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天国と地獄 そして ジゴクノその先

 「……じゃあ、話の続きを話すわね」

挿絵(By みてみん)

 カスミさんのその静かなコトバがリビングの空気を変え、ジゴクの時間の再開を告げる。

 彼女の宣告で、リビングの空気はまるで地下倉庫の冷気がそのまま移ってきたかのように、重く、息苦しくなっていった。


 「あゆむ……」


 カスミの言葉で息もするのも辛いくらい、重苦しくなる空気。

 オレは、カラダをつつむ冷たいモノから逃げるように、あゆむの腕の中で抱かれてガタガタと震えが止まらない膝を隠し、あゆむの胸に深く顔を埋めた。

 挿絵(By みてみん)

 あゆむのシャツを掴む指先には、自分でも驚くほど力がこもっていた。

 カレの規則正しいハートのビートと、わずかに湿ったシャツの感触、そして肩に伝わるおおきなぬくもりが自分に伝わってくる……。


 「このままで居させて……」


 あゆむの腕のなかに出来上がった、オレのためのあたたかなで小さな サンクチュアリ(聖域)

 それは、吹雪の夜に灯された一房のキャンドルのようにあまりに純粋で甘美な「オレとあゆむ、二人だけの聖域」だった。

  ソコは地獄の凄惨な冷たさなど届かない、あたたかなベールに包まれたまどろみの中で互いの体温だけを真実として呼吸する小さな世界。


 「………」


 けれど、その聖域の外側では、カスミさんの視線、言葉が止まることなくジゴクの続きを語っていた。

  アリアリと、おもいだしてしまうくらい生しい詩織さんの屈辱の記憶。

 カスミさんのその生々しい描写が耳に届くたび、オレの「オンナのカラダ」が勝手に反応を始めてしまっていた。

 ショーツがぐっしょりと湿ってくるのが分かる。

 カスミさんの言葉は、まるでそれは言霊の鋭利なナイフのように まだオトコを知らないオレの柔らかな粘膜を切り刻み、物理的な重りとなって膣の奥をずっしりと押し潰してくるのだ。

 まるで、自分があの事件の現場に引き摺り出され、バールの濁った欲望や、あの冷酷なディルドの無機質な感触に中をぐちゃぐちゃに掻き回されているような、悍ましい「同調」。 内壁を逆撫でするような冷たい痛みが、オレの精神をぐちゃぐちゃに侵食しようとする。


(……いやだ、こわい……っ!)


 カラダが小刻みに震える。

 涙が浮かぶのが分かった。


 「きょうこ、お前は怯える必要はない」


 その瞬間、あゆむの手が、オレの背中をさらに強く、壊れ物を扱うように抱きしめてくれるのが分かった。

 そして、あゆむの低く確かな響きを持ったコトバ。

 カレの大きな掌から伝わるぬくもりが切り裂かれたオレの見えない傷口を優しく塞ぎ、凍りついたナカの痛みを溶かしていく。

 外側のジゴクがどれほど冷たく鋭くても、あゆむの腕のなかにいる限り、その痛みはオレの芯まで届くことはない。

 力強い腕の中でとろけるような安心感に包まれ、オレは再び、甘美なサンクチュアリの住人へと戻っていくのだ。


「………ありがとう、あゆむ」


 オレは顔を上げずに返事を返した。

 今、この瞬間のオレをココに繋ぎ止めているのは、この小さな、けれどひどく甘美な温もりだけだった。 「………」声にならない嗚咽を漏らしながら、オレはあゆむの腕の中で震えていた。 このまま世界が消えてしまえばいい。

 

 ――そうすれば、これ以上残酷な現実を知らずに済むから。

 でも、ソレは無理な事だよね……。


 「きょうこ、顔を顔を上げろ」

 「えっ?」


 オレが言われるままカオを上げると、あゆむはイキナリ オレのクチビルを奪う。

 何も脈略もなく、唐突に。 カスミさんと遥さんのいる目の前で。

  挿絵(By みてみん)

 オレも驚きながらも、何時ものように あゆむの顔に手を回しながら静かに目を閉じた。

 クチビルに伝わる何時もの感触。

 いつも通りの大きな安心感から、ガリガリすり減って居たSAN値がみるみる回復してゆくのが分かる。


 「――お前にとってコレが一番のクスリだ。 安心しろ、ココにはお前を傷つけるヤツはいない、今の感覚が全てだ」


 キスを終えた二人。

 あゆむはいつものように、半ばあきれ顔でお抜かしにるけど、カレが言うのは真理だ。

 ――ここには、バールも居ない、詩織もいない。 いるのは オレとあゆむ、そして 目の前の カスミさんと 遥さんだけだから。

 ――どんな怖い事を聞いても、ソレは自分の事じゃ無い。

 だから、だから、震える必要は無いんだったよね……。

 あゆむが教えてくれたクチビルへの感覚がソレを思い出させてくれた。


 「ありがとう、あゆむ。 そうだったよね」


 オレが、あゆむのイケメンの顔をジッと見つめながら返事を返す。


 「きょうこちゃんは、よい身分ね」 


 挿絵(By みてみん)

 けれど、そんなオレの淡い期待を切り裂くように、カスミの鋭い言葉と視線が二人に突き刺さる。


 「アナタは、男の人に甘えれば許され、全てが護って貰えるのだから」


 彼女のあの美しく透き通るような青い瞳が、今は鋭利な氷の刃となってオレを射抜いていた。


 「………」

 

 カスミさんの逃げ場のない視線の檻。

 彼女の言う真理に耐えきれず、オレがあゆむの胸の中にカオをうずめ、カレの体温という、甘く閉じられた聖域にさらに深く縋ろうとした、その時。


 「……ねえ、気安く抱き合って、それで何かが浄化されるとでも思っているの?」


 目を細めたカスミさんの氷点下の声が、室内の甘ったるい感触を鋭利に切り裂いてゆく。


 「きょうこちゃん、アナタ達のその姿、まるで安っぽいロマンス小説のワンシーンみたいね」

 「………」

挿絵(By みてみん)

 カスミは、オレとあゆむに冷たく そう言うと、くるりと きびすを返し、「でもね」、と短くコトバをこぼすと、さらに感情を殺した言葉を継いだ。


 「今、私が話しているのは、娯楽のために消費されるホラーでもなければ、欲望を満たすための官能小説でもないの。 

 詩織さんがその体で味わった 血と泥にまみれた、逃げ場のない『現実(地獄)』よ、ううん、地獄ならモットマシだったかもしれない。 地獄は最初から希望すら無いのだから……」


 カスミはそれだけを言うと、ぺたんと崩れ落ちるように座り込んだ。

 彼女が言う、地獄より残酷な事って――それは、「救い」という名の残酷な餌を、目の前にぶら下げられ続けることだろう。

 人間、最初から完全な絶望の底に突き落とされていれば、案外、心は凪いでいくものだからね。  

 壊れてしまって、何も望まず、何も信じず、ただ機能を停止した石ころのように転がっていれば、傷つくことすら忘れてしまえる。死んでいるように生きれるから。 


 けれど、そこに「期待」という甘い毒が混じれば話は変わる。


 今度こそは状況が変わるかもしれない。  明日こそ誰かが助けてくれるかもしれない。  

 今の、この苦痛には、何か高尚な意味があるのではないか。


 そんな、誰に保証されたわけでもない、実体のない淡い光。  中途半端に「希望」という名の麻薬を打たれると、心はいつまでも壊れきることができずに常に新鮮な痛みを上げ続ける。  

 一度膨らんだ期待が裏切られるたびに、心はどんどん殺されてゆくからね。


 ソンナ地獄を詩織さんはあじわったのだろう……。

 そして、カスミさんもソレを聞いてしまったのだろう。 


 カスミさんの声は、もう震えを通り越して、カサカサとした乾いた響きになっていた。


 「――詩織さんは、バールが去ってからが本当の地獄だったのよ」


 挿絵(By みてみん)


 カスミさんはそう言うとペタンと崩れ落ちるように床に座り込み、涙をながしながら、オレとあゆむ、遥さんを前にして、詩織さんの運命を語りだした。


 あまりに過酷な悪魔の悪戯ともいうべき救いのない運命を。


 バールの軽い謝罪がおわると、


 「じゃ、俺、行くわ」


 その一言。ただそれだけの言葉を遺して、アイツ(バール)は詩織さんから背を向けたわ。

 挿絵(By みてみん)

 (待って……行かないで……嘘よ、このままにするの……?)

 詩織さんは口を塞がれ、後ろ手に縛られ、脚を大きく広げた上げく、二本の異物を深奥に突き立てられたまま、もっともデリケートな場所を洗濯バサミで無慈悲に挟まれた、まるでさらし者のような格好だったわ。


 もちろん、自分の意志で一歩も動くことなんて出来やしない。


 でも、バールは、その地獄のような惨状を一瞥すらしなかった。

 その神聖な聖域を血と汚物で泥まみれにした張本人は、まるでコンビニのレジで打ち間違いを指摘された店員のような軽い態度でパタパタと去って行ったのよ。


 「そして、アイツが乱暴された詩織を放置して逃げ出した後、倉庫は絶対的な静寂に包まれたわ……」

 

 カスミさんは声を震わせながら更に言葉をつづけた。


 「でも、それは本当の孤独ではなかった。

 そこにはまだ「目」があったわ、悪魔の瞳が」


 挿絵(By みてみん)


 「悪魔の瞳?」

 「そうよ、尊厳を削りさる、冷酷な悪魔の瞳よ。

 ――冷たいコンクリートの上に無惨に転がされた詩織の視界の端、一つの小さな「光」が不気味に明滅していたの。

  放置された三脚。その上に鎮座するスマートフォン。 バールが去った後もそのレンズは無機質な瞳のように、詩織の震え、涙、そして剥き出しにされた恥部をじっと見つめ続けていたわ。

 

 ――そのレンズが、今もなお、血の涙を流し、虚無の目をして痙攣する詩織さんの秘所のあられもない姿を、冷たく世界中へ垂れ流し続けけたの。


(だれか……消して……その光を、消して……っ!)


 彼女(詩織)が いくら口を塞がれたまま 血の涙をながしてお願いしても、画面の向こう側では、今この瞬間も彼女の絶望を肴に盛り上がる無数の観客たちがいるのが、流れてゆくコメントでわかった。

 あらたな肉体の蹂躙は終わっても、精神の蹂躙はリアルタイムで加速し続けたわ。

 異物が内部から食い込む鈍い痛みと、洗濯バサミがモンブランを握りつぶす鋭い痛み。

 それらすべてが「エンターテインメント」として消費されていく現実の中で、詩織さんの意識は ゆっくり だが確実に冷たいコンクリートの底へと沈んでいったのよ。


 「……っ、ん、あぁ……っ!」


 涙を流しながら、その時出た湿った空気の中に漏れ出したその声は、かつて「太陽」と呼ばれた少女の、最後の、そしてもっとも悲しい葬送曲だったのかもしれないわね。


(……私は、なんだったの?)


 その瞬間、詩織さんのガムテープで封じられた口の奥で、乾ききった唇が絶望に震えたわ。

 人生のすべてを懸けて守り抜いてきた純潔も家族のために絶やさなかった太陽のような笑顔も、 それらすべては いまこの瞬間も電子信号へと変換され、ネットの海へと垂れ流されている。

 詩織さんにとっての「命」は、アイツにとってはただの「コンテンツ」であり、気に入らなければ上書きし、ゴミ箱へ捨てるだけの「入力ミス」というラベルを貼られたデータに過ぎなかったのよ。


 その事実が、いまなお股間を熱く灼き、内臓を掻き乱す暴行の痛みよりも深く、毒のように彼女の心を腐らせていったわ。


(見ないで……お願い、誰にも見せないで……っ!)


 最後に残った意識の内側から溢れる叫びは、厚いガムテープに阻まれて湿った呻きとなって消えたの。


 でも、悪魔の瞳は容赦しなかった。


 彼女が痛みにもだえ、脂汗を流して絶望に顔を歪めるその一秒一秒を 最もヒワイで残酷な角度から切り取り、記録し続けていったのよ。

  この静寂の中でも世界中の見知らぬ誰かが、画面越しに自分の地獄を娯楽として消費している。

 その事実が皮膚を直接刃物で削られるような、耐え難い羞恥と恐怖となって詩織さんを襲っていったわ。


 彼女の縛り上げられた後ろ手は、逃げ場のない現実を突きつけるように結束バンドが肉を締め付け、血がにじみ出て、すでに指先の感覚は半ば失われていたわ。

 冷たい床から伝わる振動、鉄錆の匂い、自分の中から溢れ出す汚らわしい液体の感触、イカ臭いあの匂い。

 冷酷に自分に伝わる五感のすべてが「お前はもう壊れたのだ」と告げたのよ。

 かつて誰もが「家の太陽」と称え、愛してくれたあの詩織は、いまやレンズに閉じ込められた「壊れた肉の塊」へと作り替えられてしまったの。

そして、自分を自分たらしめていた誇りが、デジタルな塵となって霧散していく。


 「――――!!!!」


 その事実に詩織さんは塞がれた口の喉の奥で、獣のような あるいは壊れた機械のような音が上げたわ。

  それは、どれほど泣き叫んでも、この「記録」を消し去ることはできないという絶望の共鳴だったの。

 詩織さんは、光を失った瞳で明滅するスマホの赤い録画ランプをじっと見つめたわ。 その小さな光は、彼女の魂を最後の一滴まで吸い尽くそうとする、悪魔の眼差しそのものだった。


 その絶望に身をゆだね、いっそそのまま、壊れてしまえば楽だったかもしれない。


 けど、詩織さんには、そんな事も許されていなかった。

 その絶望の中、詩織さんの意識を繋ぎとめたのは家族への思いだったのよ。

 ――自分がココで壊れたら、誰が妹を探して助けるの? そして、パパはどうなるの?


 そして、次に彼女の細い糸のようにつなぎとめた思考を真っ白に塗りつぶしたのは、生存本能をも凌駕する、凄まじいまでの「自浄本能」。

  その時、詩織を突き動かしているのは死への恐怖ではなく、自分という神聖な器の中に、あの男の汚らわしい痕跡が、そして安っぽいプラスチックの異物が居座り続けているという、内臓が裏返るほどの生理的嫌悪感だった。


(出さなきゃ……。こんなもの、一秒だって、一瞬だって、私の中に入れておきたくない……ッ!)


 自分を「人間」ではなく、ただの「コンテンツ」として固定するための楔。

 それが子宮の奥深くまで侵食し、自分の純潔を今もなお削り取っているような感覚に、詩織は発狂しそうな衝動を覚えて、全身の血管が浮き出るほどに力を込め、腹圧だけでそれを押し出そうとした。


「……っ、ん、!!」


 詩織は全身の血管が浮き出るほど腹筋に力を込めた。だが、床に転がるどころか、異物は粘膜にガッチリと吸い付いたまま、びくともしない。


 「……っ、ん、んんんーーーッ!!」


 それどころか、力むたびに「下の穴」の括約筋が防衛本能でギュッと締まり、かえって異物を奥へと引き込んでしまったわ。

 (だめ、……抜けない……っ、うそ、……っ!)


 「あぎ、ぃっ!? ……あ、あああああッ!!」


 詩織さんが腹圧をかけるたび、クリトリスの柔らかな粘膜を噛んでいる洗濯バサミが、火を吹くような熱量で肉を強引に引き絞ったわ。    

 内側からは、ヤスリのような異物が未受容の粘膜をベリベリと削り取り、 外側からは、神経の集中する一点を千切り取らんとする激痛が走るのよ。    

 耐え難い痛みに、白濁した脂汗が視界を遮り、喉からは人間とは思えない、掠れた獣のような悲鳴が漏れたの。


 (い、たい……痛いよぉ……っ! ぬ、抜けて、お願い、離して……っ!)


 でも、必死にいきむほど防衛本能で「出口」の筋肉は逆に固く閉ざされ、異物は逃げ場を失ってさらに深奥へと食い込んでいったわ。  

 その矛盾する苦痛に、彼女の精神は焼き切れる寸前だったわ。

 更に腹に力を入れ、異物を排出しようと咆哮するたびその筋肉の動きと連動して、クリトリスを無慈悲に噛んでいる洗濯バサミが、デリケートな肉を根元から引き千切らんばかりに強引に引っ張ったのよ。


  「あぎぃっ……ぁぁあああ!!」

   

 テープで口を塞がれながらも零れる悲鳴。

 異物のディルド2本を内側から押し出そうとする力と、外側から引き千切ろうとする激痛。  

 その矛盾する苦痛に詩織の体はガタガタと震えパニックで呼吸が浅くなったの。    

 抜こうにも指一本かけられない。  後ろ手に結束バンドで固定された腕は、もがくたびに手首の皮膚を削り、脂汗が目に入って視界を奪う。


 そして、ヴァギナと肛門が収縮するたびにディルドの凹凸感が蘇る。あの不気味な形状が膣壁と腸壁を圧迫する異様な感触。 おぞましい感覚に胃液が逆流しそうになったの。


 内側からは、潤滑を失った粘膜をヤスリで削り取るような異物の膨張熱。 外側からは、神経の集中する一点を真っ赤に灼けた鉄で貫くような牽引痛。

 詩織さんの この二つの矛盾する痛みが、脊髄を伝って脳を直接焼き尽くす。

 出そうと力めば力むほど、自分の体が自分を攻撃し、意識を暗転させるほどの火花が視界に散ったわ。


 さらに最悪なことに、あまりの激痛に防衛本能が働き、排出しようとする意思に反して「出口」の筋肉がギュッと異物を締め付けてしまったわ。

 動かそうとするたびに、内壁がベリベリと強引に剥がされるような、生々しい組織の痛みが脳内に直接響き渡る。


(抜けない……抜けないよ……。お母さん、お母さん助けて……っ!)


 詩織の顔から脂汗が滝のように流れ、涙と混じって視界を奪っていった。

 でも、ソレさえ、無機質な三脚に固定されたスマートフォンは、彼女を逃がさななかった。

 バールの欲望と血の海でのた打ち回り、自らを抉り、獣のように叫びながら排泄を行おうとする彼女のすべてを、広角レンズが冷徹に捉えていたわ。


 残酷だけど最高のエンターテインメントとしてね。


  世界中の見知らぬ誰かが、彼女のこの「最後の抵抗」さえも、新しい刺激として消費しているという事実。

 詩織さんが伏した床。そのすぐ側で放置されたスマホのコメントだけが、狂ったように点滅を続けていたわ。


 「………」


 もはや、まともな手段では救われない。

  絶望的な拒絶感がカラダを包んでいったわ。


 絶望を悟った詩織さんは、最後にして最も凄惨な決断をしたの。


 彼女は血と泥にまみれた床を、芋虫のように這いずった。

 目指したのは、近くにあった機材ケース(パレット)の鋭利な木材の角。

 彼女は、後ろ手に固く縛り上げられ、すでに指先の感覚が失われた両手を、彼女はその木材の「刃」へとこすり付けていった。


 「ん、んんーーーッ!!」


 詩織さんは結束バンドを断ち切るために、彼女は自分の肉が裂けるのもお構いなく木材の角をノコギリにように使い始めたわ。

 結束バンドが切れるよりも早く皮膚が裂け、木材の角が骨を軋ませる感覚が伝わった。


――ギチ、ギチッ。

 プラスチックが削れる音よりも先に、詩織の柔らかい手首の皮膚が裂ける音がしたの。  

 鋭利なカドが肉に食い込み、鮮血が結束バンドを赤く染めていく。


 (痛い……痛い、痛い痛い痛いッ!!)


 叫びはガムテープに阻まれ、くぐもった呻きとなったの。  

 でも、詩織さんは止めなかった。  痛みに意識を飛ばしそうになりながら、自分の肉を削り、骨を軋ませてまで、彼女は「自由」を求めて手首を振り続けたわ。

 熱い、生々しい血が溢れ出し、それが結束バンドを濡らして、皮肉にも「滑り」を良くしていった。

 (んん!!! )

 激痛に意識が飛びそうになるたび彼女はカメラのレンズを睨みつけたの。

(私は……データじゃない。私は、生きてる……ッ!)

 

 ソンナ地獄をくりかえし、ついにその時は訪れたわ。


 ――パチンッ!


 数分、あるいは数十分にも感じられた地獄のような格闘の末、ついにプラスチックの枷が弾け飛んだの。

 後に回された両手は、赤黒く腫れ上がり、結束バンドの形に深く肉が抉れていた。  しかし、詩織にその傷を労わる余裕なんてない。

 プラスチックの枷が弾け飛んだ瞬間、詩織は解放された両手を、迷わず自分の口元へと伸ばした。

 まず、唇を塞いでいたガムテープを乱暴に引き剥がしたわ。

 唇の皮が剥け、血が滲むのも構わずに。

 そして、新鮮な空気を思いっきり吸い込むと、彼女は初めて自分の声を倉庫に響かせた。


 「……ぁ、ああぁあぁあッ!!」


 それは悲鳴というより、魂の咆哮だったの。

 そして、彼女の指は まずクリトリスを噛んでいた洗濯バサミを掴み一気に外したわ。

 

 「――!!」


 声にならない叫び。

 引き千切れるような熱い痛みが走る、目が痛みでかすむ、けど、手は止まらない。

 そのまま、震える指を血に濡れた自分に突き立てられたディルドにかける。

 でも、潤滑剤もなく無理やりねじ込まれたそれは、粘膜と癒着するように固着していたのよ。


 「……っ、いや、いやぁぁあああーーーッ!!」


 でもかまわず、詩織さんはディルドをつかむと力を籠め、ヴァギナの粘膜が剥がれるのも厭わず 強引にそれを引きずり出したわ。

 ズルリ。 内壁ごと剥がれ落ちるような生々しい音が響いた。

 同時に、ドッと溢れ出す鮮血とアイツの欲望の残差、そして自分を「コンテンツ」に貶めていたディルド。


 「うっ――――!」


 そして、アヌスに突き立てらた、もう一本を引き抜き最後の異物を床に叩きつけたとき、詩織は真っ赤な血の海の中であまりの激痛に その場に崩れ落ちて胃液をすべて吐き戻したわ。


 血の海の中で、彼女は虚ろな目で自分を見ると、手首は裂け、股間からは血が止まらないでいた。

 でも、そうして全ての忌まわしいモノから解き放たれたのよ。


 でも、その時、詩織さんは バストはひどく腫れあがり、 手首はボロボロに裂け、その上股間からは絶え間なく血が流れ続けていた。

  かつて、家の太陽と称えられ、誰からも愛され、汚れを知らなかったはずの彼女は何処にも無かったわ。

 いま、自分の手で自分を壊し、ズタズタな姿で床に伏していた。


 「……はぁ、……はぁ、……っ」


 激しい喘ぎの中、半裸の彼女は震える手で乱れた服を必死にかき合わせたの。

 (隠さなきゃ。この、見る影もなく壊れてしまった自分を)

 そう思っても、その間も。 放置されたスマホのレンズは、彼女のすべてを、その絶望の極致を、冷酷に世界へと流し続けていた。

 挿絵(By みてみん)


 詩織さんは乱れたブラウスをかき合わせ、半裸のまま、ふらつく足取りでよろよろと立ち上がると、内股からドロリとしたものが垂れたわ。

 鉄錆の匂いと生臭さが鼻をつく。破れたショーツを掴み、必死に前を隠す。誰かに見られたくなくて。


 「帰らなきゃ……お父さんの、ところに……沙織も探さなくちゃ……」


 そうして詩織さんは、よろよろと、おぼつかないない足取りで歩き出したの。

 一歩進むたびに膣内とラビアがズキンと痛む。まるで内部から針を刺されているようだったわ。

 肛門にもディルドの異物感が残り、歩くたびに便意のような不快感が走る。

挿絵(By みてみん)

 スマホの視界から外れ、そう遠くまでない倉庫の外までの道のりが永遠のように感じたわ。

 スカートの下を風が吹くたびに洗濯バサミの跡がヒリヒリ痛む。 一歩歩くだけでも、腫れ上がったクリトリスがショーツの破れ目が当たるだけで焼けつくような刺激がある。

 膣内では鈍痛と鋭痛が交互に襲い、まるで内部で爪を立てられているようにして、歩くのを邪魔をしたの。



 「……っ、ん、あぁ……ッ!!」


 それでも詩織さんは歩き続けなければならなかったの。

 沙織のために……。


 そうカスミは淡々と感情を押し殺し、語り終えた。


 詩織さんの話を聞いていたオレは、気が付けばあゆむのシャツを指の関節が白くなり、生地が引きちぎれるほど強く掴み直していた。

 挿絵(By みてみん)

 あゆむの胸に顔を押し付けているのに、鼻腔にはあゆむの匂いじゃなく、カスミさんが言った『鉄錆の匂い』がこびりついて離れない。

 そして、オレのナカが、熱い。

 詩織さんが味わった、あの引き裂かれるような熱が、自分の股間の奥底にまで伝播して、内壁がヒリヒリと焼けるように痛んでいた。

 まるで、今この瞬間に、オレのナカにもあの無機質な異物が突き立てられているみたいに……。

 ショーツは、恐怖と、そしてそれと紙一重の、防衛本能に近い卑猥な熱でぐっしょりと重くなっているのがわかる。


 ココを逃げ出したい衝動にかられる、

 けど、あゆむのぬくもりで、オレをここに辛うじてつなぎとめて居た。

 そんな中、カスミの話は続いてゆく。

残りも早めに出しますっ!! こうご期待!

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