表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/41

「ヴィルゼルの真意と、騒がしい日常」

※少し長めの回になります。


ヴィルゼルとカナコの距離がまた一歩近づく(?)お話です。

さらに、アースファルトさんの男気も炸裂します……!


それから再び、私はアースファルトさんらと共に浄化活動に出るようになった。

ある時は、瘴気に覆われた川を。

またある時は、魔族に襲撃された村を。

どの依頼も順調にこなしていき、私の体もすっかり戦いの感覚を取り戻していた。


 

とはいえ、全てが順風満帆というわけではない。

途中、浄化活動に支障をきたすとして、王様にお願いし――あのキルファン王子に“接近禁止令”を出してもらったのだ。

すると当然のように、王子は嘆き、悲しみ、そして……そんな私を批判するリーディアと、少しばかり揉め事にもなった。

……まあ、今となっては、いい(?)思い出である。


 

基本的に、弱い魔獣や中位の魔物はアースファルトさんと私で難なく討伐できた。

だが、たまに現れる大型で凶悪な魔物――

そのときは決まって、ヴィルゼルとその補佐のセレヴィスさんがどこからともなく現れ、助けてくれるのだ。


 

最初は驚いたけれど、最近では、なんとなく**“そういう流れ”**が出来上がってきた。

周りの兵士や隊員たちも、いつの間にかヴィルゼルたちの登場に動じなくなっている。


 

そんなある日。

私は、ずっと気になっていたことを彼に尋ねてみた。


「ねぇ、ヴィルゼル。あなた……どうして私たちを助けるの?

 一応、“魔王直属の先鋭部隊・黒翼団”の一員なんでしょ?」


 

するとヴィルゼルは、「なんだ、そんなことか」とでも言うように、肩をすくめた。


「僕ら魔族の上下関係なんて、あってないようなものさ。

 強い者に従う。弱い者は消える。それが魔王たちの流儀。

 でもね――僕はそういうの、興味ないんだよね」


 

淡々と語るその声音には、どこか冷たさと、温かさが混じっていた。


「今は、カナコと一緒にいる方が楽しいし。

 なんなら――魔王を倒して、僕が新しい魔王になろうか?

 君が望むなら、和平を結んで平和な世界にしてあげるよ」


 

あまりにあっさりと言われて、私は目を見開いた。


「そ、そんな簡単にいくわけ……!」


 

言いかけたその瞬間。

ヴィルゼルはそっと私の顎に手を添えて、顔を近づけてきた。


「君が望むなら、今すぐにでも取りかかろう」


 

その低く甘い声に、思わず瞳を閉じてしまう。

距離が……近い。吐息が、頬に触れて……


 

――その時だった。


「ヴィルゼル! これ以上の無礼は許さん!」


 

アースファルトさんの体が、私とヴィルゼルの間に滑り込んだ。


「協力してくれるのは感謝している。だが、それとこれとは別だ。節度を守れ」


 

ヴィルゼルはため息混じりに肩を落とす。


「……また君か。ほんと、毎度毎度、邪魔ばっかり」


 

けれどすぐに気を取り直し、セレヴィスさんの方をちらりと見る。


「まぁ、いいや。そろそろ他の仕事もあるし。今日はここまでにしておこう」


「……では、カナコ。またね」


 

最後にそう微笑むと、ヴィルゼルとセレヴィスさんは、空間ごと溶けるように姿を消した。


 

残された私は、心臓がバクバクと音を立てるのを抑えられず、顔も真っ赤になっていた。


 

だって、こんな風に――

男の人に迫られたのは、生まれて初めてだったのだから。


「大丈夫ですか? 話に割り込んでしまい、申し訳ありません」


 

アースファルトさんが真剣な表情で私を見つめ、静かに謝ってきた。


「い、いえ! 助かりました……ありがとうございます!」


 

慌ててそう返すと、彼はほっと安堵したように微笑んだ。


 

――そんなこんなで、今日も騒がしく、慌ただしく。

だけど、どこか温かい日常が続いていく。


私はまだ、このとき知らなかった。


この後、世界の運命を揺るがす“予兆”が、すでに動き出していることに――


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


ヴィルゼルの真意、ちょっと危険な香りがしますよね……。

一方で、アースファルトさんの“守りたい”気持ちも静かに熱くて、私は書きながらドキドキしてました。


次回は、またひと波乱ありそうな予感……お楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ