表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/91

暗闇でキスマをつけるのはやめましょうという反省

もう遅くなってしまったし、俺は風呂だけ入りに自分の家へ帰宅していた。その方が効率がいいし、宮野家のお風呂の順番に迷惑をかけなくて済む。

来海もちょうど宮野家で入浴している。


2人が同時に入ることで、その後一緒に過ごす時間が長くなるーーーーいやはや、完璧だ…!

5軒先の幼馴染の関係性は、最高である。


まあ、お風呂に一緒入りたくなかったかといえば、入りたかったけど、まあ、いつかに期待……だ。

まずは他に積むべき恋人の経験値がある。

その後だな。


リビングに居た父さんに一言断って、俺は風呂に入った。シャワーを流しながら、ふと思った。


おい、待て。俺これからどうなるんだ?


来海の口ぶりだと俺が宮野家のリビングか和室に寝るのはお許しが出なさそうだし、多分、来海の部屋一晩過ごすことになる。

そして、恐らく再びのネグリジェの登場。


耐えれるか?

いや、無理だろ。

……まあ、耐えるけど。


耐えるけど!


浴槽に浸かって、俺ははあ、と息を吐いた。今のうちにリラックスをしておこう。

天井の染みでも見て……

あ、なかったわ。父さんが几帳面すぎてなかった。


まあ、ぼんやりしてみる。


…………ぼんやり……


…………。

……………いや、できるかぁぁぁっっ!!!



浴槽のお湯がジャボジャボと激しく揺れた。浴槽のふちに大波となってぶつかり、水が跳ねる。

俺は、片肘を立てて、自分の頭を乗っけた。


マズい、落ち着けぇ……

落ち着け………


和室の一件がマズかった。

来海の……その……声みたいなのを間近で聞いてしまって、興奮が冷めそうにない。

可愛い来海が……大人の女みたいになっちゃってたんだぞ…?……無理、興奮する……


しかも、アレをリビングのすぐ横でやってたって…

都さんも遼介さんも居たのに?

すごい、何だろう罪悪感というか、背徳感というか、訳がわからなくなりそうだ。


…来海がねだるから!可愛くねだってきたから!

あー、不可抗力だろ、あんなん!


俺はあーだこーだと女々しく考えて、何とか気持ちを落ち着かせて、風呂を上がった。


着替えてから、髪をドライヤーで乾かしていると、洗面所に用があったらしい父さんが入ってくる。

無言で入室し、電球の替えを探し出す。

俺が「そこにある」と場所を示すと、「ああありがとう」と父さんはお礼を口にした。


「父さん……」

「何だ?」

「俺は馬鹿息子すわ。すみませぬ」

「……?はあ……?」

「………はあ」

「いや、自慢の息子だと思う」

「ええ!?怖っ、何だよ急に!」


俺はドライヤーをボォンボォンさせながら、ぎょっとした。

怖ぁっ!?初めて言われたわ、そんなん。

大倉碧人生初と言っていい、父さんからのお褒めの言葉なんだが。

いや、まあ、嬉しいけど。


「………まあ、夜は長いが、頑張れ」

「何のこと!」


父さんって、やっぱり何か天然入ってるよな。

何を指してるかが謎の会話が多い。うん、俺が理解してないだけか?




一連の支度を終わらせて、後はもう寝るだけの状態で、俺は宮野家に戻った。


「あ、碧くん……」

「ぐふっ、」


玄関開けた瞬間からネグリジェ姿の来海が立っていて、吐血しかけた。これ以上俺の理性をガジガジ削らないでもろうて。


いや、なんて言うんだ?服自体はスカート部分か長いワンピースタイプで、別に露出してるわけではない。寧ろ露出が少ない。

しかし、ゆったりとした胸元のシルエットが、来海の胸の存在が立派なだけに、もうチラリズムを極めてる。

見たい、見えそう、でも見えない…!という誘惑に、完全に遊ばれていた。


しかも、お風呂上がりでほかほかと上気した頰が、蠱惑的な美少女の完成である。

この美少女と一晩同じ部屋!

しかも、恋人だからええじゃないかと、自分の中で理性放棄の予感!


俺は、交渉することにしてみた。


「ううん。来海、俺さ、やっぱりリビングで……」

「………う、うん」


俺が来海に向かって歩き出すが、来海との距離は縮まらない。それどころか……


「ん?何か遠ざかってないか?」

「ううん、き、き、気のせいだよ……っ?」


俺は一歩踏み出す。来海は一歩下がる。

近付く。………後ずさる。

寄る。………退く。


「いや、 俺からどんどん遠ざかってるじゃないかやっぱり!?」

「………だ、だってぇっ」


来海は、恥ずかしそうに俯いた。

しかし観念したように、俺を「きてきて」と手招く。

俺は言われた通り、来海に近付いた。


来海はぷるぷると震えながら、自分の首筋にかかった黒髪を持ち上げた。

露わになる白い首筋には、赤い跡が2つ。

大変、心当たりがあった。


暗闇の中で何となくの位置でつけたのが、良くなかった。おまけに、確認のしようがなかったので、加減が分からなかったという言い訳をここに記しておこう。


明日も学校だというのに、制服で隠れない位置に、赤い跡がくっきりついてしまっていた。


肩の近くにしたつもりだったんだけどなぁ……


「………」

「………うう、嬉しいけど、明日どうしよう……」

「…すまん」

「………いいよ……嬉しいもん……」

「ごめんな………」


初心者が暗闇の中でやるのはやめましょう。

ここに誓いを立てておきます。


う、すまん、来海………っ。

何より俺ががっついてた証拠があるのが、マジでいたたまれなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ