間話 観る者
古びた長机に老婆がごとき老人と、武骨な四本の腕を組む女戦士が一堂に会する。そして、真ん中に水晶に『ある映像』が映し出されていた。
「……やはり奪われていたのう」
「ああ、間違いねェ……【色欲】の能力だ」
映し出されていたのは黒髪の少年。
ドーベルが最後に見た光景だった。
「……此奴は無理じゃのう」
「己は願望を諦めたわけじゃねェ。己は最後まで足掻かせてもらう。それに、何の為にコイツを捕らえたと思っているんだ」
麗しい顔に見合わぬ筋骨隆々とした魔王の背後には……
この世界に召喚されし《勇者》が鎖で縛られていた。
「まあのう……それが良い方へと動けば良いがのう」
「チッ、腹が立つ。無欲なフリをしてらしくねェぞ」
老人のような男の口が裂け、凶悪な笑みを浮かべた。その形相は正に『悪魔』だった。
「ヒッヒッ、よく分かっとるのう。お主なんぞよりも燻っているのはわしの方じゃ。何があろうと、譲る気はないぞう」
「あぁ、苛つくぜ。だが、それでこそ強欲だ」
ピシリ、と。
紅色と紫色の魔力が膨れ上がり、空間が張り詰める。ただでさえ相反する存在同士だ。互いが互いを存在を否定しているが『強さ』だけは認めているのだ。
「わしはあの二方も動いてくださると聞いたのでな。総勢でかかれば可能性はあるじゃろう」
「どんな手を使った? 奴らは動かないと言ってなかったか」
「ヒッヒッ、ありのままを話しただけじゃ。お主と違って、わしはあの二方とは仲良くしとったからのう」
「………いちいち癪に障る野郎だ」
チッ、と舌打ちをする。
「どこまでも強情に欲する。どんな形でもよい、得られたもんが勝ちじゃよ」
「フン、今はテメェの思惑に乗ってやるよ。だが、その後は分かっているだろうなァ?」
「ヒッヒッ! 分かっとるともさ」
手を組むのは今、この一度のみ。
奥の巨扉が重々しく開かれる。
「さあ、征こうかの」
「指図するんじゃねェよ」
そして、【魔王】は征く。
果てなき願いを手にする為に。
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