12話 出発当日①
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俺の歓迎会の翌日。
ハーディーン討伐の冒険へと旅立つ日となった。
準備が終了したら、城のエントランスで集合することになっている。
移動すると、アルフィンは既に先に来ていた。
アルフィンは赤色と白色のドレスに、ラクス皇后が使っていたネックレスと、左手にピンク色の腕輪をしている。
俺が装着するのと同じように、様々な魔力付与を感知出来るから、これらが、アルフィンの専用装備なのだろう。
「やあ。アルフィンおはよう」
「タクトさん。おはようございます。昨晩は、遅くまで引き留めてしまい申し訳ありませんでした。寝不足にはなっていませんか?」
「何もだよ。俺もアルフィンと色んな話が出来て楽しかったし。あの後直ぐに寝たから、体調は抜群だよ」
ほっと。
アルフィンは安心した様に息を吐き出す。
「集まっておるようだな」
エントランスに、ユルゲン陛下が現れる。
「いよいよ出発の時が来たな。これからの、旅は険しいものになるであろう。幾重もの困難や危険もあるだろう。すまぬな。こんな危険な旅に出さねばなるぬ事を許してくれ。
俺とアルフィンの顔を見て謝ってくれる。
「大丈夫です。もう覚悟は出来てますから」
「御父様。タクトさんの言われる通りです。わたくしも既に覚悟は固まっておりますわ」
「……ありがとう。だが、そなたらにだけ頑張らせるつもりはない。
我がトランスヴァールにも出来るだけの力を尽くさせてもらう。まずは、旅立つにつれこれを渡しておく」
ユルゲン陛下から貰った物は。
各国の国王、党首に宛てた書状。
300万リラ(マギア・フロンティアの貨幣らしい)
「書状には、そなたがこの世界に来た経緯とハーディーン討伐の旅に出ている事、力を貸してもらえる様に我の紋章を刻んでおいた。
魔力を紋章に集めると映像が出て内容を表示する様になっておる。用紙にも魔力付与を施しておるから、余程のことでなければ破けはせん」
魔法を使った手紙か。
自分たちでも説明は出来るけど、この世界最大国の国王からの方が信憑性とかあるだろう。
そして、300万もくれたよ。凄いなユルゲン陛下。
お金の心配は、当分しなくても良さそうだ。
「色々と気を使って頂いてありがとうございます」
「これぐらいの事はさせてくれ。これからも、何かあれば言ってくれ。何でもやらせてもらうからな」
「分かりました。その時は、よろしくお願いします」
「それにな。そなには個別でお願いしたい事もあるのだよ」
「個別に……ですか?」
「うむ……」
そう言ってユルゲン陛下は、アルフィンの顔を見た。
「御父様? わたくしの顔に何かついてますか?」
「いいや。いつも通り、可愛い顔だよ。タクト殿。ちょっとこちらに」
ユルゲン陛下がアルフィンから距離を取ると、離れた所から来いと、手招きする。
「あっ。はい」
ユルゲン陛下の所まで行く。
「そなたに、アルフィンの事は任せた。
あの子は器量がいい。親バカかと言われるかもしれないが、本当に良い子なのだ。それに、見たところそなたに気があるのも分かる。そなたも、アルフィンが気になっているだろう? ああ。言わなくても分かっておる。分かっておる」
「うんうん」と、何度も頷くユルゲン陛下。
それにしても、陛下は俺の気持ちにも気付いてたか。
「だから、どうか大事にしてあげてくれ」
最後は真面目な顔でお願いされた。
「任せてください」
俺も言い切った。
言われるまでもなく、俺はアルフィンを幸せに大切にします。
アルフィンの元へ戻る俺達。
「アルフィン。お前は今日まで本当に真っ直ぐに素直に育ってくれた。治癒魔法の鍛練も良く頑張ったな。
その姿を見て、亡くなったリアラも喜んでいるだろう。
遂に……遂にその力を使う時が来たのだ。見事ハーディーンを倒し、タクト殿と無事に帰ってきておくれ」
「はい……御父様……。今日までありがとうございました。必ず役目を果たし帰って参ります」
ユルゲン陛下と見送りに来てくれた人達に頭を下げ城を出る。
アルフィンもユルゲン陛下も目元が赤くなっていた。
城を出て、街の北門に向かう。シズクと合流するために。
北門に到着すると、シズクはいた。
昨日会った時と同じ鎧と、刀を腰に差している。
「あ、アルフィン様、タクトさん」
シズクがこちらに気付き駆け寄ってきた。
「シズクおはようございます。これからよろしくお願いしますね」
「シズクおはよう。待たせちゃったかな」
「いいえ。そんなに待っていません。私は待つ時間も好きですから大丈夫です」
「それで、これから何処に向かうのですか?」
シズクが聞いてきた。
「それなんだけど、ショップと冒険者ギルドに行きたいんだ。
必要な物もあるかもしれないし、ギルドには登録をしておきたいのと、旅に支障がなければクエストも受注したい。
その後、クリスタから他の大陸に行こうかなと思ってるんだけど。いいかな?」
「はい。わたくしはそれで大丈夫です」
「私も賛成です。タクトさんは昨日こちらに来たばかりなんですよね? それでしたら色々と見ておいた方がいいかと」
「ありがとう。それじゃ先ずはショップに行こうか」
「それではわたくしが案内しますね。城下町は幼いときから遊びに来ていたので詳しいですから」
アルフィンが案内をしつつ城下町の説明をしてくれた。
この街は四つのエリアで分かれているそうだ。
商業区
ここは、主にお店類が並ぶ。
武器屋、防具屋、アクセサリー屋、道具屋等。
食料品や服屋といった生活類もここで揃う。
役所的な公的な建物もここにある。
住宅区
ここは名前の通り人々が暮らすエリア。
一般階級の人達は大体ここに住んでいる
貴族区
ここは名前の通り貴族、位の高い人達が暮らすエリア。
俺が歓迎会で出会った、街の重鎮達は大体ここに住んでいる。
冒険区
ここは、冒険者ギルドもここにある。
魔法学校もここにある。
この街のエリア毎の説明が終わり商業区に来ていた。
装備屋も寄ってみたけど、それぞれが既に装備は持っているので、必要な物は無かった。
装備屋の主人から、魔物を完全に殺す前に、魔物の素材を剥ぎ取り、ここに持って来れば装備品に効力を付与出来ると説明してくれた。
それならカイザーベアの素材なら良い装備品作れたんじゃと思ったが、ユーリが張り切って物凄い魔法を使ったから肉片も残らなかったのを思い出した。
勿体ない。
道具屋で一応薬草は買っておく。
アルフィンがいれば、そんなに使わないかも知れないけど、必要になるかもしれないし、冒険と言えば薬草とかの回復アイテムは常識だ。
ちなみに薬草の値段は一個10リラ。10個程購入する。
食料も保存が効く物を買っておく、野営の道具も一緒に。
いつも宿を使えるとは限らないから。
道具袋も買ったので、その中に食料等は入れておいた。
旅で使うものが増えてくると荷物でかさばるから、魔法で収納とか出来ないのかな。
色々と便利そうな魔法作れそうなんだが。
クリスタに着いたら試しみよう。
買い物が終わり、冒険区まで来た。
「たしか、ここに冒険者ギルドがあるんだったよな?」
「そうです。ここのギルドが本部的な役割を持っていて、各国にはギルドの支部がありますね。他には魔法を学べる学舎と、魔法修練場もあります」
「魔法修練場?」
「魔法を行使出来る場所です。街中で中級魔法以上を使う訳にはいかないので。
修練場は結界があるので、魔法の練習をするにはもってこいの場所になるのです」
街中で魔法ぶっ放すと建物とか破壊しちゃうし、危険だ。
それに、修練して覚えた魔法を使いたい人達もいるだろうから、こういった施設は必要か。
街を出たら魔物もいるけど、普通の人だと戦えないだろうしな。
「なんか決闘の場としても使えそうだね。ケンカした人とかの」
「そうですね。どうしても収まり効かない人達もたまにいるらしく、使用する人もいるみたいですね」
「二人はギルドに登録してるの?」
「わたくしは、冒険に出ることもありませんでしたので、登録はしておりません」
「私はリアンヌ様の側にいることが多かったので、神殿から出る機会もほとんどなかったので登録していません」
「それなら、ついでだから皆一緒に登録済ませちゃうおうか。場所もこの先みたいだし」
そんな話をしていると、前の方の広場で人だかりが出来ていた。
怒鳴りあう声も聞こえてくる。
「なんだ?」
「人が言い争いでもしているのでしょうか?」
「行ってみましょう」
人だかりまで来ると。
冒険者だろうか。二人の男が言い争っていた。
「てめぇ。もう一回言ってみろ!」
「あぁ? だからてめぇがトラップ踏み抜いたからアイシャが飛ば
されたんじゃねぇか!」
「こっちだって身を守るので手一杯だったんだ。仕方ねぇだろうが!」
鼻先を付き合わせて、怒鳴り合う。
どうやらこの二人が、この騒ぎの元らしい。
「まぁまぁ落ち着いてください。言い争っていてもアイシャさんは帰ってきません。今、僕の方でギルドで依頼を発注してます。もしかしたら、アイシャさんを助けに行ってくれる実力者がいるかもしれませんから」
その二人を止めに入るのは、若い大人しそうな男の人だ。
ギルドと、言ってるから関係者かもしれないな。
「だけどよぉ!! こいつが、へまさえしなけりゃ!」
「うるせぇよ! お前だって、逃げてたじゃねぇかよ!」
止めても、効果がないみたいだ。
人だかりも増えてきてるし、仲裁する騎士の人達もまだ来てないみたいだから止めるか。
俺はいまだ唾を掛け合う二人の元へ近づいた。
「ちょっとちょっと落ち着きましょう?」
「あぁ? なんだてめぇは」
「あなたは」
「部外者は引っ込んでろ。今イライラしてんだ怪我したくないなら黙ってろ」
青筋を浮かべながら凄んでくる。
カイザーベアに比べれば、全然怖くないけど。
「まぁまぁ。こんな道の往来で騒いじゃ皆に迷惑でしょう? とりあえず、場所移動するとかしましょう?」
「てめぇ。引っ込んでろと言ったよな!」
言い争っていた一人が俺に殴りかかってくる。
「仕方ないな……」
上級魔物より圧倒的に拳の動きが遅かったので、それを最小限の動きで回避した。
殴った本人は俺が突然消えたと思ったのか、驚愕している。
「凄い」
シズクが。
「これはやりますね」
仲裁していた人が。
それぞれの反応をしている。
アルフィンはある種の信頼からか、驚きもせず当然との顔をしていた。
「……な、何だお前は」
冷や汗を浮かべる殴ってきた人。
「落ち着きましょう? ね?」
少し魔力を解放し威圧する。
「わ、分かった」
分かってもらえたようだ。
ここだと目立ちすぎるのでギルド内にある個室に移動する。
仲裁していた人はギルドの職員で、個室まで案内してもらった。
色々手順をすっ飛ばしたが、まぁいいか。
個室で聞かせてもらった話しの内容。
言い争っていた理由はこうだ。
ケンカをしていた二人は冒険者で、アイシャさんとトランスヴァールとクリスタの中間辺りにある、ダンジョンに行っていた。
ダンジョンには当然魔物もいて、苦戦しながらも攻略していた。
奥に進むにつれて魔物のレベルも上がり、回復アイテムも底を見え始めた時、一際強力な魔物が現れた。
最初は討伐する方向で戦っていたらしいが、直ぐに逃げる事に切り替えたらしい。
次第に追い詰められ、地面にあった転移トラップを踏んでしまい後衛のアイシャさんが転移されてしまった。
助けに行きたくてもどうしようもなく、命からがら逃げ出して来たらしい。
街に帰って来たものの、直ぐに責任の押し付けあいになり、ケンカになった際、ギルド職員のクロウさんが仲裁に入ったと。
「と言う訳なんです。ギルドとしても直ぐに救助に向かいたいので、救助依頼を出したのですが、ダンジョンの敵も中々強く、それに伴う実力者は直ぐに確保出来なくて困っていたんです」
なるほど、この人達だけでも逃げられたのは幸運だったんだろう。
この世界には実力差がハッキリと発生する。
実力がないと大切な人も護れない。
アルフィンとシズクを見ると、俺の目線に気づいた様で頷いてくれた。
俺は一つ頷きクロウさんに言った。
「その依頼、俺達が引き受けます」
「それは、ありがたい。先程の身のこなしであなたは只者ではないと思いました。
引き受けて頂けるなら本当に助かります」
頭を下げ、お礼を言われた。
「それでは直ぐに向かってくれますか? 馬は既に用意していますので利用してください。あと、ギルドには登録されていますか?」
「いえ。まだ登録していません」
「それでは戻られるまで登録カードを作っておきましょう」
「ありがとうございます。それじゃアルフィン、シズク行こうか」
「はい。急ぎましょう」
「全力で救助させてもらいます」
三人で出口へ向かうと、呼び止められた。
「俺達も連れて行ってくれ。ダンジョンまで案内させてほしい」
先程揉めていた男達が言った。
「それでは一緒に行きましょう」
急ぎでダンジョンに向かった。
お読みいただきありがとうございます(。ゝω・)ゞ




