表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/41

番外編① 魔王、今日も全力で“見守る”

こんにちは、透子です!

今回は本編完結記念の番外編として、あのヴィルゼル様の“魔王になったあとの日常”を、ちょっぴりコメディタッチでお届けします!


彼がどんな風に政務を放り出し(!?)、どれほど聖女を“見守って”いるのか……

そっとのぞき見してみましょう♪




「……見つけたよ、聖女カナコ。今日も実に、いい笑顔だね」

「主。それを言うために、わざわざ民家の陰に潜まないでいただけますか」


セレヴィスは頭痛を堪えるようにこめかみを押さえた。


魔王となった今も、ヴィルゼルは変わらず“見守り活動”を継続中。

彼の言い分はいつも同じだ。


「いやいや、これは“視察”だよ。“監視”とは違う。“見守り”だ。大事だろう?」

「それを主が言うから説得力がないのです。しかもその望遠魔石……どう見てもただの盗み見では?」


「失礼だな。これは“遠距離型安心確認装置”だよ。科学と魔術の融合さ」

「まさか名前を勝手に捏造されました……?」


 


そんな会話をよそに、カナコは市場でパンを買い、小さな子どもに分け与えていた。

その優しい仕草に、ヴィルゼルの目が細くなる。


「……はぁ。あの笑顔、まさに聖女そのものだね。癒し効果が高すぎて、世界が浄化されてしまいそうだよ」

「主。声が漏れておりますし、鼻血も出そうです」


 


ちなみに、ここ最近のヴィルゼルの政務放棄率は上昇中。

その理由はもちろん――カナコ観察優先のためである。


「……あ。セレヴィス、ちょっと待って。あの角、曲がるだろう? 今、僕も散歩中のふりをして“偶然出会う”チャンスじゃないか?」

「主、それで昨日も三回失敗しておられましたよね」


 


しかしヴィルゼルはめげない。

この日も、草むらから高速でハンカチを拾って風の精のせいにしたり、

子どもに泣かれながら“通りすがりの謎の人”として助けたりしていた。


「……あれは決してストーカーではない。見守り活動だ。愛とは、見返りを求めず、そっと支えるものだからね」

「では政務にも、そっと支えていただけますか?」

「……政務は……その……また後で、ね?」


 


やがてカナコがその場を立ち去ると、ヴィルゼルは遠くから静かにつぶやいた。


「ふふ、今日も元気そうだった。……それだけで、十分さ」

「主。十分ではありません。政務が山積みです」


 


「まったく、セレヴィスは厳しいな。……けど、ありがとう。君がいなければ、僕はとっくに変な人扱いされていたかもしれない」

「いえ、今も充分にされております」


「ひどいなぁ。でもまぁ……いいさ。

 彼女が笑っていてくれるなら、僕はそれで幸せだからね」


 


そんなヴィルゼルの背中を、セレヴィスはそっと押した。


「……主。せめて魔王としての威厳も、少しだけ取り戻していただければと」


「ふふ、じゃあ今夜は“魔王っぽい”日記でも書いておこうか。

 タイトルは……『今日のカナコ観察報告』で、どうだい?」


「……もう、自由にされてください」


 


こうして世界は、今日も平和だった。


……たぶん。



---


ここまで読んでくださりありがとうございます!


魔王としての風格? 威厳? ……そんなものより“カナコの笑顔”が大事なヴィルゼル様と、それを支えるセレヴィスさんの日常、いかがでしたでしょうか。


「本編のラストだけじゃ物足りない!」という方に、クスッと笑っていただけたら嬉しいです。


今後も番外編など追加予定ですので、ブクマ&お気に入り登録でお知らせをお待ちいただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ