第59話 ゲームで言うならクエストのリストだな
で早速戻ってまいりました。光の道を通ってガラスのビル群まで。
ビル群の名は天戸の都。全体的に最初に行った駅と同じく星をテーマに街づくりが行われているようだ。パンフレットを見ると三つの塔がある場所もイーラ・スカイの一部らしい。で、この都こそが首都だ。
五つの街とそれを囲う首都。これが『ドーン・エリア』。
そして首都には。
「未来技術室
総警庁
放送局
大図書館
中央学生塾
都心医療院
運動特待会
エンタメ・遊戯領域
食材・雑貨・玩具・家電・日用品市場
必要な施設はたーんと揃っているみたい、よ。
どこに行きたい?」
「まずはホテルの確保、だな」
「やだエッチ」
「そっちのホテルじゃないわい」
エンリの問いに至って真面目に答えたオレだったが石見にからかわれてしまう。
そっちのホテルに連れ込んでやろうか。やらんけど。
「ホテルを確保してこの街の地理を知る必要があるかと」
「ほう、糸掛にしてはまともな」
「普段のオレどう見えてんのカノ?」
「折角だから散策も兼ねて足で行こうよ。
糸掛の言う通り地理を知る為にも」
「儂は……総警庁ってのに行きたい」
おや? ジャイルが神妙だ。パンフレットをジッと覗き込んでもいる。
なにか気になる情報でもあったか?
「そこで賞金のかかった犯罪者や事件なんかの一覧表が貰えるそうだ。ゲームで言うならクエストのリストだな。そいつが欲しい」
「……どうして?」
ジャイルの雰囲気に合わせるようにこちらも神妙に、エンリ。
「実戦経験に加えて旅費も稼げる。
なにより、ノクスの情報が得られるかも知れねえ」
ノクス。
叛逆の人王、ノクス。
ジャイルたちの元上司。
こだわるのも理解出来るが……。
「急くと足元すくわれるぜ」
「分かってるさカノ。
けど、儂とノクスの実力差も分かっているつもりだ。
儂には実力が足らねえ」
それはオレたちも同じだ。
正直ノクスと一対一で戦って勝てるかと言われるとかなり怪しい。
これについてはみんなも理解しているようで。
「そう、ね。実戦はなによりも訓練になるわ、ね」
「……いや、まずは地理を知ろう」
いつもよりちょっとだけ強気に言うのはタータル。
「じゃないと……戦闘時逃げられると厄介だから。
総警庁は、その後で……」
「おれもそれが良いと思います。
追ってこっちが迷子になったら、散り散りになったら合流すら難しくなるかと」
ふむ……確かにその通りか。
オレは二人に賛成だ。
他のみんなもそのようだ。だから視線はジャイルに集まって。
「はぁ、分かった儂の気が早かった。
まずは地理」
「そう。それで良い、の」
「いや、頭撫でるのやめてくれエンリ」
「あら、褒めたのに」
「子供への褒め方じゃねえか」
と言いつつ払いのけはしない。顔赤くなってるな、面白い。
「面白がってんじゃねえよ糸掛、埋めるぞ」
「はいはい。
じゃまずどっち方面に行く?」
パンパンと手を叩く石見。つとめて明るくだ。場の空気を和らげようとしている。
「せーので指差すか」
だからオレも彼女の気配りに乗っかって。
「だね。
では私が音頭を。
せーの」
オレ、右。
石見、左。
心樋、前。
カノ、上。
フォゼ、上。
エンリ、下。
ジャイル、斜め右。
タータル、斜め左。
いやぁ気が合うなあ(合ってない)。
しゃあない、唯一票が二つ入った上に行くか。




