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【書籍・漫画化】魔道具師リゼ、開業します~姉の代わりに魔道具を作っていたわたし、倒れたところを氷の公爵さまに保護されました~【七章進行中】  作者: くまだ乙夜
三章 テウメッサの狐編

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92 リゼ、王子と密談する


「すごいです! 本物の鉄腕リッツみたい! 幻影でもかっこいいですけど、本物が出るようになったらもっともっとかっこいいですよ!」

「しょ……精進いたします」

「ハーヴェイさん、魔力量も十分なので、練習したら絶対素敵と思います!」


 照れに照れているハーヴェイさん。


 見てたらなんだかわたしの心も潤ってしまった。


 喜んでもらえるとうれしいね!


「いやはや、素敵ですが、やはり私には、ちょっと……目立ちすぎるかと……」

「じゃあやっぱりこれでしょうか?」


 最後に作った作品を披露するときがきた。


 ハーヴェイさんは素振りして、困惑した表情になった。


「何も、出ませんが……」

「あ、そうでした! これ、敵に当てると出るんですよ! この案山子を切ってみてください!」


 わたしが店内に置いたトルソーを持ってくると、ハーヴェイさんは狭い店内のあちこちに気を配りながら、軽くトルソーを叩いた。


 無数の小さな火が弾ける様子に、ハーヴェイさんが目を見開き、瞳に火炎の華が咲く。


「……ぐっと控えめですが、一番渋くできたと思います!」


 わたしがこぶしを握ると、ハーヴェイさんはうなずいてくれた。


「いいですね」


 ハーヴェイさんが木刀を返してくれる。


「これの火花を半分くらいにしてもらえたら、と思います」

「調整します!」


 その場で火花の設定をごそっと削り、半分以下にして返す。


 ハーヴェイさんはトルソーを叩いた結果に、満足してくれた。


「これにします」


 やったぁ!


 わたしはウキウキで契約事項をまとめた。


「……しかし、すごいですね」


 ハーヴェイさんがスペックを見て目をしぱしぱさせている。


「昔から魔剣に憧れがありまして、よく武器屋に通っていたのですが、【重量軽減】を数グラムまで極めたものは、初めて見ました」


 それから店内に飾ってある五級の認定証を見る。


「魔剣における【重量軽減】の重要性は言うまでもありません。速いスピードで重い剣を振るえば振るうほど、破壊力が高まるものですから。名匠と言われる方々が一グラム単位で競っている世界を軽く超越した、重量ゼロの魔剣……初めは冗談かと思いましたが」

「あはは……ちゃんとこの性能通りになりますよ」

「いただいた魔石もどうやら相当珍しいもののようですし」

「国内唯一って言われてます!」


 ハーヴェイさんはわくわくした顔をしていた。


「早く使ってみたいものです」


 ハーヴェイさんが待ち遠しそうにそう言ってくれたので、わたしのやる気もうなぎ登りだった。


 がんばって作ろう!


「もしも冒険者として稼ぎが安定したら、そのときは遠征用の装備もお願いするかもしれません」

「任せてください、テントからフォークまで、割となんでも作りますよぉ!」

「その前に、低級の依頼をきちんとこなして自活できるようにならなければいけないのですが……」

「ハーヴェイさんならすぐですよ!」


 ハーヴェイさんは頬を染めて、興奮気味に語ってくれる。


「ずっと冒険者になりたいと思っておりました。憧れを形にするのは、何とも楽しいものですね」

「はい! これからも、どんどん叶えましょう!」


 ハーヴェイさんは希望に満ちた顔で、お店を出ていった。


 いやー、初心者さんの装備を作るのは夢があって楽しいなぁ!


 両親がいたころのわたしはずっと裏方で、接客とかしてこなかったから、実際に使う予定の人の話が聞けるのって新鮮。


 楽しそうなハーヴェイさんの話を聞いて、わたしも楽しくなった一日だった。


***


 わたしがひとりでお店番をしていたときだった。


 急に寝そべっていたフェリルスさんが起きて、激しく吠え始めた。


「フェリルスさん? どうしました?」

「リゼ、気をつけろ! 誰かいる・・・・ぞ!」


 フェリルスさんが低く唸って、飛びかかる姿勢を見せたとき、フッと何もないところから人が現れた。


 しーっと、フェリルスさんに静かにするよう手振りで合図したのは、金髪碧眼の王子様。


 アルベルト王子だ。


 姿が見えなかったのは、わたしが渡した『姿隠しのマントタルンカッペ』を使っていたから?


「なんだ、お前は!? 名を名乗れ――」


 アルベルト王子はフェリルスさんを無視して、わたしにひそひそと言う。


「リゼルイーズ嬢、内密に話がある」

「はぁ……」


 ただならぬ雰囲気。何だろう?


 わたしはお店の看板をクローズドにして、アルベルト王子をわたしのアトリエに連れてきた。


 フェリルスさんも一緒についてきてくれて、床に警戒姿勢で伏せている。いつでも跳びかかれる態勢だ。


 アルベルト王子はいつもの手土産や世間話抜きで、わたしに深刻な顔でこう切り出した。


「テウメッサの狐の討伐で今週は毎日罠を張っていたんだけどね。困ったことになった」


 そして取り出したのは、太い縄の束。


「くくり罠に引っかかったようなんだけど、縄を切って脱出したみたいなんだ。これがその罠」


 アルベルト王子は、大きな作業用のテーブルに、罠を組み立てて再現してみせた。


「どう思う?」

「……縄の切り口がスパッとしてますね。ナイフで切ったみたいです」


 アルベルト王子はそれをわたしに見せたかったみたいで、困ったようにうなずいた。


「ユーダリル親方の罠は完璧だったと思う。でも、誰かが不自然に罠を解除した痕があった」


 アルベルト王子はあたりを憚るように、小声でわたしに耳打ち。


「この罠捕獲作戦は国内に五か所ある騎士団すべての合同で進めていて、魔道具師協会と王家も関わっている。犯人の絞り込みをかけようと思って、複数個所に同時に罠を設置して、それぞれ違う罠の場所をわざと教えてみたんだ」


 わたしは大きな声を出さないように口元を手でおさえながら、こくりとうなずいて、続きを促した。


「ひとつ、また破壊された跡があった。次の日にも同じように誘導して、マントで隠れて見ていたら、のこのこ現れた男が私の目の前で空の罠を破壊した」


 おお、とわたしは感動した。


 わたしの作ったマント、役に立ったんだ!


「その場で捕らえたかったけど、私の単独では後をつけるのが精いっぱいでね。でも、尾行して、尻尾は掴んだんだよ――今は君に危険が降りかからないよう、犯人が誰だったかは言わないでおくよ」


 うんうんと、わたしはうなずく。


 知らない方が安全なこともあるもんねぇ。


「でも、なんとしても犯人は捕まえたいんだ。そこでお願いがあるんだけど――」


 アルベルト王子はさらに声をひそめた。


「『姿隠しのマント』を十人分用意してほしい」


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