後書き
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え~、聖樹物語、完結でございます。およそ一ヶ月の連載期間でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。それで、せっかく後書きと銘打ちましたので、少し今作について語ってみたいと思います。
今作は比較的短い作品になりました。だって9万字未満。うん、短い短い。でもね、本当はこの作品、短編の予定だったんです。実際の形は連載にするとしても、起承転結の全四話くらいで終わらせたいなぁ、とか思っていたんです。それが気付けばご覧の有様。
…………どーしてこうなったぁ!?
まあやってしまったことは仕方がありません。それでも10万字以内に収めて完結させたのですから、個人的には上手くまとめられたのではと思っています。文字数的にも、製作を含めた連載期間的にも。
内容にも触れておきますと、今作のスタートは「今までとなんか違うこと」でした。それで出てきたキーワードが「魔法少女」。でもマジカルでフリルひらひら~、みたいな設定とかストーリーはちょっと無理でした。で、まあ「魔法少女風」といいますか、こんな形になったわけです。
そんなこともあってか、今回は結構見切りスタートでした。設定がいい加減だったもので、まぁ辻褄合わせが大変大変。矛盾しないように、それでいて説得力があるように考えていくのは大変でした。そのせいで当初の予定よりずいぶん長くなってしまった感はあります。
でストーリーなんですが、当初はサラ(もしくはアンジェ、あるいは咲菜)が軸になる予定でした。でもいざ書き始めたらコイツなかなか出てこないし。これではまずいということで、陽菜をメイン級に格上げしました。
最初はどうかなとも思ったんですが、書き上げてみると案外上手く行ったかなと思っています。物事は普通多角的ですから、表の部分は陽菜が軸になって、裏の部分はサラが軸になって、みたいな。軸が増えたんだから長くなるのもある意味では当然だったわけです。
それに今回は全体的にちょっとシリアスというか、重めの話になってしまったので、陽菜視点の話はちょっとギャグっぽくというか、あえて軽さを出すようにしました。作品のバランス的にもちょうど良かったかな、と思っています。
話の重さについて言えば、今回はちょっと時事ネタと重なってしまいましたねぇ。作者にそんなつもりはなかったんですが、イスラエルであんなことがありまして。そういう部分を参考にしたのは事実なんですが、実際にそういう問題が燃え上がってしまったのを見てしまうと、何とも形容しがたい気分でした。
しかも解決がほど遠いというね。仮に今回の「戦争」に決着が付いたとしても、それでパレスチナの問題が解決するわけではないでしょう。こんがらがって、互いに絡みついてしまった糸は、もうほどけないんじゃないかと思うほどです。
そういうのをリアルで見ていると、自分で書いたことではあるんですけど、ズィーラーとエーデルベルトがああいう選択をしたことに妙な説得力を感じてしまったと言いますか。作中ではかなり悲観的なことを言わせたわけなんですが、確かに楽観的にはなれないよなと思うワケなのです。
だからというのはありますね、ラストは希望の残る形にしたかった。ラストは最初からイメージがあったんですが、デウス・エクス・マキナ的といいますか、ご都合主義的といいますか、どこか強引な気もしまして。それでも説得力といいますか、納得感のある展開にはしたつもりです。いかがでしたでしょうか?
というか、デウス・エクス・マキナって古代ギリシャの演劇手法なんですよね。決して褒められたモノではないと評価されていたようですが、逆を言えばそのころから人間には解決できない問題があったとも言えます。もちろんこれは演劇の話ですが、リアルにそういう問題を見てしまうと「フィクションの中くらい別にいっか」という気分にもなるのです。
これは勝手な憶測ですけど、古代ギリシャの人たちもハッピーエンドが好きだったんじゃないでしょうか。現実はクソだけど、せめて演劇の中くらいは希望や光が欲しい。そんな願望がデウス・エクス・マキナという形になったのかも知れません。だとすればその気持ちはちょっと分かる気がします。
つらつらと書いてきましたが、このへんにしておこうと思います。この作品は決してリアルを批判したり風刺したりするために書いたわけではありません。参考にした部分はありますが、あくまでもエンターテイメントとして書いています。なので楽しんでいただければ、作者としてはそれで十分なのであります。
作者「今作は短いです。誰が何と言おうと短いのです」




