒に堅苦しくなく歌う事にしたの! 短い時間だけど楽しんで行ってね~」
「「「「「わああああああ!」」」」」
小さな劇場でスポットライトを浴びているのはリアさんと顔を真っ赤にしたジャンヌとミュリと冬爪さんだ。
三人が、「どうしてこうなった!?」って顔でこちらを見ている。
(まぁ、話すと長くなるんだけどね……)
突如として起きたこの事態を思い返すのだった。
◇◆◇◆
「やぁ、いらっしゃい! 待ちくたびれちゃったよ!」
嬉々として手を振っているリアさん、それに驚いて隠れる冬爪さん。
「あれ? どうしたの翠ちゃん」
「多分、少し恥ずかしいんだと思います。いつもは着ていない可愛らしいドレスを着てるので」
「(こくこく)!」
後で思いっ切り首を縦に振る冬爪さん、着替えた冬爪さんは翡翠色のドレスに腰まである長い髪を少しふんわりとさせている、髪と薄いメイクはアグネスさんの渾身のお仕事だ。
「そっかーでも、折角だし見せて頂戴♪」
「!?」
くるりと回って冬爪さんの手を引く、そのまま引っぱり出される冬爪さんは目を白黒させている。
「うっわ……可愛い、ねぇカミナギさんこの子、私の妹にしていい?」
「(っ!!)???」
目を開き、呆然としながらなすがままにされる冬爪さん。
「そうは言われても、俺は冬爪さんの兄妹でも無いですし両親でも無いので……」
「ざーんねん♪ それじゃあ座りましょう」
そう言って指をパチンと鳴らす、ギャルソンの青年が現れ奥の部屋にある席へ案内される。
「皆、おまたせ」
そこには神楽組の皆とミュリ、巴ちゃんが座っていた。ユキとメアリーは耀達とお祭りを回っている。
「おかえりなさい優希さん、少し遅かったですね」
「あぁ、アグネスさんが気合入っててね」
「そうだったんですか、でも流石ですね。翠の可愛さを上手く引き出してます」
「うんうん、でも鈴香も十分綺麗だよ」
深紅のドレスにマリンブルーのイヤリングとネックレスが映える、髪も太い編み込みに真珠が煌めいている。
「あ、ありがと……こうして言われると恥ずかしいわね……」
「いつも言ってるじゃん? それにファンの人にも言われてるだろうし……」
「それはそれです、優希さんに言われると嬉しさと恥ずかしさがふわっと沸き上がるんです」
顔を少し染めつつ手で顔を扇ぐ、そんなところも愛らしい。
「そうなんだ、でも喜んでもらえて俺も嬉しいよ」
そう言って笑うと、視線が突き刺さる、振り返ると皆が呆れていた。
「いやー流石にいちゃ付き過ぎでしょ……」
「そうですね、私もおめかしてるのに……」
「これが女たらし……」
「いいなぁ……」
「何を言っているのか判らないけど、リンカの反応を見る限りカミナギさんはまるでイタリア人の様に口が上手いのね」
チャラいイタリア人と言われ、レオナルドが頭を過る……いや俺そんなに軽く無いでしょ!?
「いや、流石にそれは……俺もそこまで口達者じゃ無いし……思った事言ってるだけだし……」
「「「「「へぇ~」」」」」
1人翻訳機を通しているが皆の視線が痛い……どうしてだ。
「ほ、ほら! 料理が来たし食べちゃおう!」
丁度いいタイミングで入って来た料理に話を向ける、ギャルソンも微笑みながら料理を出してくれる。
「そうね、時間はあるんだし。食べちゃいましょうか、料理に失礼だわ」
(何とか気を逸らせたようだ、後で巴ちゃんとミュリは褒めておかないとな……)
アグネスさんに感謝しつつ、料理に手を付けるのだった。
◇◆◇◆
「それで、カミナギさん。一つ提案があるのだけれど、いいかしら?」
下がとろけ落ちる様なコース料理を食べ終えた後、リアさんがこちらに話を投げる。
「どうしました?」
「今日の夜なのだけれど小さな劇場を借りたの、もし良かったらミュリさんとミドリちゃんとジャンヌを呼ぼうと思ったのだけれど大丈夫かしら?」
「「!?」」
「良いですけど……大丈夫なんですか?」
「えぇ、元々私が勝手にやってる事だし。ゲリラ的にやるものだからね。飛び入りも歓迎だし、皆で歌う曲も用意しているわ」
聞いてる限りは、かなりハードルは低いみたいだしいいんじゃないかな?
「い、いやだがな!? 私みたいな無名が出たら問題になるんじゃ!?」
「(こくこく)!」
あたあたしながら返すミュリ、そして言葉がわからない筈なのに力強く頷いている冬爪さん。
「大丈夫よ、さっきも言った通り、飛び込みも歓迎なのよ心配しなくて良いわ。それにさっき聞いたミュリさんの澄んだ歌声、私また聞きたいもの!」
「あう……だが……」
ちらりとこちらを見るミュリ、そう言えば久々に俺も聞きたいし。
「俺も聞きたいな、久々に」
「あうぅ……」
真っ赤になるミュリ、少し考えて頷いた。
「わかった……優希が言うなら……」
了承してくれた様だ、冬爪さんはその姿におろおろしているが神楽組の皆も頷いている。
「大丈夫、さっきリアさんには新曲のデモテープ聞いてもらったから」
「私達も、翠ちゃんの歌が好きだし。是非他の国の人にも聞いてもらいたいわ」
「そうそう、折角の憧れの人なんだしやっちゃえ!」
「がんばー」
皆に言われ、諦めたのか小さく「出ます」と呟いた。
「決まりね! じゃあ、ジャンヌも捕まえないと!」
そう言って、リアさんはどこかに電話をかけるのだった。




