119話 アルフィンと
バラガン公国の夜景は本当に綺麗だ。
街灯も、建物が造り出す灯りもまた、人々の心を彩ってくれる。
その見事な夜景を少し高い丘からアルフィンと二人で見詰めていた。
「綺麗ですわね」
アルフィンは夜風で揺れる美しい金髪を手で押さえながら夜景に見惚れていた。
俺からしたら、その灯りに照らされているアルフィンの方が綺麗だと思ってしまう。
「凄いよな初めて見た時も感動したけど、何回見ても同じ気持ちを感じるんだから」
「決戦の前にこうしてタクトさんと夜景を観ることが出来て、嬉しく思います。この様な日を作ってくださりありがとうございます」
「たまにはね。思えばずっと戦って、修行しての毎日だったから。息抜きの日も大事だと思うよ」
少しの間その景色を眺めて話を楽しんでからまた街を歩く事にした。
そろそろ夕食時だけど、どうしようか。
「アルフィンは、何か食べたい物ある?」
「そうですわね。う~ん。特にこれといった物はございません」
俺も特にこれといった物もないんだよな。
「それじゃあ、もう少し見て回って気になったのあれば、そこに入ろうか」
「はい」
いつもなら、このまま隣同士で歩くだけ。
だけど今日は、勇気を出して前に進まないとな。
動き出したと同時に、そっと右手でアルフィンの左手を握る。
「あっ……」
手を握ると少し驚いた声をあげて、顔を見上げる。
その顔は、気のせいでなければ赤く染まっていると思う。
「行こうか……」
「はい……」
俺のよりも小さい手を優しく握る。
とても大切で、大好きなその手を。
アルフィンも握り返してくれた。
お互いに緊張してか、言葉数は少ないけどこうして何も話さずに、温もりを存在を感じるだけで凄く幸せを感じる。
これだけで、周りの景色が変わったかの様だ。
どこかぎこちない歩きで暫く歩いていると、いつの間にか少し人通りが少なくなった公園へと来ていた。
正直、もう余裕がない。
何か気の利いた話が出来ればいいんだけど全然駄目だ。
これは、早くしないと緊張しすぎてどうにかなってしまいそうだ。
心臓が早鐘の様に、ドクンドクンと煩わしい。
ここで、告白しようとかそれまでにこうムードを作ろうとか、色々考えてきたんだけど……もう、その作戦は取れないし……ごちゃごちゃ考えるのやめよう。
もうこれ以上アルフィンを待たせるのは悪いしシズクにも背中を押してもらった。
だから。勇気を出せ!
足を止めてアルフィンの顔を見つめる。
急に足を止めた俺をアルフィンも見つめてきた。
「アルフィン」
「はい」
「聞いて……ほしい事があるんだ」
「はい……」
「俺は……」
一度深呼吸して、自分を落ち着かせる。
緊張し過ぎて、もう色々とヤバいけど。
一歩踏み出した。
「俺は、君の事が大好きだ。いやそれ以上に愛している」
俺の一斉一代の告白は、キチンと噛まないで、滑舌良く言えたと思う。
その証拠に。
アルフィンの両目に大粒の涙が、溜まっていたから。
「……嬉しい……」
溜まっていた涙は、やがて流れ始める。
「タクトさん……嬉しい……わたくしも、タクトさんをお慕いしておりました。貴方がマギア・フロンティアに来られた日からずっと……。ずっと」
その言葉を聞けただけで、幸せが更に爆発する。
そのまま、アルフィンの体を抱き締めた。
「……良かった。やっと気持ちを伝えられた。ごめん本当はもっと早くに言いたかったんだ。……だけど、俺がヘタレで」
俺の背中に腕を回し抱き締めてくれる。
「いいえ。今こうしてお気持ちをお伝えして下さりました。わたくしは、それだけで十分過ぎるほどに幸せですわ」
勢いというか、気持ちを伝えて抱きしめて。もう十分過ぎるほどに満たされているんだけど……。
その上で更にアルフィンが欲しくなる。
抱き締める力を弱め、アルフィンのその顔を見つめた。
彼女もまた潤んだ瞳で見つめ返してくれる。
「俺は、皆を護る。ハーディーンと決着をつけて、これからもアルフィンと一緒に生きていきたい。だから……」
「はい……」
俺の意図を汲んでくれたのか、目を閉じ顔を少し上げてくれた。
「アルフィン……大好きだ」
「……んっ……」
軽く触れあうだけのキス。
ほんの数秒だけの口づけは、何ものにも代え難いものだった。
アルフィンを愛しくて、愛しくて堪らなくなる。
その気持ちがどんどんと、溢れていく。
その感情に赴くままに、何度も口づけを交わした。
この大切な存在を、俺は絶対にアルフィンを守り抜く。
絶対に皆を守り抜く。
今度こそ必ず。




