第27話:優希キレる。
『只今、入って来た情報によりますと、東京元赤坂にある迎賓館にテロリストが侵入、総理大臣及び他数名が拉致されたとの情報が入ってきました』
画面の向こうから聞こえるアナウンサーの悲痛な報告に、皆が一瞬動揺したが、すぐさま戦闘準備に入る。
「皆、これ」
各々にメンテナンスが終わった魔法鎧が返される。
「それじゃあ、先ずは迎賓館に転移するね、エアリスの魔力はそこから動いて無いから」
「よかった、とは言えないが……姫様は連れて行かれなかったんですね」
「あぁ見えて、魔法の技量は一級品だからね。それで比較的に攫いやすい巴ちゃん達を狙ったのかと思うんだ」
「巴ちゃんも護身術は使えますが、銃相手だとどうしようもないですからね……」
「そうだね、無駄に抵抗しなきゃ、それ以上は危害が加えられないだろうし。それじゃあ作戦はこうしようか。転移に合わせて、耀とユフィは俺達を包むよう全方位に防御魔法を、そこから【獣化】と【魔装】状態の俺とユキで周囲の制圧、メアリーはもし相手に狙撃手が居たら位置は逆算出来る?」
「難しいですネ……距離が離れれば時間はかかりまス」
「ん、それなら私の魔眼で位置を把握する」
「わかった、ユフィとメアリーのコンビで狙撃手が居たら対処してくれ」
「その間、耀に防御を任せるけど大丈夫?」
「任せなさい、いざとなれば皆、防御魔法の魔道具は持ってるから」
「わかった。でも無理はしないでくれ。最悪、建物は壊しても修復でどうにかするから」
「わかったわ」
春華は冬華の防御に集中してくれ、冬華は迎賓館の二階に行けそうなら二階から外の敵を無力化してくれ。
「「はい!!」」
「追跡は、俺に任せて」
流石に今回は腸が煮えくり返っている、流石に許すつもりは無い。
「優希が怒ってるの久々に見た……」
「あれが、ガチギレモードのおにーちゃん……」
「凄い圧ですね……」
「カッコイイ……」
「ユキ、見る目ある」
「わかりまス、カッコいいでス」
「あぁ、こう……グッとくるな……」
なんか途中から話があらぬ方向へ……
「と、ともかく! 出発しよう」
耀とユフィが杖を出して、詠唱を始める。
「「準備完了(よ!)」」
「5」
「4!」
「3」
「2」
「1!!!」
「『——転移!!』」
一瞬で目の前が変化する。
「「『————防御魔法!!』」」
その瞬間、俺達を囲むように防御魔法が展開された。
「ユキ!!」
「ウオオオオオン!!」
「『——魔装・バルバトス』」
両足に大きな鉤爪を魔力で創り出し、腕は魔力で形成した刀身を備える。
防御魔法の内からユキと共に飛び出し、そのまま銃を構えたテロリストを銃ごと両断する。
そうして二人殺したとこでユキも二人倒したのか、室内のテロリストは無力化された。
周囲を見ると橋池さんとゴンさん、それと数名の職員と方厳さんが倒れている。
(『——鑑定!』)
鑑定をすると重体だが皆生きている、ただこのままだと非常に危険である。
「どうするか……」
「ユウキ様!」
エアリスが走ってこちらへやって来る、その途中エアリスの魔法鎧が狙撃を弾いた。
「ユフィさン!」
「ん、あっち、ビルの上」
室内でより一層の強力な音を響かせ、メアリーは弾を発射した……次弾が飛んで来ないという事は狙撃手がどうなったかはお察しである。
「ぐっじょぶ」
ユフィが親指を立てる。
よしこれで治療へ入れる。
「エアリス、治療したいんだけど銃弾が残ってて」
「ユウキ様、空間収納を使いましょう」
そのエアリスの言葉に思い出す、そうか周囲2メートル圏内なら収納できるんだった。
「そうか、わかった!」
空間収納を発動して銃弾を体内から抜き取る、その後にエアリスが外傷の一部を、俺が内臓を復元する。
「橋池さんとゴンさんは終わり! よし、後4人!」
「こちらの方々の傷は治しました」
「わかった臓器を再生させる!」
そのまま4人を一気に回復をする。
「ふぅ……『——鑑定』これで大丈夫」
「お疲れ様です」
そのまま震えているエアリスを抱きしめ背中を撫でる。
「ごめんね、怖かったでしょ、震えてる」
「それを言うなら、ユウキ様もですよ。震えてます」
「だって、大事な奥さんを失うとこだったんだよ」
「そんな簡単に私はやられません、ユウキ様の妻ですもの」
身体を通して伝わるエアリスの心音に、心が落ち着いてくる。
「ありがとう、もう大丈夫」
「優希!!」
耀の声が聞こえた瞬間、壁が吹き飛んだ。
咄嗟に耀とユフィが広げた防御魔法で壁などは弾かれたが、目の前には武装したヘリが飛んでいた。
「ちょ!? ヘリ!?」
「ユキさン、怪我人を一か所ニ!!」
「わかりました!」
「優希さン、コイツは私ガ」
「いいよ、メアリーこいつは俺がやる」
武装したヘリを倒そうと前に出るメアリーを手で抑える、俺は刀を空間収納から取り出し、だらんと腕を降ろす。
「『——魔装……バルバトス』」
今度は魔力で刀ごと包む、そのまま飛び出し、一瞬でヘリの眼前まで飛ぶ。
「——ふっ!!」
そのまま魔力で刀身を伸ばした刀でヘリを両断する、無論中に居る人ごとだ。
そして残骸を蹴り落として、みんなの元へ戻る。
わらわらと敵が残りの敵が出て来るが、防御魔法の内から飛んでくる冬華の矢に銃器を破壊される。
「ミュリ、後の指揮は任せた」
「わかった!任せてくれ!」
「じゃあ、ちょっと行って来るよ」
「巴ちゃんをお願いします!!」
「ああ!」
春華の言葉を受け直後に転移を発動した。




