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各業界で第1位の女たち


 穴を降りるとアルマが魔法で灯りをつけてくれていた。普段は気が効く女の子なんだよな……。


「よし、全員いるな。周囲には……生物の気配はない。装備と荷物に問題がないか念のため確認を」


 と言ってみたものの装備なんてなかった。俺の女神の剣……。ベルンドの防具は壊れたら大変なので大事にしまってある。荷物の方だ。


 俺はいつもの普通の町人の衣服で無手。

 ブレアはいつものタイトな黒ローブで無手。

 アルマはいつもの白ワンピースで無手。

 メスブタはいつものタイトな黒短パンに白チューブトップと薄手のカーディガン、そして無手。


 ここまで武器の所持率0パーセント。防具の布製品率100パーセント。前代未聞だわ。


 今からみなさんでランチですか? そんな様子だ。ダンジョン『グルガン』その前人未到の最奥に挑もうとしているなど誰が思うだろう。


 続いて、レイシャは白いローブで無手。

 ユリーネは革鎧に長剣、予備に短剣という出で立ちだ。二人分の荷物を担いでいる。


 レイシャは俺たちのランチ仲間だな。

 ユリーネはダンジョンが似合う女だ。真っ当すぎる。レイシャを守るためにふざける余裕はないのだろう。真剣そのものだ。


 まてよ…………。無手とかどうでもいいんじゃ。


 ブレア──碧く切れ長の眼、すっと通った鼻筋、ブルネットの髪、スレンダーだが出るとこはしっかり出した魅惑のボディ。美女・オブ・ザ・美女。美女の頂点。攻められたい女第1位。


 メスブタ──くるりと丸く可愛い瞳、柔らかそうな桃色の唇、ピンクのショートヘア、引き締まっていながらも女性らしい柔らかなラインを保った足と尻、そして控えめなお胸。活発な元気娘の頂点。舐め回したい女第1位。


 アルマ──弱点がなく平均的で美しい顔、青いセミロングの髪、街中で見かけたら目で追ってしまうが振り向くまではしない程度の普通さが妙にエロいボディ。しかし性格はゲスい。見た目は普通に可愛いの頂点。攻め立てたい女第1位。


 ユリーネ──凛々しい顔、短く揃えられた茶色い髪、長身の美女。なんとなく感じさせる男らしさのせいか、彼女に性的な思いを抱くことに背徳感を覚える。百合姉。逆に普通にしたい女第1位。


 レイシャ──柔らかな母性を感じさせる瞳に、煌めく銀髪、全てを跪かせる威圧的な爆発的乳。さらに聖女という肩書きが何となく興奮をそそる。清純派エロス。長時間にわたり貪りたい女第1位。



 武器も防具もほとんど持たず、各業界で第1位の美女を五人も連れてダンジョン攻略とか歴戦の探索者のおじ様方が怒りと嫉妬でのたうち回ることだろう。


 どうしよう。ドキドキしてきた。遺跡のフロアがあるくらいだからベッドのフロアとかないだろうか。


 あるいは服を脱がねば進めない罠は用意されていないだろうか。


 頼む。穴の女神様。この穴の中のどこかに、誰かが純潔を失う環境を用意しておいてください。ベッドとムーディなライトとちょっとした熱気と小洒落た小物類と少しのお酒。精一杯大事に使います。大事に使いますから!

 もちろん、相手のことも大事にしますから。五人ともまとめてでも何も問題ないですから、だから女神様っ!


「ニト」


「あ、すみません。つい」


 ブレアは俺を現実に戻すのが上手だな。悪夢の世界に放り込むのも上手だが。あ、夢の世界に連れて行くのも上手だった。俺専用の夢幻の魔法使いだ。


「キモいわね」


 さーせん。なんでわかるんだ……。


「えーと。じゃあまず並び順から。グルガンは罠も多い。俺が先頭を行く。道幅は広いから、並んで戦闘する可能性も考慮して、俺の次はユリーネ。そしてアルマ。その後でレイシャとブレア。最後尾はメスブタだ。背後からの襲撃に備えてくれ。アルマは状況に応じてユリーネとレイシャのサポート。ブレアはメスブタの手綱を握っていてくれ」


 文字通り手綱をつけたいぐらいだが。まあ、呼べば来るからいいか。



 全員が納得したところで、大事な話を始めよう。レイシャへの確認だ。


「さて、そろそろ教えてもらえますか? 当てとはなんでしょう?」


「悪魔です」


 端的なお答えだ。悪魔か……。俺にとっての性騎士団長だな。訓練場で2人きりで汗を流した悪夢がよみがえる。


 だが聖女に悪魔か。珍しい組み合わせだな。


 悪魔とは神に反逆した天使のことだ。例えば、懐かしきウボウボ天使が『なんでこんな服着なきゃダメなのっ!?』と神に向かってキレればたちまち光輪は消滅し、翼は異質化し悪魔に堕ちる。


 まあ、悪魔になったからどうということはない。それはそれでそういう存在というだけで、別に神に滅ぼされたりしない。ただ、神にマジギレしたことがある天使が悪魔となるだけだ。変質神を考えると、あいつのせいで悪魔堕ちした天使は多そうだな。


 悪魔も神界ホテルに住んでるようだし、神話に描かれたような残虐な悪魔とはだいぶ違う。さっき黒蛇ご一行20名様を惨殺したブレア達の方がよほど悪魔だ。


 ただ、悪魔はみな、神を言い負かすために頑張っているのだ。神を論破してざまぁしたいのだ。


 話を戻そう。


「悪魔が当てですか。どういうことでしょう?」


「逃亡を手助けしてくれるはずです。一時的ではなく長期的にですね。しばらくは悪魔の今の住処で暮らすことになると思いますが……。もともと聖女になった時に声をかけられていました。聖女が嫌になったらグルガンの50階層の遺跡に来いと」


 50階層か。かなり深いな。グルガンは全100階だそうだからちょうど半分だ。そもそもここの人類最高到達階層が37階層じゃなかったか?


「常識的には即日で準備もせずに到達できる階層ではありません。人類最高到達階層をご存知ですか?」


「37階層だったかと」


「ご存知でしたか。よく行く気になりましたね」


 レイシャは不思議そうな顔を一瞬した後、笑って言った。


「ニト様達でなければその気にならなかったでしょうね」


 50階層。普通なら到達できない場所。そこに来いという悪魔。信用できるのだろうか。


「その悪魔をなぜ信じているのですか?」


「何故でしょうね? 惑わされたのかもしれません。ただ信じられたのです。共通点が多かったからかもしれません」


 そんなお見合いみたいな理由なのか。簡単だなおい。そして勉強になるな。昔読んだ『ナンパのキメ手』なる本では共感が大事と説かれていたがそういうことか。悪魔は聖女に共感しまくったのか。マジックワード『わかる!』を多用したのか?


「ちなみに悪魔はなんと?」


「まず、蘇生を嫌っていました──」


 へえ、レイシャは蘇生嫌いなんだ。


「──あとお魚が好きでした。私も好きです。パンは少し焦げたぐらいが好きです。悪魔もそうでした。後はお茶会ではイジるのもイジられるのも好きで、何と言うのでしょう……そう、一回飲みに行って盛り上がって2回目2人で食事に行ったくらいの気安さを感じました。初対面なのに。何を話しても共感が得られて、打てば響くという会話が延々続いたのです。あの悪魔、私のことが好きだと思います」


 お、おう。おーう。え?


「えっと、レイシャさんはこのように仰っていますがユリーネさん的にはどのようにお考えで?」


 大好きなレイシャが悪魔に惑わされてるのではないか。大丈夫か。


「レイシャを好きならまともな悪魔だろう」


 まともな悪魔とはなんぞや。

 思考を放棄してとりあえず悪魔さんにお会いすることを決意しようとした時、レイシャが話しかけてきた。


「こちらからも質問してよろしいでしょうか?」


「ええ、構いませんよ」


「皆さんは何者なのですか?」


 今更といえば今更だが気になってはいたのだろう。躊躇っていたが『悪魔』の話をした以上、こちらの情報もあかせということか。

 難しい質問だが答えちまうか。


「簡単にいえば、神界にある牢獄からの脱獄者です」


「えっと……え?」


 まあ、これに戸惑うのはわかる。


「俺たちはそれぞれ神の禁忌を犯しまして。神界にある無限牢獄に投獄されていたのですが、晴れて無限牢獄からの脱獄が成功したのです。史上初の脱獄者として人間界を楽しんでいる最中なのです」


「はぁ…………」


 レイシャとユリーネは首を傾げている。


「そうですね……悪魔と会ったことがあるのでしょう? まあそんな感じですよ。おかしな奴が人間界に行くことについて神はそんなに頓着しない質なのですよ。もっとも我々は誰かを害そうなんて気はありませんが」


 穴の女神には喜んでほしいわけだし。対人間にしたって襲われなければ殺す気は無いし。


 レイシャは少しの間、顎に手をやり考え込んで、納得したように頷いた。


「なるほど、そうなんですか。皆さんは人間なのですよね?」


「ええ、人間です。ちょっと神々のイタズラで肉体年齢と実年齢が釣り合っていないのですが」


「どれくらいの間、監獄で生活を?」


「俺は5年、ブレアは200年、メスブタは数百年、その間肉体の成長は止まっています。アルマは別枠ですね」


 百合百合コンビが絶句した。年上と思ってなかったか? 年上ってレベルじゃないが。



「とりあえず進むのです。いつまでもここで話していたら朝になるのです」


 アルマさんはとっととダンジョンを終わらせて街に行きたいようだ。街には欲望を満たすものがたくさんあるからな。


「あ、もう一つ。50階層ほどの深さならば追っ手を気にしなくても良かったのでは?」


 どうせ追っ手も途中からついてこれなくなるのだ。適当で良かったのではないか。


「悪魔も出入りは普通にするそうですから。出入りできなくなったり、うるさかったりすると嫌なんでしょう」


「なるほど、ではここで待っていてもいいかもしれない?」


「ええ、しかし出入りの頻度はわかりません」


 じゃあ行くしかないか。と、ずっと黙っていたブレアが動いた。


「私の方も準備完了よ」


 あ、脱出用の魔法陣の設定か。ここから先、一定階層ごとに標をつけて行く必要がある。でなければ穴の女神にたくさんの刃物で刻まれて人生の終わりを迎えることになる。


「今回の入り口は適当に開けた穴だったけど魔法陣に影響はない?」


「私が出入りした場所のイメージが大事だから。もちろん、既に閉じてるけどそれでも大丈夫よ」


「そうか。じゃ行くか」


 ベッドのフロアを探しに…………!


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