第95話:王都制圧戦③
◇リティシアside◇
「よしっ今なら……」
二階のギルドマスターの部屋の窓から侵入した僕とクロコ、感じる気配は少なくこれだけなら問題は無さそうだ。
――カタンッ……ギギッ……。
(さて、敵の数は……)
鏡で廊下を見る、2体が邪神化して職員を貪っていた。顔が見えるのだが、見た覚えのある職員でやたら胸がデカかったのを覚えている……けっ……。
「…………ふっ!」
足音と気配を消しながら、ご主人様より与えられたナイフで近づき首を落とす。
私が薬以外に得意としてたやり方だ、いくら人間を捨てているとしても、人間と同じ知覚範囲なら一切気付かれないだろう。
「…………ふーーっ……」
深く息を吐く、近くの部屋から手近にあった毛布を職員の遺体にかける。
(今までの僕なら絶対にやらなかったな……)
これも変わったという事なのだろう、足音を立てずに進み階段まで来た。
(糸を垂らして……よし……降りてすぐの所には、邪神は見えないわね……)
用意していた縄梯子を架けをそれを伝い降りる、幸運か周囲に邪神は居なかった。
(倉庫はもう一つ下の階になるのよね……)
壊れた受付扉の奥に進み中に滑り込む、そこから地下倉庫へ降りていく。
(さて……南京錠はっと……)
鍵空けの技で扉を開ける、幸い中は荒らされておらず素材が大量に入っていた。
「クロコ、お願い」
「はい、シアおねーちゃん」
クロコの影の空間に素材を放り込んでいく、ありったけの素材を詰め込みクロコは影に戻る。
「次は教会ね……」
音を立てずに来た道を戻るのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇リリアーナside◇
「姫様、こちらをどうぞ、魔王様より渡された物です」
付いて来てた補給兵の1人が、私に血の入った小瓶を差し出してきた。
「ありがとう、皆も今の内に休息を取ってね」
「はい!」
厳重な封を切って開ける、濃厚な優希様の匂いが鼻腔を突く。
「はぁぁぁああ……美味しい……」
魔力が回復していく、飲み過ぎるのも厳禁だが今日くらいは許されるだろう。
「ひ、姫様! 失礼します!」
「はい、何でしょうか?」
「逃げ延びた住民の手当てが終わりました」
「かしこまりました、ありがとうございますね」
優希様の血を飲んだ後で気分が良いので顔が笑顔になる。
「は、はい……」
「さて、それじゃあ戻りましょうか……」
「あ、あの! もう一つ報告が……」
「何かしら?」
思い出した様に言う兵士に向き直るのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇セレーネside◇
「ふぅ……到着……」
教会の上に到着すると一息つく、シアさんはどこだろう……。
『お疲れ様、ほら水だよ』
「ありがとうございます」
周囲を探しながらマーレルさんの出した水を飲む。
「っつ!?」『!?』
急に背後に気配が現れたので振り返り剣を構えると、そこに居るのはシアさんだった。
「おっとごめんね! 驚かせちゃったかな?」
「いえ、大丈夫です、すみませんいきなり剣を向けちゃって」
「大丈夫大丈夫、僕も完全に気配を断ってたし」
「全く気が付きませんでした……」
『そうだねぇ……私も気付かなかった……』
「これでも元暗殺者だからねぇ~今はご主人様のメイドだけど」
たはは~と笑うシアさん。
「そうだ、どうしたの? こんなとこまで?」
「あーそれは……シアさんがお薬の素材を取りに行くと聞いたので……」
シアさんまじまじとみる、それにしても怪我一つない様だ。
「よかったぁ……私、援護に来なくても大丈夫でしたかね?」
苦笑いしながら言う、私より強い人を心配して恥ずかしいなぁ……。
と思って居たらシアさんが抱き付いてきた。
「ありがとう、心配して貰えるのは凄く嬉しいし、セレーネちゃんが来てくれたのは凄く心強いよ」
「あ、ありがとうございます」
「あーずるいです! 私も!」
クロコちゃんが現れて抱き付いてくる。
「よし! それじゃあ行こうか!」
「わかりました!」
「はい!」
『おーい、三人共』
先程から姿が見えなかったマーレルさんが、床から生えて来る。
「うわぁ!? びっくりしたぁ」
「ひゃう!? びっくりです……」
「どうしました?」
『それがねぇ……今見て来たけど、奥の倉庫に向かう聖堂内、かなりの敵居るんだよ』
「どのくらいですか?」
『少なくとも15体は居るね……』
「うわぁ……」
「じゅ、じゅうご……」
「それは……厳しいですねぇ……」
『ただ、普通に戦ったらね!』
「「「普通に?」」」
私達は首を傾げる。
『そう! 作戦はね――」
「それは……」
「ヤバいですね……」
「はわわわ……」
マーレルさんの作戦に私達は驚きを隠せなかった……。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇リティシアside◇
作戦を伝えられた後セレーネさんとマーレルさん、そして僕とクロコが大聖堂の化粧梁の上に居た。
『それじゃあ準備は良いかい三人共?』
「「「はい!」」」
『作戦! 開始!!』
頭上で甲高い音が響くとクロコの影転移で鐘が落ちて来る、王都中に響く鐘なのでものすごく大きい、それが影の中から邪神たちの頭上へ落ちて来る。
「クロコ、影に!」
「はい!」
クロコが影に飛び込んだ直後、大聖堂が揺れる。
音言い表せない程の鐘の音と破壊音が響き、壁のガラスにひびが入ったり割れたりする。墜落した地面の畳も砕け、一気に土煙と燭台の火が消える。
「今の内!」
飛び降りて僕は奥の倉庫へ向かうのだった。
作者です。
更新遅れてすみません、ちょっとメンタルブレイクされてて死に体でした。
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