第24話:シャリアの正体
「さて、それじゃあ後は頼んだよ」
「わかりやした、旦那!」
翌朝、昨日のどんちゃん騒ぎですっかり二日酔いになったレギルとライラを治療した後、街の外縁部で別れの挨拶をしていた。
「アミリアちゃん! 頑張ってね!」
「は、はい……」
「また、会いましょう」
「うぅ……ライラおねえちゃん……」
「ほら、レナちゃん泣かないの」
ライラがレナを抱きしめる、色々と任せてたし仲良くなったもんだ。
「さて、そろそろ出発しないとね!」
「そうでっせ、出発しないと停戦時間中に抜けられないでさぁ」
「そっか、それじゃあありがとう、二人共」
「任せて下せえ! 旦那の奴隷達も上手くやりますよ」
「それじゃーね、皆!」
セレーネが手綱を引き、馬車を発進させる。
二人は、姿が見えなくなるまで手を振っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「二人共、そろそろ越境よ、この地域は小競り合いが多いからなるべく道を外れない様にね」
小窓からシャリアの声だけ聞こえる。
「は、はぃ!」
「シャリア、魔王領の首都までどのくらい?」
「そうね、3日くらいで到着するわ、それに二日目の夜にはセレーネの住んでいた宝石獣の隠れ里へ到着できるわ」
「そっか、それじゃあセレーネ。里に行くのは先に首都で用事を済ませてからでいい?」
「はい! 大丈夫です! ご主人様のためならどこにでも付いて行きます!」
目を輝かせるセレーネ。いや、セレーネを送り届けるのも目的の一つだからね。
「いやいや、家族に会いたくないの?」
「え? 両親に挨拶ですか!? そんなぁ~気が早いですよぉ~」
「いや、説明しに行くだけだからね? なんでそんなにくねくねしてるさ……」
後、結構スピード出てるんだから、前見なさい前。
「そういえばシャリアは、どこまで乗ってくんだ?」
「私も首都で良いわ。実家がそこだから」
「シャリアってまさかお金持ち? いろんな所に行ってるみたいだし」
「そうねぇ~遠い様な、近い様なものね」
「深くは聞かない方が良いな、面倒が発生しそう」
「あら? 良いのよ聞いても……」
絶対厄介事が割り込んで来そうだからやだなぁ……。
「いや、それは今度でいいや」
「なによ~つれないわねぇ~」
そう言って窓を閉めて行ったシャリア。
「さて、セレーネ急ごうか」
「はい!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから1時間後、関所で俺達は捕まっていた。
「この犯罪者め!!」
「ちょっと! ユウキは犯罪者じゃないわよ!」
「宝石獣の隷属化は魔王国では禁止だ! 法を犯せば捕まえるのが道理だろ!」
「それはごもっともだな」
「ユウキ!?」「ご主人様!?」「お兄様!?」
三人が驚いた顔で見て来る、そりゃねぇ。
「シャリアさん! このままじゃユウキが!」
「そうねぇ……ねぇ兵長さん貴方どこの所属?」
「何だ? お前は」
「だから所属を聞いてるのよ~♪」
ニッコリと笑顔で聞くシャリア、相手の兵長は不思議そうな顔をしている。
「だ、第七師団のミルナル閣下の直属だ……」
「へぇ……あのルミナルのねぇ……」
そう言うとシャリアは、人化を解いてサキュバスの姿に戻る。
「!?」
その姿を見た兵長さんの顔が引き攣る。
「私達は用があって王都に向かうの。それにその子に隷属魔法をかけたのは私、人間国の中で動きやすくするためよ」
「は、はいぃ! かしこまりました! 直ちに通させていただきます!」
慌てて俺の縄を外し走っていく兵長さん。
「なぁシャリアって、まさかかなりの偉い人?」
「一応ね、世襲制だけど魔王軍の幹部やっているのよ」
「幹部!?」
「はわわわわ!」
「シャリアおねーちゃんすごーい!」
「ありがとう、レナちゃん」
そう言ってレナの頭を撫でる、貴族かそれに準ずる位だと思ってたけど。幹部かぁ……。
「おまたせしましたぁ~!」
兵長さんが慌ててはいって来て馬車の準備が出来たと教えてくれた。
「それじゃあ、行きましょうか」
シャリアがそう言うと兵達が左右に並び頭を下げていた。
(なんか極道みたいだな……魔王軍ってそんな感じなのかな?)
そうして、再度出発するのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それからは特に騒動も無く、予定していた今日の宿へ到着した。
「ここらへんじゃ、一番安全面が高い場所ね。魔王領の貴族も使うから、ここなら警備もやりやすいわよ」
そう案内してくれてシャリアと共に、やたら豪華な宿の前に居た。
「それじゃあ、部屋に関しては私が取って来るわ。セレーネは馬をお願い」
「わかりました!」
そう言って二人共降りて行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇???side◇
「やっときた……」
僕は鐘楼の上で聖女たちを見張っていた、事前に渡されてた情報と同じ装飾の施された馬車を見つける。
「3日も待った、でも準備は十分」
この街の事は知り尽くした、こうして暗殺するのにも条件は整えた。
「待ってろ、僕が殺してあげるから……」
そうして僕は沈みゆく闇の中に身を投げた。




