【最後の決戦、そして光は降り注ぐ】
ついに、物語の核心《魔王アザルグレイン》との決戦が始まります。
仲間との絆を胸に、カナコたちは最後の一歩を踏み出しました。
真面目で優しいアースファルトの覚悟、ヴィルゼルやセレヴィスの頼もしさ、そして何よりカナコの“光”が輝きを増します。
どうぞ最後まで、見守ってください。
ついにその時が訪れた。
《魔王アザルグレイン》。
瘴気の頂点にして、全ての戦いの黒幕。
カナコたちは、ついにこの強大な存在と対峙していた。
数々の戦いを越え、傷を負いながらも積み重ねてきた絆。
この一歩が、全てを終わらせるはずだった。
けれど――
「……っ、駄目だ……!」
「攻撃が通らない……!」
魔王の放つ魔力は異質だった。
重く、禍々しく、まるで空間そのものが拒絶しているかのような圧。
瘴気の刃が雨のように降り注ぐ中、
アースファルトは無言で前へ出て、カナコをかばい続けていた。
(……今の彼女では、この魔力に触れるだけで……)
剣を握る手に、迷いはなかった。
ただ、守るべき人のことを考えていた。
その時だった。
魔王の“本命”の一撃が放たれる。
雷光のような一閃。
標的は――膝をつき、動けなくなっていたカナコ。
「っ……!!」
誰もが間に合わないと感じた、その瞬間。
「……退けない理由がある」
低く、静かな声とともに飛び込んできたのは、アースファルトだった。
その身で、魔王の攻撃を受け止める。
「アースファルトさんっ!!」
爆風。
土煙。
崩れ落ちる影。
彼は、もう立ち上がれそうに見えなかった。
「嘘……やだ、やだよ……!」
カナコは彼に駆け寄り、その手を握る。
その表情に、涙が溢れていた。
「私……まだ……“好き”って……言ってないのに……!」
その瞬間だった。
カナコの身体から、柔らかな光が広がる。
それは――女神の加護。
聖女として覚醒した、最後の力。
その光が、アースファルトの体を包み込み、瘴気を祓い、鼓動を蘇らせていく。
「……カナコ……様……?」
「……よかった……っ……!」
震える声で、彼の胸にすがるカナコ。
だが、その背後では再び魔王が動き出していた。
「……もう、誰も傷つけさせない」
その言葉とともに現れたのは、ヴィルゼルだった。
「魔王アザルグレイン。貴様は、ここで終わる」
彼の声に、いつもの飄々さはなかった。
代わりに、研ぎ澄まされた気迫があった。
その隣では、セレヴィスが静かに魔具を構える。
「主の怒りと、カナコ様の涙。……相殺不可」
アースファルトも、静かに剣を構える。
肩にカナコの手が添えられ、その瞳に迷いはなかった。
「カナコ様。……共に、終わらせましょう」
「はい。私たちで……この世界を、守ります!」
今こそ、すべての想いを――
すべての愛を、誓いを、未来を乗せて。
──最後の決戦が始まる。
世界の終わりか、光の始まりか。
その選択は、彼女たちの手に託された。
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お読みいただき、ありがとうございます!
アースファルトさんには、いつもより少し熱く、真摯に戦ってもらいました。
カナコとの想いも、ようやく形になりそうで……私も書きながらドキドキでした。




