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目覚めの再会と、嵐のような王子様

前回、ついに姿を現したSランク魔獣〈夜哭く牙〉――

そして、彼の“主”であるヴィルゼルとの再会。

激戦の末、力を使い果たして倒れたカナコは、ついに目を覚まします。

でも、最初に駆けつけてきたのは……やっぱりあの人!?(笑)


今回もにぎやか(?)な王宮シーンをお楽しみください。


目を覚ますと、そこは王宮の広くて柔らかいベッドの上だった。

天蓋のレース越しに差し込む光が、まぶたの奥をくすぐる。


「――聖女様!」


声に気づいてゆっくり目を開けると、そばに控えていたメアリが涙ぐみながら顔を寄せてきた。


「お気づきになられたのですね!今すぐ、王様たちをお呼びして参ります……あぁ、本当に良かった。丸一日、眠ったままだったのですよ……!」


その肩を揺らすように泣きながら、メアリがそう告げる。


すぐ隣には、アンリもコクコクと小さくうなずきながら目元をぬぐっていた。

どうやら、私のことをずっと見守ってくれていたらしい。


「あー……ごめんね。心配かけちゃったね。もう大丈夫だから」


私はそう言って、二人に優しく微笑みかけた。

体も重くないし、頭も冴えている。不思議なくらい、すっきりしている。


そう思っていると――


バァン!


勢いよくドアが開かれ、部屋に人影が飛び込んできた。


「カナコ様ぁああああッ!!」


派手な登場を果たしたのは、あの王子・キルファン様。その背後には、重々しい顔の王様と、必死の形相で駆けてきたアースファルトさんの姿も見えた。


私は思わずアースファルトさんに声をかけようと手を伸ばした――が。


その手を、王子がバシッと掴み取った。


「ご無事で何よりです、カナコ様!倒れられたと聞いたとき、私はもう……!この胸が張り裂けそうでした!心配で一睡もできませんでしたとも!」


泣きそうな顔で叫ぶ王子に、私はやや引き気味で返事をする。


「あ……ありがとうございます。あの、アースファルトさん……」


ちらりと視線を送ると、王子がギロリと睨みつけた。


「おい、貴様!聖女様が倒れられたというのに、いったい何をしていた!?お前たちは何のための護衛騎士団だ!」


鋭い叱責に、アースファルトさんは眉間に深くシワを寄せながら、黙って頭を下げた。


私は慌てて声を上げる。


「ち、違います!アースファルトさんたちは、ちゃんと私を守ってくれてました!あれは……私が、勝手に無茶したんです!」


すると王子は向き直り、恍惚とした笑みを浮かべて言った。


「……あぁ、なんとお優しい。あのような醜く無能な者にまで、慈愛を向けるとは……やはりあなたこそ真の聖女……!」


(……いや、そんな言い方ないでしょ!?)


ムッとして文句を言いかけたそのとき、後ろにいた王様がようやく口を開いた。


「キルファン、そこまでにしろ。聖女様もまだお疲れのご様子だ。話はあとでもよい。……ともかく、無事に目覚めてよかった」


「はっ、父上の仰る通りですな。では聖女様、お身体をお大事に。ご所望とあれば、この私がつきっきりで看病を――」


「大丈夫です。王子は公務に戻ってください」


私は即答した。できる限り、やわらかく。でも、しっかりと。


王子はうっとりした顔のままうなずいた。


「私の仕事の心配まで……!なんとお優しいのだ。……離れがたいが、今日はここまでにしておきましょう。何かあれば、いつでも駆けつけますので」


そう言い残し、王様と共に部屋を後にしていった。


嵐のような登場と、嵐のような退場だった。


(……なんなんだ、もう)


ため息をつきつつふと視線をあげると、部屋の隅に立っていたアースファルトさんと目が合った。


彼の瞳には、言葉にならないほどの複雑な感情が宿っていた。



ここまで読んでくださってありがとうございます!

カナコにとっては、久々の安らぎ……かと思いきや、王子様の情熱がとんでもない方向に(笑)

でも、その裏で、黙って支えるアースファルトさんの存在もじわじわ効いてきてます。


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