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宮本美玖─伝説のその先へ

 ドラマの撮影が始まって一か月、私は学校にアイドル活動にドラマ撮影、バラエティでの番宣など、過去一番の多忙さを極めていた。


 「ずいぶんお疲れだね、大丈夫?」


 今日はスタジオのセットでの撮影を終えて、今は楽屋で春樹に学校の勉強を見てもらっている。


 こちらを気遣わしげに伺う様子を見せる春樹には悪いけど、正直なところ今はゆっくりしたい。

 勉強を見てもらうなんて言わなきゃよかった…なんて思うくらいには。


 でもこういう時にいつもちゃんとしてこなかったから今の残念な成績があるのだと思うと、だらだらするわけにもいかない。


 実際春樹の教え方はすごく分かりやすくて、もしかしたら学校で教師もやれるんじゃないかと思う。

 …実際にそんなことになったら生徒が暴徒化するのが目に見えてるけど。

 さすがに彼にも苦手科目はあるみたいだけど、私が一番苦手な数学は彼の得意科目らしくて助かっている。


 「うーん…そろそろちょっと休憩しよっか」


 「…する」


 休憩…これがあるからこそ、今の私がなんとか頑張れてると言っても過言ではない。


 四人がけの大きなソファに座る春樹が、おいでと私を呼ぶ…悪魔の囁きだ。

 むろん既に堕ちているので囁きに従う。


 彼の膝に頭を乗せて横になると、彼は優しい手つきで私の髪を撫で付け始めた。


 そう、何を隠そうあの伝説の膝枕である…!


 これを男女の概念として考えた人は天才だと思う。

 男性との密着感に加えて撫で撫でという甘やかし。

 自分の顔のすぐ横にはアレ…おちん…男性の大事な部分があるという淫靡さ。

 そしてそれが許されているのだという信頼感。


 あぁ…これが至高でなくてなんと言うのだ。目には見えない私の体力ゲージが回復していくのを感じる…


 なんか良い匂いもするし…


 ドラマの撮影の中でこのシーンがあった時には役得だと思ったけれど、まさかこんな風にプライベートでもしてくれるなんて思いもしなかった。


 彼はちょっと流されやすいというか、チョロいところがあると思う。

 男性にとっては結構際どいシーンもある原作だというのに、彼は一回もNGを出していない。なんだってやってしまうのだ。

 もちろんそれは良いことだし、俳優として素晴らしい心構えだと思うけど…同時に危うさもある。


 私が彼を守らなきゃ…


 存分に膝枕を堪能する自分を棚に上げて、私は決意を新たにする。


 「あっ、そうだ! 今日はね、こんなのも用意してみたよ」


 そんなことを言う春樹に目を向けると、取り出したのは…棒状の…耳かき?


 「膝枕の定番といえば耳かきじゃない? まぁ人によっては抵抗ありそうだけど…どう? 試してみる?」


 くいくいっと耳かきを揺らしながら訪ねてくる。


 膝枕の定番が耳かき…だと…? 伝説に、その先があったなんて寡聞にして知らなかった。

 確かに耳かきだなんて、言ってしまえば耳の垢…汚いモノを見られる行為に他ならない。


 春樹に耳垢を見られるなんて抵抗は確かにある…けど、汚いモノを見られてしまうという背徳感から得られる興奮も確実にある。


 「た、試しに、お願いしてみようかな…試しに」


 「いーよー、じゃあまずはこっちからかな、内側向いてー」


 されるがままに従い内側を向くと、より密着感が強くなり窒息してしまいそうになる。なんかもう既にクラクラしてきた。


 そんなことを考えていると、耳にそっと手が触れる感触と共に耳かきが外耳孔に差し込まれた。


 「んッ…」


 慌てて口を噤む。これはまずい。

 耳という部位はこんなにも神経が集中していたのだろうか。こんなの知らない。

 続けてカリカリとさするような動きとその音に思考が掻き乱される。


 「ちょ、ちょっとまって、だめ、すとっぷ」


 「危ないから動かないでねー」


 動くななんてそんな無茶な…


 結局終始耳かきの快楽に翻弄されてしまい、終わった頃には打ち上げられた魚のようにぐったりしてしまった。


 「待ってって言ったのに…春樹のいじわる。こんなの休憩どころじゃないよ…余計に疲れちゃった」


 「ごめんごめん、じゃあもうやらない?」


 「それは…またやってもらいたいけども!」


 まったくなんて人だ。

 やっぱり春樹はちょっと普通じゃない。

 私以外に犠牲者が出ないようにちゃんと見張っておかなきゃ…

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― 新着の感想 ―
[一言] いいよね、なんかこう、ちょっとエッチな感じのイチャイチャ感。 そう言えば膝枕して耳掻きしてもらえるサービスってまだあるのかな?
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