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浮かれてる男vs美少女ファンクラブ

駅までの道を手を繋ぎながら、歩く恋人たち。

周りからの視線などものともせず、寧ろ見てくださいといわんばかりに、ぎゅうぎゅう手を絡ませてる男女の姿。

部活帰りに部活仲間と帰りながら、俺はそれを見て、よく思っていたものだ。


ーーー俺もやりたい!


俺も来海とやりたい!


……と。


も、もちろん、正直、まあ、まあ…?

た、多分両想いだろうなと思ってたし、頼んだらしてくれそうだったなあ…とは思ってたけど、して、物事には順序というものがありまして。


お互い、帰りは部活仲間と帰るのが定例だったし、来海が友達と楽しそうに話しながら帰ってたから、その時間をもらうのは悪いなと思って、俺はなんだかんだで来海とあまり一緒に下校したことがなかった。


しかーし。


いやはや、それは幼馴染時代の話っ!

俺はもう来海の彼氏ですし?

誘っちゃってもいいポジションなのでは。


よし、誘っちゃおーう!ということで、俺は朝の段階で来海に、申し出ていた。

今日は一緒に帰らないか、と。


来海は俺の誘いを聞いてにこにこしていた。

そして頷いた。


言うの遅いよ碧くん、これから()()一緒に帰ろうね?と。


…………。



俺は、固まった。


な、何てことだっ!


バレていたーーーーーー!

本当は彼氏彼女になったからには毎日登下校一緒にしたいけど、でもそれって迷惑かと思って、チキって「今日」とかいう条件つけたの、俺の彼女は見破ってるぅ!


さ、流石〜。


そうか、俺視点だと来海とは付き合いたてなんだが、

来海からしたら、1ヶ月近く経ってるのか…


改めて俺の彼女は、来海にしか務まらないと思った朝でした。



担任の高嶋先生から、明日の保育園のボランティアの追加資料を受け取り、校長と世間話をした後、俺は部活に勤しんでいた。

ラケットを振る動作ひとつ、今日の自分は羽のように軽い。


「ふ……、これが来海ちゃんパワーか…」

「ちょっ、!意味分かんねぇこと言いながら、スマッシュを鬼のように決めてくんな大倉マジでお前!!?」


うむ?

悲鳴のような声がコートの向こう側から聞こえてくるが、あんまり耳に入ってこなかった。


何せ、俺の頭の中は、部活を終えた後の来海との下校のことを考えていっぱいだったのだ。

はは、コンビニとかでホットスナック買って分け合ったりとか、いいなあと思ってたんだよな。

どっか寄り道したい。


あ、でもあんまり遅いと来海の両親に心配かけちゃうしな……部活終わってからの下校時間って、結構遅いし。可愛い美少女を夜に連れ回す悪い彼氏になってしまう!?やだわ、そのレッテル。


あ、ていうか、都さんと遼介さんに恋人になった報告しに行くべきか?昔から、「ちゃんと教えてねお祝いするから」と2人には言われてきたし、落ち着いたら挨拶しに行くか?

いや、なんかそれはそれで急に緊張してきたな?

よく知ってる大人に娘さんくださいって言うの、微妙に恥ずいというか……


「谷山ぁー!彼女の両親に挨拶しに行くとき、どんな格好して行けばいいと思うー?」

「意味分かんないのにお前のことだから意味分かってしまうのが怖いわ!?どうせ宮野さんのことだろ!?てかそんな変なこと考えながらスマッシュ外さずに決めてくるの、おま、鬼畜かよ!?」

「えー、ひどいわー。こっちは真剣に悩んでるのに、鬼畜とか言ってくる谷山クン…っ!」

「おま、マジで、!?くそーぉ!何でさらっと俺が悪いみたいになってんだーぁっ!?」

「冗談だ。いや、悪い悪い。真剣にやるよ」

「え。いやっ、それはそれで困るぅー!??っか、速いってお前!?」


谷山がさらに悲鳴を上げた。

ふ、谷山悪いな。

今、俺は最愛の幼馴染が彼女になって、絶好調なんですわ。(ドヤ)


……うん。そろそろ谷山に殴られそうだから、やめとこ。(自律)




部活の終礼の後、俺は着替えてから昇降口で来海を待っていた。

校則で禁止されてるのでスマホの代わりに、明日の小テストの英単語帳を開いて、流して見ていると、俺の周りが騒がしくなった。


否、正確には綺麗な円を描いて、取り囲まれていた。


「うぇーい、うぇーい。恋人になって浮かれてる大倉やーい」

「珍しく勉強なんてしちゃって、知的アピールですかぷぷぷ〜」

「遅いね、宮野さん来るの遅いね…?もしかして、他の人と……!」


「ふ、やかましい」


パタン、と英単語帳を閉じて、俺は野次を飛ばしてくる彼女たちの言葉を一蹴した。

俺は大変上機嫌だったため、彼女たちのだる絡みにも、余裕の笑みを浮かべた。


「くく、まあまあ、そう僻むな。俺と来海がもうそれはそれは順調だからと言って、ジェラる必要はない。これはそう、運命予定説により、最初からーーー」

「「「やかましい」」」

「……あ、はい」


やかましい返しされ、めちゃくちゃ睨まれた。ぐすん。


俺は、はあ、とため息を吐いた。

まさか付き合ってなお、俺にだる絡みをしてくるとは思わなかった。てっきり幼馴染のくせに奇跡の美少女こと来海と距離が近いから小言を吐かれてたのかと思ってたら、ただ俺に文句を言いたいだけらしい。

理不尽…っ!

圧倒的、理不尽がここに在る!


「さてさて。来海ちゃんファンクラブのお前らが一体何の用だ?ただ俺を煽りに来ただけか?」

「ふん。そんな低俗なことしないわよ」

「してたくね?現在進行形でしてなかったけ?」

「あらら。何のことかしら……(すっとぼけ)」


自称ファンクラブのリーダー、那須が頰に手を当てて、「変なこと言ってらっしゃるわこの人お可哀想に」みたいな、こちらを憐れむような視線を向けてきた。


は?ムカつくぅー!

何だこの、暖簾に腕押し感半端ない会話!?都合の悪いこと全部忘れてその顔してくるのは、何なん…!


コイツらはいつもこんな感じである。

華道部は、去年の文化祭で来海に集客の手伝いをしてもらった恩と、圧倒的美少女の魅力で、部員全員が来海ガチ勢と化しているのだ。

来海ファンクラブの拠点にして温床とも言われている。


いや、そもそもな。

お前らからの依頼受けた文化祭実行委員の俺が来海に頼んで手伝ってもらったのに、その恩は忘れたのか?

忘れたのか。そうだよな、都合の悪いこと忘れるもんね君ら(煽り返し)。


「ふんっ。私たちは、ただ大倉に宣言しに来たの!」

「何を?」


那須はキリッと俺を睨みつけて、俺を指差した。俺は首を捻る。


「ふんだっ。いいこと?大倉は付き合い出して浮かれてるみたいだけどねぇっ、宮野さんのこと泣かせたら許さないわよ!絶対に許さないんだから!ーーーーそこら辺の男みたいに……ぐずっ、わたしの、元かえみたいに、浮気して新しい彼女との、やり取りみせてくゆよーなことしたら、ゆ"るさないんだかぁー!!男なんてサイテな生き物よーっ、わーん!!!」


………んおう。

俺は言葉に詰まる。

てっきり嫌味の応酬みたいなのが始まるかと思ったら、このお嬢様風女子はいきなり泣き出したのだ。

サイドの華道部員たちが、彼女の肩に手を置いて慰めていた。


「…えと、あの…だ、大丈夫か?話なら聞いてやるぞ?」

「うぇーん!!!」

「ええ……」


あの、俺はどうすればいいんだ…?


「男なんてみんなケダモノよ!」と那須。


おい、すげえ偏見なんだが。

みんなはなくない?ひとくくりにしないで?


「サイテー!あの天使のように汚れなき宮野さんに男の影があるってだけでも許せないのに!どうせ大倉も優しい顔して心の中でゲスいこと考えてるんでしょ!」

「してないけど!?断じてしてないけど!?俺は来海という天使をどうやってあの純粋なまま保護しようか考えてるくらいだけど?」

「気持ち悪い!」

「ひど」


収拾がつかなくなり、俺は困った。

うん、困った。

来海がこの待ち合わせ場所に来たら、俺が女子泣かせてる男みたいな悪い構図になりますやん。


ええ…

これなら、いつもみたいに来海の過激ファンらしく、俺に嫌味言ってくる方が全然マシなんだが。


俺はちょっと考えて、鞄からクリアファイルを取り出した。放課後すぐに、高嶋先生に貰ったものである。


「那須よ。失恋の傷を癒すならーーーー」

「新しい男、とか言ったら、朝来た時大倉の靴箱の上靴反対にしとくわよ!?」

「脅し優しいのかよ。違うぞ。それはな……」


俺は、にこりと笑った。いやはや、最適解を見つけてしまった!


「ふ。可愛い〜可愛い〜保育園児たちだ。お前子供好きだろ?」

「かわぁ……!」


俺が手渡したプリントに載っている保育園児たちの写真を見て、那須の目が輝いた。

文化祭の時、実行委員の仕事のために俺は、華道部にも見回りに行ったんだが、那須は子供の相手を分かりやすく嬉しそうにしていた。


子供好きには、明日のボランティアはぴったり。

ボランティアを集めてこいと暗に高嶋先生に頼まれていた俺としては、好都合である。

なんなら、俺が行く必要なくなったまである。

あと何人か集めたらいいんだよな?

あれ、完璧じゃない?


「まあまあ、そう泣くな那須。明日存分に癒されてこい」

「ふ、ふんだっ。大倉にしては、分かってるじゃない。きょ、今日のところは引き下がってやろうかしらね!」

「おう。そうしろ」


捨て台詞を残して、校門の方へ去っていく華道部3人。


さーて、これで厄介な来海ファンクラブを撃退したかと思って息をついているとーーーーー、


さきほどと同じ構図が繰り返される。

野郎どもに俺はぐるっと何故か取り囲まれた。


俺の顔が引き攣る。


「賢帝っ!明日保育園児たちと戯れるボランティアへ出向くというのは、本当でしょうか!?」

「是非とも我々もお供させてくだせぇ!」

「賢帝の行く道が、我々に示された進むべき道!」

「…..……」


あの、恥ずかしいから、やめてくれ本当っ!?

しかも真面目そうな顔して眼鏡クィッてしながら言い放つの、やめてもろうて!?


「く、来るな…!」

「賢帝ーーっ!」

「来るんじゃねぇ」

「賢帝ーーっ!」


あーもう!

俺は来海をここで待ってるだけなのにぃ!

来海のファンクラブの次は、謎のよいしょ団体かよ!?

次から次へと!!ああ!


く、来海っ、早く来てくれ頼むーーーーー!

来海ちゃんと早くお家帰りたいよーー!


那須よ、作者と付き合わないかーーー?

……あ、はい。すみません。何でもないです那須様。

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― 新着の感想 ―
作者の分身を転校生として登場させて那須さんが一目ぼれして新たなラブコメが発生なんていかがでしょうww
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