第30話:『盗賊が 現れた!』
特に何もなかった翌日、朝食を食べた後出発をする。
「今日の昼頃には、アジトに着く、じゃあ役割を確認しよう」
「耀と春華とユフィとミュリの4人が遊撃・人質の確保、神楽坂さんと冬華は馬車の防衛と人質の防衛だね、それで俺が頭目の確保か」
「任せて!」
「頑張ります!」
「ん」
「春華も居るからな、人質は問題なく助けられるだろう」
「そ、そんな事…」
「この中で一番堅守って言葉が似合うからね…」
「ん、春華の防御は、抜けるか怪しい」
実際春華の移動しながら、複数人の防御が出来るのは人質確保して回るのにはうってつけだ。
「防衛かぁ…」
「冬華ちゃん…つまんないかもしれないけど、大事な仕事だから」
「ううん、すっごく大変そうだなぁって…」
「あ、そっちなのね…」
「まぁ馬車には魔法鎧と同じ布で幌を作ってるから矢とか弾くけど、救出した人を守るのに必要だから」
「そうだ、冬華。これ」
そう言ってユフィが矢じりが魔石になった矢を手渡す。
「これは?」
「昨日作ってた、魔石の矢。相手の魔法を撃ち抜くのに使える」
「わぁ…すっごい!」
「それに、これだけある」
ぱかっと開けた木箱の中には矢が100本近く詰まってた。
「昨日の夜は暇だったからね~ユフィさんと一緒に、ちまちま作ってたわ!」
「ヒカリ、作るの上手い、助かった」
「じゃあ、それで防衛してくれ」
「はーい!」
「それじゃあ、後1時間くらいで到着だから、装備の確認を終わらせよう」
「「「「「「おー!」」」」」」
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから馬車を走らせ30分、近くまで来たので広範囲の探知魔法を使いつつ進んでいく。
「探知に引っかかった!この先で、待ち伏せしてる」
「どうする?」
「護衛の探索者風の格好で、御者台から【鑑定】を使うのはどうだろう?」
「それで敵の頭目が居たら、俺が相手するという事で」
「それで私達はアジトまで、飛翔魔法を使って行くわ」
「じゃあ雑魚を倒したら…神楽坂さんと冬華は馬車を進めてもらって大丈夫?」
「昨日教えてもらったから大丈夫だよ!」
「私も一応だけど出来るよ」
「よし、じゃあそれで行こうか!」
地図を仕舞い各々装備を装着する。
「それじゃあ俺は、フードを被って…」
「私も被ろう、顔が割れてるだろうからな」
そして俺とミュリは、フードを被り御者台へ座り、馬車を進める。
しばらくして進んでいると目の前に魔法鎧を着た大男といかにも盗賊!って身なりの人達が現れた。
「うぇへへへ」
「ひゃひゃひゃ!」
「残念だったなぁ…探索者さんよぉ…その馬車と積み荷は置いて行ってもらおうか!」
「御者さん!中へ!」
ミュリが馬車の中に入る、じゃあ俺は。
「————鑑定」
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名前:ダミサン 性別:男 年齢:30
状態:高揚 ジョブ:盗賊
備考:盗賊団頭目、雛菊の魔法鎧を装着。
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「皆、頭目がここに居る!作戦開始!」
「「「「「了解!」」」」」
『『風よ、我と我が友の背に大空を翔る翼を!———天馬の翼!』』
馬車の中でユフィと耀が呪文を唱える。
―――――ドンッ!
4人が轟音を立てて飛び出して行くと、馬車を囲んでいた盗賊は呆けている。
「さて…後は…雑魚だけか…」
「ヒャヒャヒャ!コイツ状況が分かってねーですぜ!」
「全く!こちらには魔法使いも居るんだぞ!」
「まぁ…多勢に無勢なら勝てないと思うよね…普通なら」
馬車から神楽坂さんと冬華が飛び出す。
「ぎゃあ!」
「ひぐっ!」
「うわっ…こいつら弱!」
「なんだ~せっかく、新しい矢で戦えるのに~魔法も何もクソザコなんですけどぉ~」
「なんだこの女とガキ!クッソ強いぞ!」
「残念だけど、俺達、お前らより圧倒的に強いんだ」
二人が嬉々として剣を振るい矢を放つ。
「囲め!囲め!あの弓使いから落とせ!」
冬華に向けて火球が放たれる……が、魔法鎧に全て遮断されて届かない。
「すごーい!これ便利だよ!優希おにーちゃん!」
「冬華ちゃん!遊んでないで!早く倒さないと!」
後から盗賊の悲鳴が聞こえる。
そう言ってる合間にも盗賊の断末魔が聞こえる。
「さて…ダミサンだっけか?お前は戦わないの?」
「ハン!俺が出て行っちまったら!あんなのすぐに片付いちまうからな!」
「大層な自信だねぇ…それもその魔法鎧のお陰かい?」
「おっ!兄ちゃん若いのに見る目あるじゃねーか!そうだ、稀代の魔法鎧職人のヒナギクの最新の逸品だ!お前じゃ一生お目にかかることが出来ない代物だぞ!」
そういってガハハハと笑うダミサン、まぁ雛菊さん攫ったんだから当然か。
「それで…その稀代の職人さんにお会いしてみたいなぁ~」
「ガハハハハハ!!ヒーヒー、あー腹痛い。それでお前何言ってるんだ?もう死ぬのに」
ダミサンがジロリと睨みつけて来る、圧にもならない威圧をさらりと躱す。
「ほう…言うだけあるな。丁度いい、この鎧の試しをしたかったんだ」
そう言ってダミサンが大剣を担ぐ。
「お待たせ!上凪君」
「ごめんねおにーちゃん、時間かかっちゃった」
盗賊を一掃した二人が俺の隣に並ぶ、周囲を見ると頭を射抜かれた盗賊や盗賊の首が転がってた。
「二人共、怪我はない?」
「「大丈夫!!」」
「だらしねぇ奴等だな…仕方ねえ、俺がまとめて相手にするか…チビはともかくもう一人の女は上玉だ…楽しみだぜ」
「なによー!私もその内、お母さんみたいないい女になるんだから!」
「いや、冬華は今のままで十分魅力的だよ?」
「そう?ありがと~おにーちゃん!」
「うぇ…おまえらそうゆう趣味かよ…まぁ兄貴の頸の前で犯〇てやるから待ってろよ!」
「うえぇ、おじさん臭そうだからヤダ!」
「うん…確かにお風呂に入ってなさそう…」
「止めなよ、二人共…獣人の鼻で気にしてないって事はもう鼻が馬鹿になってるんだよ…」
「「うへぇ…」」
「おいやめろ!俺は毎日入ってるぞ!」
「いや、でも獣臭そうだし…」
「うん、ちょっと寄りたくないかな~」
「てめぇ等…ぶっ殺す!」
大剣を構えて一直線に突っ込んでくる。
「よし!二人共、馬車へ!————即席!煙幕魔法!」
火球と水球を出してダミサンの手前でぶつけ水蒸気爆発を利用した目くらましをする。
「うおおおお」
「上凪さん!」
「優希おにーちゃん!」
「「愛してる!」」
そう言って馬車を走らせて行く。
「おーおー羨ましいねぇ~」
足を止めたダミサンが歩いてくる。
「お前も、奥さん位作ったら?」
「ハン!俺は女を征服するのが好きなんだよ!乳繰り合うのは好きじゃねえ!」
「さもしいなぁ…」
「まぁ、残念ながら、お前はもうあいつらの顔も見れないがな!」
「そっかーじゃあお別れのキス位、しとくべきだったなぁ~」
額を抑えあちゃ~ってポーズをする。
「まぁ、お前も。もうお仲間には、会えないけどね」
「ガハハハ!!言うじゃねーか!一応理由は聞いてやろう!」
「お前のアジト、は俺の仲間が潰しに行ったからね」
「ガアハッハハ!!!!コイツァ傑作だ!俺の仲間にはな!勇者パーティーの賢者にも勝った魔法使いが居るんだぞ!お前らの仲間は今頃消し炭だよ!」
「へぇ…因みに勇者パーティの賢者の名前は知ってるのかい?」
「そんなもん当人が言ってたぜ!大賢者【ユリドゥス】を倒したってな!」
「へ?」
全く知らない名前が出てきたんだけど…誰?
「ガハハハッ!!驚いて声も出ねーか!!」
(とゆうかコイツ俺達の事知らないのか…)
俺は呆れながら返す。
「あーなら大丈夫だな…」
「面白い冗談だな!!負け惜しみか!?」
「だって…本当の賢者とそれに匹敵する魔法使いが居るんだからね」
恐らくアジトの方だろう、森が吹き飛んだ。




