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 正直困ったというのが本音だ。受け答えがしっかりしているがまだ子供だ。俺が欲しかったのはこちらの知識不足を補ってくれる奴隷だ。この娘はミオやリュミスより年上ではあるが二、三歳上くらいであろう。

「奴隷のことはわかった。そして君が奴隷から解放される術が無いのもわかった。あ、そういえば名前を聞いてなかったね、教えてくれるかな?」

 なんか俺が世話しなきゃならなくなりそうなので聞く。うん、助けたのになぜ?

「あの……、私は捨て子で、物心つく前は孤児院にいたらしいのですが、物心がついた頃には奴隷商のところにいました。そこでは、おい、とかお前とか魔族としか呼ばれなかったので名前がないのです」

 うん、その説明いる? こっちのテンションが下がるし、なんか同情を誘われてる気がしてしまう。


「そうなのか。受け答えがしっかりしているけど奴隷商のところで教育を?」

「はい、十年以上奴隷商の下で売れ残っていましたから」

 え? お前……。

「え、っと、マジ?」

 それだけを何とか捻り出す。

「はい、それも大きな問題で、あるときから歳を取らなくなりました。奴隷商にも気味悪がられましたが、価値を上げるために常識や教養、マナーなどは叩き込まれました」

「奴隷は物扱いなんでしょ? よく、無事だったね」

「奴隷は物扱いですがあまり酷いことをされる訳ではありません。罪科が刻まれることを恐れそこまでのことができないようになっています。ここの奴隷商人のように最初から罪科持ちの場合は違いますが」

 なるほどね、法律で縛るのより余程拘束力があるな。


 この娘は、合法ロリ以外は特に問題がないみたいだ。異端児とかはよくわからないし。欲しかった情報を持っているみたいだし。

「うん、わかったよ。そして最後に聞きたいんだけど君は俺の奴隷になりたいの?」

 驚いた顔をしつつ

「私のような異端児をよろしいのですか? この赤い魔結晶を見ると皆嫌がります。

 私はリュミス様が貴方様なら酷いことはしないと心から仰られていたのでできることなら貴方様にご主人様となって欲しいです」

 真摯な態度であったので信じることにする。


 手を取り、赤い魔結晶を見てみる。

「綺麗な色をした宝石にしか見えないんだけどね」

 これで恐れられる理由がよくわからない。よくわからないけど女の子が泣きそうになっている⁉︎

「わかった、主人になるよ。何か必要なことってある?」

 慌てて言うと

「この奴隷の首輪についている結晶に血を一滴垂らして頂けますか?」

 そう言って首輪の真ん中についている結晶を示した。剣で親指を軽く斬り、血を垂らした。少しの間光りすぐに収まった。

「これで主従契約の完了です。よろしくお願いします、ご主人様」

 と言って深く頭を下げた。

「こっちこそよろしく。田舎の出で常識的な事でもわからないことが多々ある、色々と教えてくれると助かる」

「よろしくおねがいしますね」

「よろしくお願いだよ」

 とみんなで言い合う。


「じゃあ、まずは名前だよね。君とかじゃ他人行儀だし」



『ステータス』


 名前 ユー(長谷川佑衣斗)

 種族 ヒト♂ Lv2

 称号 (異世界人)


 HP 260

 MP 190


 攻撃 20

 防御 23

 速さ 26

 知識 20

 精神 20

 器用 23

 運  19


 スキル省略


 {眷族(2/2)}

 (ミオ リュミス)


 奴隷

 魔族♀


 また能力値が増えている。多分レベルアップ音を聞き逃したのだろう。

 思った通り奴隷の欄が増えている。ここから女の子のステータスが見られそうだ。



 名前 なし

 種族 魔族(未覚醒魔王)♀ Lv7

 称号 憤怒の化身(未解放) 奴隷


 HP 490

 MP 210


 攻撃 49

 防御 21

 速さ 49

 知識 21

 精神 21

 器用 49

 運  10

 忠誠 20


 種族スキル

  魔力吸収(弱) 魔力操作(弱) 魔力解放(弱)


 エキストラスキル

 未解放


 ユニークスキル

 未解放


 スキル

 火魔法Ⅱ 木魔法Ⅰ 武器顕現Ⅱ 家事Ⅴ


 ……。え? ……。うん、見間違いじゃないみたいだ。二度見しても変わらないし。

 うむ、俺の知っている魔王とは随分と違う。

 魔王か、何度もゲームで仲間にしたが、配合で作るとテンションが上がるんだよな。

 なんて昔を思い出し、懐かしんでいると

「ど、どうかなさいましたかご主人様?」

 と心配そうに聞かれ、ミオとリュミスは、こちらを見つめていた。


 うーん、どうするべきか悩んだので聞いてみる

「奴隷ってどこまで命令を守るものなの?」

「原則として命令に絶対遵守ですが、自らの命を脅かす命令やご主人様を傷つける命令、生理現象に反する命令、罪科に触れるような命令などは不可能です。それら以外で命令を反故にしようとすれば、首輪が縮まり呼吸困難になります。逃げようとしても同様です」

 なるほど、なら教えてもいいかな。


 ステータス画面に向かって可視化と念じてみる。しばらくすると色が濃くなり、可視化したことがわかる。

「これは命令しなくても大丈夫だと思うんだが、念のため命令させてもらう。これについては一切外部に話すな」

 と言ってステータスを見せた。


 見た瞬間、女の子の呼吸が止まり、顔が青ざめていった。

「ごじゅじんざまいままでありがどうございまじた‼︎」

 突然泣き出した!

「今までって今日会ったばかりだろ?」

 泣き出してしまったのでとりあえず抱きしめる。

「だって魔王なんだもん。グスン、だから捨てられたんだ、ヒグ。うわあああん‼︎」

 ちょっと落ち着いたと思ったらまた泣き出した。しばらく抱きしめ、頭を撫でる。ミオやリュミスも心配そうに女の子を抱きしめた。


 しゃくりあげるような声が治まったころ

「迷惑となります。私を奴隷商にお売りください」

 と上目遣いで言われた。

「うーん、別に迷惑でもないんだよね、実は」

「魔王なんですよ‼︎」

 悲痛な叫び声だったが

「今さらなんだよね。一人くらい増えても問題無いよ」

 軽く流す俺を不思議そうに見だした。


「まあ論より証拠だよね。あ、これも秘密だから、リュミス人化解いて」

「きゅ、マスター」

 と言って人化を解いた。おっと服に埋れてしまっている。

 きゅっきゅ、鳴いているのですぐに助けた。

 リュミスを見て驚いている女の子に

「ね、秘密が一つくらい増えても大丈夫だと思わない?」

 と囁きかける。

 何か言いたそうにしていたが

「そうだ、君の名前は紅音(くおん)だ!」

 と畳み掛ける。


 あ、フリーズした。

「くおん、くおん、クオン……。私の名前」

 と思ったらなんか呟きだした。正直怖い。

 気に入らなかった訳じゃなさそうだし放置して帰りの準備を進めておく。

 まだ戻ってきていないクオンに倒した敵から剥いだグローブをつけておく。

 これで見た目はヒトに見えるだろう。ステータスを隠蔽するのも忘れない。

 クオンは、歩けそうになかったので、抱っこして街に向かうことにした。

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