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142話 思い出した想い

 



 ハーディーンと二人で次元の穴からミニユグドラシルの中に入り込んだ。


 入るまでかなり大変だったが、とりあえずここまで順調だ。

 後はこの異常を引き起こしている原因を修正しないといけないけど。

 どうすればいいのかな。



「なぁ。壊れた核を何とかしないと、この崩壊は止まらないんだよな?」



 隣にいるハーディーンに聞いてみた。

 どうせ答えてくれないんだろうけどダメ元ってやつだ。



「…………」



 話しかけても虚空を見据え、何か一人の世界に入っているようで返答してくれない。



「おーい。ハーディーン聞こえてるか? もしも~し」



「…………」



 駄目か。

 目の前で手を振っても何度も話しかけても反応がない。

 無視されてるって感じじゃないから、俺の声が聞こえてないのか。


 やっぱり自分で何とかするしかない。

 ミニユグドラシルを造った張本人だから何か情報が聞ければと思ったんだが。

 しょうがない。



 しっかし……ここも、どれだけ広い空間なんだ。

 どこまでも続いているような感じを受ける。


 この異常を引き起こしているであろう、ユグドラシルの核をこの広い場所から突き止めないといけないのか。


 魔力ソナーで探ると感知出来るかな。

 集中力を高めて広範囲に魔力の波動を拡げていく。



「この反応は……見つけた! オリジナルのユグドラシルと同じ感覚がある。ここから……結構奥だな。おい先に進むぞ」



 聞こえてないかもだけど一応ハーディーンに声をかけ歩きだすと、相変わらず黙ったままだが、ちゃんと後をついてきた。



 皆は無事にここから出られただろうか。

 移動しながら気配察知で外の状況を確認してみる。

 女神が見ていた様に力を行使すると。

 映像として、外の様子が見えてきた。



 あの後アルフィン達は無事に脱出できたみたいだな。

 良かった。

 アーロンさんに、状況を説明して一緒に避難誘導をしている。

 ワープの石盤から、次々と戦士達がルーデウスへとワープしていくのが見える。



 相変わらず地震が続いていて大陸のあちこちには巨大な地割れも発生しだしたが、その中でも、皆はそれぞれのポジションで救助に動き出していた。


 ナエは俺の言ったとおり、成長した魔力操作で戦士達を守っている。

 シズクは魔物を狩りながら、石盤まで避難する人を護衛している。

 アルフィンは、治癒魔法全開で傷付いた人達を助けている。

 アリサ女王も、一国の王として指示出しと他とも連携して連合軍を引っ張っている。



 離れた所ではバルデルさんとインさんが二人で強力して、巨大な魔物を倒した。

 はは。相変わらず楽しそうに戦っているな。


 クラウドさん達、隊長陣も獅子奮迅の働きで魔物を狩り、仲間を助けこの状況を切り抜けようとしている。



 俺がマギア・フロンティアで出会った人達が一丸となって、この危機を乗り越えようと力を合わせている。

 皆の尽力のお陰で十万以上いる連合軍の半分は避難出来ているみたいだ。

 まだまだ気を抜くには早いけどこれなら、何とかなりそうかな。



 外の様子を伺う俺の横でハーディーンも又、同じようにアルフィン達や世界の人達の行動を見ているようだった。

 真剣な目付きで、一人一人の行動を見つめている。



 誰かが誰かを助ける。

 一人が困っていれば、皆が助ける。

 例え無理だと思っても、皆で力を合わせて乗り越える

 皆が自分以外の人を思いやり、守っている姿をハーディーンは見ていた。



「そなた……タクトと言ったな。何故……そこまでそなたは、そなたの仲間達は、他者を思いやれるのだ。今まで余が見て関わってきた人間達と何が違う? 同じような姿で、能力的にもそこまで違いはないようなのに……何故」



 初めてハーディーンに名前を呼ばれた。

 その顔は今までと明らかに違ってみえる。

 今ならきちんと話が出来ると思った。


 今なら俺達の想いを、ターニアさんが授けてくれた想いを伝えられる。



「お前から見たら人間は皆同じ様に見えるかもしれない。ターニアさんのように優しい心を持つ人もいれば、悪い心を持つ人もいる。

 その比率は半々とまではいかないかもしれない。

 悪い人の方がもしかしたら多いかもしれない」



 ハーディーンの雰囲気から、本当に真剣に俺の話を聞いているのが伝わってくる。



「でもさ。元々俺達人間は生まれた瞬間から、罪人なわけではないと思うんだ。

 色々な環境や、要因でそうなってしまった人達もいると思う。

 悪い心を持つ人が、他人を利用しようとする人達がトップに立ってしまうと、良くない世の中を作り出してしまう。

 だから、俺達は大変だけど皆で間違った方向に向いていないか、確認していかないといけないと思う。話し合いをしていかないといけないと思う」



 権力の持ち方も、今後考えていかないといくないだろう。

 その為には一人ではなくて、たくさんの人達の考えや気持ちが重要になってくる。



「一番大切なのは、一人一人が他者を思いやる心を忘れないこと。そういう心を持てる人を、増やしていくこと。

 それは地道な道かもしれない。

 でも、やる価値はあると思うんだ。

 だから、お前に世界を破壊させるわけにはいかない。

 お前は言ったよな? もっとたくさんの世界の闇を見たら人間を信じられなくなると。俺はまだ二つの世界しか知らない。だけど、どの世界にもターニアさんの様なアルフィン達のような素晴らしい心を持つ人達はいる。必ずお前が見直す事が出来る世界を造っていける人達はいるんだ。

 だから……これ以上世界に危害を加えないでほしい。

 死の間際に犯人の名前を出さなかった、死しても尚お前を気遣うターニアさんの想いを、言葉を信じて欲しい」



 俺の言葉を一字一句聞き漏らすまいと、聞いていたハーディーンは一度目を閉じ、深く息を吐いた。



「……一つだけ聞かせてほしい。ターニアは何と言っておったか?」



 ターニアさんがあの丘の上で俺に話してくれた内容をそのままハーディーンに伝えた。



「…………そうか。余は……間違えていたのだな……。あの娘にターニアにそれを教えられていたというのに……。それに気づかずに()()……何て事を……! 私は、手を汚し過ぎてしまった。どれだけの犠牲者をこの手で生み出したのか。今更……どうすればいい……こんな私に何が……」



「だからこそ、これまで犯した罪以上に人間達を救ってほしい。不幸にした数よりも、幸福の数を増やしてほしい。ターニアさんが望む善き神として。女神もそれを望んでいると思う」



「タクトさんの言うとおりですよ。アレースローン」



 声が聞こえた。

 アレースローンと同じように人間達を見守り導く存在の声が。



「この声は……アフロイーリス……」



 声のした方向を見ると前方にある核の部分が光っている。

 話しながら進んでいる内に、いつの間にか目的地点までたどり着いていたみたいだ。


 その光が大きくなるとそこから、ユグドラシルにいる筈の女神が現れた。



「こんにちは」



「何でこんな所に女神が?」



「……そうか。ここはオリジナルのユグドラシルと繋がっているのだな」



「その通りです。アレースローンが新たなユグドラシルを造ったのでわたしが居た所と繋がりました。核を介してここに来れたのです。……こうして話のはいつぶりでしょうか。お元気そうですね?」



「……もう覚えていない。それだけ時間が過ぎたということか。久しいなアフロイーリスいつもあの場所から観ていたのだろう?」



「はい貴方の事も観ていましたよ。皆さんのお陰で大切なものを取り戻したようですね。アレースローン貴方はもう気づいているんじゃありませんか? 自分が果たすべき責任の取り方を」



「……責任の取り方……そうかもしれない。タクトに言われたが私は信じてみようと思うもう一度人間を――――」




 ガゴンッ!!

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!



 さっきよりも更に激しい揺れが発生する。

 そして、核に「ピシリッ」と亀裂が入ると、真っ二つに割れた。

 そこからさっきとは比較にならない圧倒的なエネルギーが吹き荒れる。



「まずい! 予想よりも世界に影響が出てしまった。このままでは……しかし、何で……」



「ここは、オリジナルのユグドラシルとも繋がっています。その破壊のエネルギーも伝わってしまう。このままでは、タクトさんの前世の世界を含む全ての他世界が滅んでしまいます!」



 事態は最悪な方向に動きだしてしまった。

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