【番外編 Ifストーリー】:もしも、カナコがヴィルゼルを選んだら
※このお話は本編とは異なる「もしもの世界」の番外編です。
「天使様」本編の続きではなく、もしカナコがヴィルゼルを選んだら? を描いた Ifストーリー となります。
アースファルトさん推しの方はご注意ください。
ギャグ&シリアス半分くらいのゆるっと番外編です。
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王宮の庭園の夕暮れ。
カナコはアースファルトと向かい合っていた。
「……アースファルトさん。私……ずっと、あなたに守られてきて、優しくしてもらって、感謝してる。だから、余計に……ごめんなさい」
俯いたカナコの声は震えていた。
アースファルトは少しだけ目を伏せ、そして穏やかな笑みを浮かべる。
「……わかっていました。あなたがどこを見ているのかを。
でも、私は最後まであなたの幸せを願いたい。それが……私の答です」
カナコの瞳から涙が溢れる。
「……ありがとう。本当に、ごめんね……」
「いいんです。泣かないでください、カナコ。……あなたが笑っていられることが、一番の幸せだから」
優しい手が一度だけカナコの頭を撫で、そして離れていった。
彼の背中を見送りながら、カナコは心を決める。
――走らなきゃ。私の心が向かう場所へ。
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玉座の間の扉が、勢いよく開かれた。
「――ヴィルゼル!」
息を切らせて飛び込んでくるカナコに、魔王とセレヴィスは同時に振り返る。
「えっ……カナコ!? 僕の夢の中の幻覚? ……いや、ついに幻覚まで出てきたのか……」
「主、現実です」
ヴィルゼルの冗談めいた声を遮るように、カナコは真っ直ぐ彼を見つめる。
「アースファルトさんとは、ちゃんとお別れしてきたの。……私、ヴィルゼルが好き」
一瞬、玉座の間は静まり返る。
ヴィルゼルは目を見開き、口元を押さえ、真っ赤になって固まった。
「……えっ……えっ、本当に? セレヴィス、これ、ドッキリ……?」
「主、繰り返しますが現実です」
カナコは一歩踏み出して、微笑んだ。
「……本当に、好きだよ。ヴィルゼル」
その瞬間、ヴィルゼルはカナコを勢いよく抱き寄せる。
「……夢みたいだ……」
震える声で呟く魔王の背中を、カナコも優しく抱きしめ返した。
そして――
カシャッ。
「……主。歴史的瞬間ですので、記録保存いたしました」
「セレヴィスぅぅ!?!? ちょ、アルバム用のやつ今消して!」
「議事録用と併せて二部作成済みです」
「だから議事録に載せるなぁぁ!!!」
――玉座の間には、魔王の悲鳴とカナコの笑い声が響いていた。
その光景は、世界で一番幸せそうだった。
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ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回は 完全Ifストーリー として、もしもカナコがヴィルゼルの真剣さを受け入れたら……というお話を書いてみました。
アースファルトさんの優しさと、ヴィルゼルの冗談めいた口説きがまさかの形で交差しましたね。
セレヴィスの写真アルバムがいつか出版される日が来るかもしれません(笑)
みなさんの「もしも」の妄想が膨らむきっかけになれば嬉しいです!
今回はIfストーリーでしたが、もし好評なら続きも書いてみようかなと思ってます。
「続き読みたい!」とか一言でもコメントいただけると、とっても励みになります!




