表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/169

78話 阻む者


 朧げな視界が覚醒する。

 そこには心配そうに顔を覗くお嬢がいた。


「………オリヴィエ様……?」


 そう呟いた直後、片腹が痛む。


「エルヴィン様、無理しないでくださいまし。治療はしたものの、完治したわけではありません。戦線復帰には時間がかかると思いますわ」

「………」


 血がついた手を省みるエルヴィン。

 混乱する頭をどうにか整理する。そして、作戦はどうなったのかと周りを見る。そこには幾多の獣人たちが眠っていた。


「俺の隊の殆どが……」

「……はい。背後を付いていた者たちから通達を受け、貴方を含む狼人の隊は全てここに搬入されておりますわ。幸いなことに(・・・・・・)死傷者はいませんでしたわ」


 目を見開くエルヴィン。

 そして、ようやく思い出した。


「………チェシャ、一体何を考えている?」


◆◇


 キンキン、と鉄が弾かれる音が響く。

 曇天で暗い森の中で赤い火花が飛び散る。


「何よ、あんた! 邪魔をしないで!」


 盾を構えながら激昂する白騎士。

 対峙するは二丁の遺物アーティファクトを構える犬耳の女性。

 移動しながら撃ってくる弾丸に苦戦していた。初めて見る武器であることもあるが、何よりも飛んでくる弾丸一つ一つが小さい。


「何をって……邪魔をしているっすよ」


 急がねばならぬ今、足が使えなくなることは避けなければならない。ゆえに盾を解除して攻勢に移ることに躊躇いがあった。


(アートを待っているより、さっさと倒して行ったほうがいいわね)


 リスクを覚悟し、アベルの元へ行くと優先することを決意する。剣を握り、体を前傾する。


「白き光神よ、光如き足を我に『光動』」


 光速で犬耳の少女の手前に迫る。

 距離を詰めようと弾丸は止まず、盾を打ちつける。


 そして、攻勢に移る。盾を解除し、剣を振るう。

 弾丸一つ一つを丁寧に弾きながら前へと進む。


「まるで除雪車ラッセルのようっすね」


 後退しながら引き金を引き続ける。

 距離は、すでに剣の領域内。

 剣の切っ先が犬耳の喉元に迫る。

 その次の瞬間。


「───ッッ!」


 体ごと、仰け反り様に繰り出される蹴り。

 捻らねば顎を撃ち抜かれていた。


「おぉ、初見でこれをかわされるとは思わなかったっす。いい師を持ったっすね」


 アルとアート。人外の速度に生きる者たちと模擬戦をしていなければ間違いなくやられていた。


「……あんた、一体」

「ありゃ、もう来たっすか」


 あさってを向く犬耳の少女。

 エリーゼは盾を構えながらその方へと視線を向ける。

 そこにはアートの姿があった。


「誰だそいつは?」

「分からないわ……」

「ありゃ? そういえば名乗っていなかったっすね。私は右方のリーアというっす。忘れてくれてもいいっすよ」


 そう言いながら遺物アーティファクトを腰に納め、踵を返した。


「また機会があったら遊ぼうっす」

「待ちなさい!あんた、ベヒモス軍じゃないの!?」

「私は戦争から手を引くっすね。どう結末が転ぼうとジュリアン様の望み通りっす」

「ジュリアン……?」

「っと、喋りすぎたっすね。それではっす!」


 発現した黒い靄(・・・)に飛び込んで逃げられる。


「…………逃げられたわね」

「あの闇は……」


 マリーと同じものだ。ということは道化の……と。

 気がつけば、大地が轟き、空間が震えていた。


「大地が怯えて……?」

「まさか、既に───」


 遥か向こうに、巨大な気配を感知した。

 先に発った彼は間違いなく、そこにいる。

 これほどのスケールで戦えるのも、彼しかいない。


「……行くわよ!」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ