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【聖女様、謎の“影”に狙われてます!?】

カナコの浄化の力に、森が静かに応えていく――

だけど、その背後で誰かの視線が……?

ついに姿を見せた、ヴィルゼルの“影”のような存在。

静かに現れ、鋭く見定めるその男の名は――セレヴィス。


聖女様vs魔族の謎めいた腹心、その最初の接触とは!?

森の奥深く、濃霧が立ちこめる静寂の中。

人の気配などないはずのその場所に、漆黒の空間がぽっかりと口を開けていた。


そこから現れたのは、赤い瞳を持つ男――ヴィルゼルだった。


「……ふむ。やはり、“光”は成長しているな」


彼は指先で、まだ残る浄化の余韻をなぞるように空を払う。

それだけで、周囲の瘴気がびくりと怯えたように霧散する。


すると、彼の背後の空間がすうっと揺らぎ――一人の男が現れた。


背筋を伸ばし、黒に銀の刺繍が施された衣を纏う、理知的な雰囲気を漂わせる青年。

その瞳は深い紫で、どこまでも冷静。そしてその口元は、わずかに険しい。


「――お戻りでしたか、ヴィルゼル様」


「やあ、セレヴィス。少し様子を見てきただけだよ。君には退屈な任務を押しつけたね」


「いえ。貴方の動向に比べれば、瘴気の掃討など児戯のようなものです。……それより、“彼女”とは接触を?」


「うん。倒れてしまったけど、無事だった。彼女の“光”は、もう聖具すら必要としない域に達しつつある」


「――やはり、接触は危険では?」


「かもしれない。けれど、彼女は今……私を“恐れなかった”。それが、どんなに稀有なことか……君なら分かるだろう?」


セレヴィスは黙って、わずかに視線を伏せた。


「……その件については、また後日報告を」


「うん。君の分析はいつも正確だ。期待しているよ」


「身に余る光栄です、ヴィルゼル様」


二人のやり取りは、まるで何年も積み重ねてきた呼吸のように自然だった。

だが、セレヴィスの眉間にはわずかに影が落ちていた。


(……“彼女”に心を向けすぎている。あの方にしては、珍しく)


そんな言葉を飲み込み、セレヴィスはただ静かに頭を垂れた。


「では、そろそろ拠点に戻られますか?」


「いや……もう少しだけ、この余韻に浸らせてくれ。彼女の“光”は、実に心地いい」


「……了解しました」


その声色は丁寧で変わらないはずなのに、どこか拗ねたようにも聞こえた。


そうとは知らず、ヴィルゼルは薄く微笑む。


「……さて、次に会う時は、もう少しだけ近づけるかな。ふふ、楽しみだよ、カナコ」


今回もお読みいただきありがとうございます!

ついに、ヴィルゼルの側近セレヴィスがその姿を現しました✨

まだ彼自身は多くを語らず、謎に包まれていますが、今後物語にどう関わってくるのか――ぜひお楽しみに!


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