思わぬ再会
水上高校と、遠くの保育園の触れ合い交流体験。
ボランティアに来てくれそうな人数は確保出来た。
(あのよいしょ団体が性懲りもなく現れたが、俺は偽情報を流して、別のボランティア活動に向かわせた。社会貢献って大事だよね!)
大義である。役目は果たした。
ので、俺はそいつらに任せて部活に行こうと思ったのだが、引率の高嶋先生に「来い」と言われてしまい、首根っこを引っ張られた。
電車の中で揺さぶられ、一回乗り継ぎをし、しばらく歩いたところに、その保育園はあった。
水上市のお隣、花房市にある『はやぶさ保育園』だ。
そこ、『はなぶさ』じゃないんか。市を代表して名乗るのは、勇気が足りなかったのだろうか。それとも大人の事情なのか、そもそもまったく関係ない線も考えられる。
「どっちだと思う?」
「いや知らなー」
部活仲間の谷山にどうでも良さそうな顔をしてあしらわれる。何だ冷たいな。俺たちは、昨日は部活で死闘を繰り広げた仲じゃないか、もっと熱くなるべきだ。
ぐすん。
「僕は関係ない節を推すね。経営者が宇宙好きとか」
「颯っ!やっぱりお前は違うわ。俺の親友だわ!この寛大なる優しさよ!」
「前から思ってたけど、大倉はちょくちょく松枝にデレるのは何なの?」
「悪いな谷山。嫉妬するな」
「してねーわ。1ミリもしてねーのよ」
俺がデレるのはこの世で来海だけなので、谷山のそれはちょっと冗談がすぎるというものなのだが、颯に信頼を寄せてるのは間違いない。
俺が出会ってきた中でも、颯はトップクラスに優しいのだ。
一時的な優しさでなく、何というか長期的な優しさを兼ね備えた男なのである。俺のどうでもいい話に付き合ってくれる聖人。
それに、俺の憧れの来海の父親である遼介さんにどことなく似ているものを感じる。特に、雰囲気が。
何かロスにいるもう1人の幼馴染のクソイケメン君の歯軋りの音が聞こえてきたのは、気のせいだろう。
そうこうしているうちに、はやぶさ保育園の門をくぐって、俺たちボランティア一行は、施設にお邪魔した。
「さー、お前ら着いたぞー。きちんとしろよー?」
「はい!」
「はい」
「……っす」
「ぐへへ」
「きゃわわ」
「……おい、後半大丈夫か?変な返事が聞こえて来たぞ?」
我らが担任、高嶋先生の顔が怪訝になった。
真っ先に俺を見てきたけどね、俺じゃないのですよ高嶋先生。
俺と颯は至って普通の返事、谷山は不良的返事、問題児は残りの女子2人である。
1人は、現在大絶賛失恋中の来海ファンクラブリーダーの那須。そうとう元カレに酷い振られ方をされたらしく、その傷を可愛い子供たちで癒してはどうかと俺がボランティアに誘った。
「きゃわわ」のほうである。
まあ、まだ分かる擬音か。
きゃわいい、が、きゃわわ、になったのだろう。
しかし、「ぐへへ」はアウトだろ。「ぐへへ」は。
元々このボランティアに自分から参加を申し出ていた女子のようである。他クラスなので名前は知らんが、保育園を前にしてぐへへやるのは、ヤバいだろ。
大丈夫か?
施設の廊下を進むと、俺たちはまず職員室に向かう。
「ようこそ水上高校の皆さん〜、ありがとうございます本日は来てくださって!子供たちも喜びますぅ」
分厚い手をぱちんと合わせた拍手。
園長先生が、ルージュを引いた真っ赤な唇でにぃと笑う。頭にかけてるサングラスと、首に巻いたバンダナ等のアイテムを見て、癖の強そうなおばち……女の人だと思った。
園長先生は、廊下を進みがてら、俺たちにボランティアの内容を教えてくれる。
「今日は皆さんには4歳児クラスの担当をお願いしようと思ってますぅ。言葉もいっぱい話せる年頃の子なので、たくさんお話してあげてくださいね〜!」
園長先生が「どうぞぅ〜」と4歳児クラスの教室のドアを開いた。
中に居たのは、20人近くのたくさんの子供たち。
きゃきゃ、とおままごとをしてたり、積み木をガジガジ舐めてたり、自由気ままに昼寝してたり。
親戚も俺より上か同学年ばかりなので、高校生になるとこんな小さい子と触れ合う機会はなかった。
こんな子供ばっかりが居る空間ーーーー
きゃわいい!
パラダイスじゃないかーーっ!
俺、子供好きだよ。
可愛いもん。
きゃわわの那須の気持ちはよく分かった。この光景を予め予測して、気持ちがはやってしまったんだな?
うん、ぐへへ女子の気持ちは分からん。
わくわくしながら中に入ると、思わぬ再会があった。
「あ…!」
「あー!はなのにいちゃん!」
茶髪の天パが特徴的。
つい先日に、空港で迷子になって家族を探す手伝いをした幼女ーーーー
ののちゃんが、そこに居た。
何だろう……最新話アップする度に、ブクマが減っていくからもうアップしない方がいいんじゃないかと思ってる自分がいる……。
いや、書きますけどね……。
既に第三章は書き上げてるんですけども。
もちろん書きますけども!
ままならない。
という最近のお悩みでした。すみません。




