冤罪で追放された悪役令嬢ですが、え? 配信? 何それ美味しいの?
冤罪で追放された悪役令嬢ですが、廃ダンジョンをドールハウス感覚でリフォームして引きこもります。え? 配信? 何それ美味しいの? (1)
【冤罪で追放された悪役令嬢ですが、え? 配信? 何それ美味しいの?】シリーズ No.1
重厚な鉄の扉が、私の背後で鈍い音を立てて閉ざされた。王太子殿下の罵倒も、ヒロインの勝ち誇った高笑いも、もうここには届かない。薄暗く湿った、死のダンジョン。普通なら絶望して泣き崩れる場面だろう。けれど、私の心を満たしていたのは、かつてないほどの開放感だった。
やっと、定時で帰れた。
暗闇の奥から、青白い燐光が二つ浮かび上がる。伝説の魔獣、フェンリル。鋭い牙と圧倒的な殺気。しかし、三十代の疲れた元OLの目には、それは至高の「最高級羽毛布団」にしか見えなかった。私は恐れもせず、その豊かな白銀の胸毛に向かって、ふらふらとダイブする。
あぁ、吸えるモフモフ。
私の無遠慮な抱擁に、フェンリルは毒気を抜かれたように大人しくなる。もふもふを堪能した後は、住環境の整備だ。スキル『ドールハウス』発動。趣味のミニチュアセットを取り出す。北欧風の家具、暖炉、そして憧れだった高価なドール、ブライスのための撮影スペース。私の指先が動くたび、冷たい石畳が温かなフローリングへと書き換わっていく。
理想の部屋が、現実に。
ふと気づけば、宙に魔法の球体が浮かんでいた。記録係だろうか。私はそれを気にも留めず、完成したサンルームで紅茶を淹れる。実はその映像が、王都の空に「無自覚飯テロ配信」として垂れ流されていることなど知る由もない。湯気の向こうで、フェンリルが大きなあくびをした。
平和すぎて、涙が出る。
翌朝。小鳥のさえずり(環境音BGM)と共に目覚めると、玄関に段ボールが置かれていた。見慣れたあの「笑顔のロゴ」。中身は、昨日ポチったブライス用の限定アウトフィットだ。誰が配送したのか、どうやって結界を越えたのか。そんな細かいことはどうでもいい。ネットが繋がり、物流が生きている。それだけで世界は私を肯定している。
物流こそ、最強の魔法。
その頃、王城では地獄絵図が広がっていたらしい。私が一人で処理していた公務が滞り、インフラは崩壊、国民は暴動寸前。王太子とヒロインは、空に映し出された私の優雅なティータイムを、血走った目で見つめているという。「戻ってこい」と叫ぶ彼らの声も、防音完備のリフォーム済みダンジョンには一切届かない。
ざまぁなんて、興味ない。
私は新しいドレスをブライスに着せ、満足げに微笑む。フェンリルの背中にもたれかかり、片手にはお取り寄せした濃厚バターサンド。膝の上には最高の相棒。もう誰にも邪魔されないし、誰の顔色も窺わなくていい。私の本当の人生は、この廃ダンジョンから始まったのだ。
最高のアフターファイブ。
朝日が差し込むテラス席。もちろん、これは地下深くのダンジョンだけれど、私のスキル『ドールハウス』で天井を吹き抜け風に改築したから関係ない。今日は届いたばかりのブライス人形、「ルミナス・ドリーム」の開封の儀だ。パッケージを開けるときの、あのパリパリという音。これ以上のASMRがこの世にあるだろうか。
推し活、最高。
フェンリルが足元ですり寄ってくる。どうやら彼も、新しい家族(人形)に興味津々のようだ。私はルミナスの髪を櫛で梳かしながら、通販で買った高級エスプレッソマシンを起動する。挽きたての豆の香りが、かつて魔物の死臭が漂っていた空間を満たしていく。優雅すぎて、ここが迷宮の最深部だということを忘れてしまいそうだ。
カフェインは正義。
その頃、王都の空に浮かぶスクリーンでは、私の優雅なモーニングコーヒーの映像が大写しになっていたらしい。広場に集まる国民たちは、パン一欠片すら配給されない現状と、私の手元にあるフワフワのパンケーキを見比べて絶望する。元婚約者の王子は、執務室で頭を抱えていた。「なぜだ! なぜ追放した女の方が良い暮らしをしている!?」
叫んでも、無駄だよ。
ヒロインの聖女様も大変らしい。ドレスも買えず、宝石も売払い、今では王子と責任のなすりつけ合いでキャットファイト中だ。「あの女の持っている人形、王家の宝物庫より高価じゃない!?」とヒステリックに叫んでいるのが見える気がする。残念ながら、私が遊んでいるのは、あなたたちが一生かかっても手に入らない「心のゆとり」という宝物なのだが。
民衆の支持、ゼロ。
さて、食後はリフォームの続きだ。ドールハウスの模型に、小さな「露天風呂キット」を組み込んでみる。指先一つで、ダンジョンの湧き水がヒノキの香り漂う温泉へと早変わり。効能は疲労回復と美肌効果。私は足湯に浸かりながら、スマホ(異世界回線)でポチポチと次の家具を物色する。
労働より、入浴。
ピンポーン。また幻聴のようなチャイムが鳴る。玄関を見ると、今度は「お急ぎ便」の箱が。中身は、温泉上がりにぴったりの最高級フルーツ牛乳と、フェンリル用の特選熟成肉だった。送り主の欄は空欄だけど、なんとなく「ダンジョンの神様(ファン1号)」のような気がしてくる。
神対応すぎる配送。
腰に手を当ててフルーツ牛乳を飲み干し、ふぅ、と息をつく。湯上がりの火照った体に、冷たい甘さが染み渡るのがわかる。ふと視界の端で、例の魔法の球体がフワフワと漂っているのが目に入った。今まで「環境BGM用のスピーカーかな?」くらいに思ってスルーしていたけれど、どうやらこれが配信ドローンらしい。せっかくのリラックスタイム、少しだけ暇つぶしに相手をしてあげようか。私は球体の横に浮かぶ、半透明のコメント欄を指先でタップして展開してみる。
暇つぶしの極み。
滝のように流れる文字の羅列。「聖女様!」「申し訳ありませんでした!」「今すぐ戻ってきて!」……どうやら王都の連中は、私がダンジョンで野垂れ死ぬどころか、最高級リゾートライフを満喫していることに気づいてパニックになっているらしい。中には「その牛乳どこのメーカー!?」「肌ツヤ良すぎだろ」なんていう、欲望に忠実なコメントも混ざっている。私は画面に向かって、ひらひらと手を振った。「あー、こんばんは。元気にしてますよ。ここ快適なんで、探さないでくださいね」。
塩対応で十分。
私のその一言で、コメント欄が爆発した。「女神の微笑み!」「慈悲深い!」……いや、適当にあしらっただけなんだけど。面倒くさいな、やっぱり。必死な謝罪とか、国難がどうとか言われても、もう私の知ったことではない。画面の向こうの熱量に付き合うと湯冷めしそうだ。私は早々に興味を失い、コメント欄を非表示にする。「はい、おしまい。あとは勝手に風景でも見てて」。
即、飽きた。
一方その頃、王城の執務室。書類の山に埋もれた元婚約者の王太子は、充血した目で宙に浮かぶ映像を睨みつけていた。画面の中の私は、艶やかな肌で、ふかふかのソファに沈み込んでいる。王太子の横では、かつて私を嘲笑ったヒロインが、ボロボロの爪を噛みながらヒステリックに叫んでいた。「なによあの牛乳! 私だって飲みたいわよ! こっちは泥水みたいな紅茶しかないのに!」。王太子は何も言えない。彼の胃はストレスで穴が開きそうだというのに、元婚約者は健康そのものだ。
地獄と天国の差。
「戻ってこい……頼む……」王太子の掠れた声は、誰にも届かない。かつて彼が私に押し付けた公務は、今や雪崩のように彼自身を押し潰している。画面の中の私が、面倒くさそうに欠伸をするたび、彼らの神経は逆撫でされ、精神が削られていく。私が幸せになればなるほど、彼らの不幸が際立つ。その対比はあまりにも残酷で、しかし滑稽だった。彼らは見るのをやめられない。私の生活が、唯一の娯楽であり、同時に猛毒なのだから。
自業自得の末路。
さて、気を取り直して庭の手入れだ。私はサンダルを突っ掛け、ドールハウスの「裏庭拡張キット」で作った家庭菜園エリアへと向かう。ダンジョン内だというのに、擬似太陽光が燦々と降り注ぐその場所は、マイナスイオンで満ちていた。フェンリルが尻尾を振ってついてくる。今日のお目当ては、昨日苗を植えたばかりのトマトだ。
家庭菜園の革命。
「うわ、もう出来てる」。目の前には、ルビーのように真っ赤に完熟したトマトがたわわに実っていた。通常なら数ヶ月かかるはずの成長が、ここでは一晩だ。ドールハウスの「時間短縮肥料(課金アイテム)」の効果が、現実のダンジョンにまで適用されているらしい。私はその一つをもぎ取り、服でキュキュッと拭いて、ガブリと齧り付く。甘酸っぱい果汁が口いっぱいに弾けた。
世界が私に甘い。
その様子を見ていた視聴者たちが、再びざわつき始めたのがなんとなく分かる。「え? 昨日まだ緑色だったよね?」「時空歪んでない?」「ダンジョンが彼女に合わせてるのか……?」そんな困惑の声が聞こえてきそうだが、知ったことか。この世界は今、私の都合の良いように書き換わっている。私はもぎたてのトマトをもう一つフェンリルに放り投げ、カゴいっぱいの収穫を楽しむことにした。
常識なんて不要。
王城の作戦会議室。くたびれた王太子とヒステリックなヒロイン、そして血眼になった騎士たちが、私の配信画面を食い入るように見つめている。彼らが注目したのは、私がトマトを洗っている背後に映り込んだ、特徴的な青白い光を放つ苔だった。「間違いない! アレは北の果て、奈落のダンジョンにしか自生しない『月光苔』だ!」特定班の報告に、王太子が歓喜の声を上げる。やっと見つけた。あの快適な空間、美味い飯、そして私の労働力を取り戻すチャンスだ。
特定、完了。
「直ちに精鋭部隊を編成しろ! 強制連行だ!」王太子の号令一下、私の平穏を脅かすための「お迎え部隊」が結成される。彼らは知らない。そこがただのダンジョンではなく、私がDIYした要塞であり、最強の番犬がいることを。画面の向こうで彼らが息巻いていることなど露知らず、私はトマトのカプレーゼ作りに没頭していた。すると、足元のフェンリルが急にピクリと耳を立て、玄関の方をじっと見つめた。
野生の勘、発動。
「ん? どうしたのフェン。お外行きたいの?」私は手を拭きながら、彼の首元を撫でる。フェンリルは短く「ワン(野暮用だ)」と鳴き、尻尾を振って扉の前で待機する。どうやら散歩の催促らしい。私は微笑んで、重厚な鉄の扉のロックを解除してあげた。「行ってらっしゃい。あまり遠くに行っちゃダメよ」。彼は賢いから、用を足したらすぐに戻ってくるだろう。
ただのトイレ休憩。
扉の外には、完全武装の騎士団が待ち構えていた。「出たな! 悪女の使い魔め! 貴様を倒して……」隊長が剣を抜こうとした、その瞬間だ。フェンリルは彼らに一瞥もくれず、ただ大きく、退屈そうに「ふわぁ〜」とあくびをした。たったそれだけ。しかし、そのあくびは衝撃波となり、台風のような暴風を巻き起こした。鎧はひしゃげ、武器は吹き飛び、騎士たちは木の葉のように空の彼方へ舞い上がっていく。
あくび一発、全滅。
数分後。扉が静かに開き、フェンリルが戻ってきた。毛並み一つ乱れず、どこか誇らしげに胸を張っている。「お帰り。早かったね」私はカプレーゼを皿に盛り付けながら彼を迎える。フェンリルは私の足に体を擦り付け、「少し掃除をしてきた」と言わんばかりに鼻を鳴らす。もちろん、私には言葉は通じないけれど、機嫌が良いことだけは分かる。
完全なる平和維持。
「どうしたの? 何かいいことあった?」私が尋ねると、彼は何も言わずにコロンと横になり、お腹を見せた。外で国一番の精鋭部隊が壊滅したことなど、この部屋の平和には1ミリも影響しない。私は彼のもふもふのお腹に顔を埋め、深呼吸する。トマトの爽やかな香りと、太陽のような温かい匂い。外の世界の喧騒なんて、今の私にはどうでもいいことだ。
今日も世界は平和。
最後まで読んで頂きありがとうございます。本作はAI(Gemini3)による執筆です。生成後の人間による修正は一切行っておりません。
【冤罪で追放された悪役令嬢ですが、え? 配信? 何それ美味しいの?】シリーズ 展開中です。続きあります!
宜しくお願い致します。
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伊部 拝(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)ペコリ




