第61話:死者に会えるダンジョン②
『――――♪♫♪♬——』
駄目だ、出ないな……。
転移札を使って出雲まで飛んだ俺は【黄泉比良坂】まで来ていた。
元々【黄泉比良坂】の伝承が残る場所で、観光地としても有名な場所だった。
伝承としては皆が知ってる通り死んでしまった奥さんの伊邪那美命へ会いに赴いた旦那の伊邪那岐命が見ないでくれと言われた変わり果てた奥さんを姿を見て逃げ出し、それに怒った伊邪那美に追いかけられ、色々あってこの坂で離縁したというお話だ。
「まさかね……」
不安になり受付を経て特別に中へ入る。
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◇黄泉比良坂ダンジョン―1階―◇
「各階層毎に鳳さんの魔力を探していくか……」
『——探索』
「この階層には居ないな……」
聞いていた話だと最深部で死者に会えるというらしいので。まずは最深部まで行く事にする。
「それまでに見つかればいいけど……」
身体強化して駆ける、道中のゴブリンとかは全部無視して飛び越える。
「ん? 前に人が居る? いや……戦ってるのか?」
小走りに変えて近づく、どうやら苦戦はしてない様だがどうにもおかしい……。
「なんでここに小学生が?」
「はああああああ!!」
「ギャギャ!!」
「とおおおおお!!」
「ぎゃふぃ!!」
1人は男の子、年齢は12歳位でもう一人は女の子、年齢は少し下がって10歳位。
鑑定をしてみるが、普通の子供の様だ、だったらここで何をしてるんだろう……。
(ともかく声を掛けるか……)
わざと、足音が響くように歩き近づくと、二人は戦闘態勢に入る。
「何だ、人か……」
「びっくりした……」
「驚かせちゃったね」
「いえ、ここだと良く人と会いますから……」
武器を置きゴブリンの魔石を手際よく抜いていく。
(何で討伐証明を取らないんだ?)
「俺は、上凪優希って言うんだど、君達に質問良いかな? お腹空いてたりする? お菓子あるんだけど……」
そう言って空間収納から焼き菓子を取り出す。
『ぐぅ……』『くぅ……』
二人のお腹が鳴る。
「食べる?」
そう聞くと二人共迷っている顔をしている。
「大丈夫変な物は入ってないよ」
「「いただきます……」」
それからレジャーシートを敷いて水魔法で手を洗うと、二人共食べ始める。
「そうだ。名前、聞いても良いかな?」
「柳原 悠真です」
「柳原 さくらです」
「それで、えっと……君達、今の時間だと学校だと思うんだけど、どうしてここに?」
そう聞くと二人共黙ってしまった。
「わかった、深くは聞かない、用があるのはここの階層?」
そう聞くと首を横に振る二人。
「まさか、一番奥?」
そう聞くと二人共頷いた。
(そうか……)
「それで君達、ここに入るには証明証が必要なんだけど……」
そう聞くと二人共、首を横に振る。
「それじゃあ、どうやって入ったの?」
「裏山の所に穴があって入った」
「武器は?」
「落ちてたから……」
よく見ると所々錆びていて刃こぼれもしてる、捨てられたものを拾って使ってるのだろう……。
(どうしたもんか……)
「……………………ふぅ」
恐らく、この子達は何度もここに来て潜っているはずだ、戦うのも凄く上手だ。ここで無理矢理に返しても絶対また来る、今だって隙を見て逃げようとしてる位だ。
「仕方ない……一緒に行こう」
そう言うと二人は怪訝な顔をする。
「大丈夫、悪いようにはしないし、それにっ」
通路の奥から出てきたゴブリンを、投げナイフで仕留める。
「こう見えてかなり強いから!」
それを見ていた二人の顔が少し和らいだ。
「それじゃあ、まずは武器を変えようか」
そう言って空間収納から短めの剣を二本取り出した、二人が使ってるのより少し短いけど、これ位の方が動きやすいはずだ。
そう言ってお互いに振って貰うと、さっきより格段に動きが良くなった。
「それとこれを」
簡易魔法鎧を二人に取りつける、これで大ダメージは受けないはずだ。
「「ありがとうございます」」
「それじゃあ出発しよう、俺も探してる人が奥に居るはずだから」
そう言って歩き出す。
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◇黄泉比良坂ダンジョン―5階―◇
「さて……二人共、大丈夫?」
あれから一時間位歩き通しなので、そろそろ疲れてくる頃だ。
「大丈夫です」
「だいじょうぶ」
「それじゃあ、この部屋抜けたら休憩にしようか」
そう言って扉を開け室内へ入ると、オークが3体とゴブリンが3体づついた。
「ひっ……」
「お……オーク……」
「二人共、オークは初めて?」
後で震えながら剣を構える二人。
「「は! はい!!」」
「じゃあ、オークを倒す練習をしようか」
「え?」
周囲に氷の槍を生成して飛ばす。
「ブギイイイイイイ!!」
「グギャアアアアアアア!」
残り一体を残して全滅させた。
「「は?」」
「それじゃあ、ほら、剣を構えて!」
呆けている二人に声を掛ける。
「「ええぇぇぇぇぇぇ!?」」




