【番外編】『図書館での出会い ― カナコとヨウコ ―』
このお話は、新連載『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜ルミエール様の気まぐれ〜』とつながっています。
ヨウコやカナコたちの世界とは少し違う、現実でのちょっとした出会いの物語です。
本編を知らなくても楽しめますので、ぜひ気軽に読んでみてくださいね。
場所は、とある女子高の付属大学の図書館。
夏の午後、静かな館内にページをめくる音だけが響いていた。
高校一年のカナコは、背伸びをしながら高い棚の本を取ろうと必死になっていた。
「うぅ……あとちょっとなのに……」
指先が届きそうで届かない。
その瞬間――すっと横から伸びた長い腕が、軽々とその本を掴み取った。
「はい、どうぞ」
低めの落ち着いた声に振り向くと、そこには大学生らしき長身の女子。
彼女――ヨウコは、図書館の柔らかい光の中で凛としていて、まるで王子様みたいに見えた。
カナコの心の声:
(か、カッコいい……! 本当に王子様みたい……!)
一方で、ヨウコも内心では――
(ちっちゃくて可愛い子だなぁ……。いいなぁ、私も一度でいいから、誰かにこうやって助けてもらいたい……)
二人は互いに軽く会釈を交わし、それぞれの席に戻った。
けれど胸の中には、ほんの少しだけ憧れと、ときめきが残っていた。
――異世界ではそれぞれ「聖女様」と「ちっちゃくて可愛い」と呼ばれる彼女たち。
現実ではまだ、互いに名前も知らない。
けれど確かに、この小さな出会いは心の奥に刻まれていた。




