『最後の嵐、そして未来への光』
ついにこの物語も最終話を迎えました。
地味顔ぽっちゃりな“ただのブス”だったカナコが、「天使様」と呼ばれ、たくさんの出会いと戦いの中で選んだ未来――
彼女たちの旅路の結末を、ぜひ最後まで見届けていただけたら嬉しいです。
(※完結後に、数話の番外編や後日譚を予定しています。お楽しみに!)
吹き荒れる魔力の嵐。崩れ落ちる大地、裂ける空。
魔王とカナコたちの戦いは、天地を揺るがす激闘だった。
カナコの癒しの光が翼のように広がり、アースファルトは剣を構えてその背を守る。
セレヴィスの堅牢な結界が仲間を包み込み、ヴィルゼルは黒き炎を纏って、静かに言った。
「この戦いは終わる。聖女の光と、魔族の誇りを賭けて――俺たちが未来を切り開く。」
幾度倒れても立ち上がる彼らの姿は、まるで荒波に抗う大木のように揺るがなかった。
「まだだ。まだ終わらせるわけにはいかない!」
カナコの叫びに、胸の奥の女神の力がいっそう強く灯る。
癒しの光と黒き焔がひとつになり、ヴィルゼルの剣は魔王の胸を貫いた。
「終わりの時だ。お前がもたらした闇を、俺が断ち切る。」
轟音と共に世界が震え、魔王の巨体は崩れ落ちた。
訪れた静寂の中、ヴィルゼルはゆっくりと振り返る。
「俺が、新たな魔王となる。」
一瞬、風が止まり、世界がその言葉に耳を澄ませた。
その声には、飄々とした気配など一切なく、未来への重責と覚悟が満ちていた。
「争いではなく、共存を選ぶ。聖女カナコと共に、真の平和を築く。」
仲間たちは静かに膝をつき、人間と魔族が一つの未来を見つめた。
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その夜、王城のバルコニーに立つカナコのもとに、ふわりと優しい光が降り注ぐ。
光の中から現れたのは――今日もどこか抜けているけれど、どこか憎めない残念美人な女神ルミエールだった。
「……おめでとう、聖女様。世界は確かに変わりましたわよ。」
そして、いつもの調子でぽつり。
「でもね、その髪、いい加減に何とかしなさいってば! 聖女としての威厳が台無しよ?
……どこの草原で寝たの、あなた?」
カナコは吹き出しそうになりながら微笑み、軽く目を伏せる。
「元の世界に戻るか、それともここに残るか……決めなさい。
迷うなら、私からのアドバイスは……そうね、とりあえず、ヘアケアよ!」
その時、隣に立つアースファルトが静かに言った。
「どんな世界でも、俺は貴女と共にある。」
その言葉は、カナコの胸に深く響いた。潤んだ瞳から、静かに涙がこぼれ落ちる。
彼女はゆっくりと彼の手を握り返す。
「ありがとう。私はこの世界に残る。みんなと、未来をつくりたい。」
女神は満足そうに微笑み、ふわりと空へと消えていった。
「……まったく、こんなに壮大な舞台でヘアケアの話をする女神も珍しいわね。」
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それから世界は大きく変わった。
アースファルトは英雄として讃えられ、その誠実な生き様は多くの人々の心を動かした。
人々は美醜に囚われず、互いを尊重し合い、笑顔で日々を過ごすようになった。
ヴィルゼルが率いる新時代は、力強く、優雅で、美しい光の未来を示している。
そして――
空を見上げるカナコの瞳には、確かな希望が宿っていた。
「これは、終わりではない。
新しい物語の、ほんの始まり。
光と影が交わるこの世界で、私はまた歩き出す。」
風が優しく頬を撫でる中、物語は静かに、そして温かく幕を閉じた。
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ここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました!
カナコ、アースファルト、ヴィルゼル、セレヴィス、そして残念美人女神ルミエール――
彼らと共に歩んだこの物語を、少しでも楽しんでいただけていたら、何よりの幸せです。
連載を始めたときはこんなにたくさんの方に読んでいただけるなんて思ってもいませんでした。
お気に入り・評価・感想・リアクション……どれも心の支えでした。本当に感謝しかありません。
まだまだ物語は終わりません。
カナコたちの「その後」を描いた番外編も、近日公開予定です!
これからもどうぞよろしくお願いします。




