第68話 当てられる!
「なっ」
地面を海中のように動き回るラオ。
気配は右に行き左に行く、オレに狙いをつけられないように。
が、甘い。
オレはラオに向けて一射放つ。けれど避けられる。だが。
「⁉」
地面を伝った炸裂の衝撃がラオに直撃した。
この『ギフト・バレット』は最早ただの銃ではないのだ。準魔法士が使う魔法具だ。
オレはこいつを自在に使いこなす訓練を欠かしていないしこいつはそれにきちんと応えてくれる。
だから衝撃波を撒くくらいの芸当はやって見せるさ。
「遅れたな!」
一撃喰らったラオの動きが一瞬止まり、次の攻撃への備えが遅れる。
オレ、第二射を発砲。だがいくら鈍ったとは言えラオはかわして見せるだろう。それを見越してもう三発撃つ。
ラオを囲うように着弾し、四つの衝撃が交差しラオを襲う。
「くっ!」
たまらずラオが地面から飛び出た。
そこに。
「凍れ!」
石見の魔法が起動する。
ラオの周囲にあった水分が凍りつき、動きを体ごと封じた。
勝負あり――と思ってしまった。
しかしラオは。氷を泳ぎ、更に空中も泳ぎ出した。
潜り泳げるのは地面だけではないのか!
けどだ。地面に潜った時と違いなにやら背びれが半端に残っている。
よおく見てみるとそこにはヒビが。いくつか『ギフト・バレット』の衝撃を喰らって傷ついたか。
泳ぐ速さこそ衰えていないが姿が見えているのならば。
「当てられる!」
『ギフト・バレット』、魔力によって弾速を最大に。
撃ち放たれた銃弾が背びれに直撃し本体に破壊の衝撃を伝え――! 違う! 背びれしかない!
オレは自身の銃弾による衝撃を感知出来る。衝撃は確かに背びれを破壊した。が、そこに本体はなく。背びれを操り囮にすべく微かにバトルオーラが繋がってはいるが、それを伝って衝撃も本体に行ったがバトルオーラの線が細すぎる。伝わった衝撃はごくわずかだ。
おまけに背びれはもう切り離されていて本体の居場所を見失った。気配も消されたか。
「糸掛! 真上!」
「兄さん! 真上!」
「!」
石見と心樋の叫び。二人は魔法士だ。魔法によって魔力を探知したのだろう。心樋も治癒と防御だけで良いと言ったのに行っていたか。
それを咎めるつもりは毛頭ない。向上心大いに結構。
だからオレは二人に従い銃口を真上に構えた。
そこにぶち当たる、ラオの右手。
「!」
鋭い衝撃が来た。銃を構える右腕に傷がつく。この傷跡――サメの力によって噛まれたか!
だがラオの右手は銃口に触れている。
オレの右腕を嚙み千切られる前に――撃って討つ!
ガ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!
銃声一つ。
大きく啼いた『ギフト・バレット』から放たれた銃弾がラオの右腕を貫通する。
「がっ!」
「癒せ!」
苦悶し苦痛を口にするラオ、右腕を仰け反らせると同時に心樋からオレへと治癒の魔法が放たれる。
ラオが倒れ込んだ。そこに。
「捕えろ!」
石見の魔法。光の鎖がラオを絡めとった。
銃を構えるオレ。
用心しながらラオに近づき、銃身で何度かラオの体をつついてみる。
「……良し」
気絶している、な。
さっきの銃弾、着弾した右腕を起点に炸裂の威力をラオの全身に駆け巡るように撃った。
ラオはそれに耐え切れず気を失ったのだ。
「ん?」
主が気を失ったからだろうか、サメの武装が解かれて元の形に戻った。戻って、力なく横たわる機械獣。
「捕えろ」
サメにもかかる石見の魔法、光の鎖。
「こいつも奪り還さなきゃな」
サメに意識があるのか解らないが、
「ちょっと痛むぞ」
なんとなく一言かける。
そしてオレはサメに向けて一撃放つ。放たれた銃弾はサメにあたる一歩手前で炸裂し、ラオとの“繋がり”に衝撃を走らせこれを破壊した。
これでバトルは終了、だ。




