117話 模擬戦闘
「ほらほら。そんなんじゃいつまでも強くなれないぞ」
「うう! 全然当たらないの。お兄ちゃん速すぎ!」
「確かにこれは……骨が折れそうです」
「でも、絶対にやり遂げましょう。せっかくのタクトさんに、言うことを聞いてもらえる権利をみすみす手離す訳には参りません」
俺対四人の模擬戦闘をしていた。
四人の基本的な戦術は、さっきと変わらない。
アルフィンがデバフ魔法とバフ魔法をかけて、シズクが一気に駆け寄り俺の動きを止めて、その隙にナエが動物魔法を撃ち込む。今回はリューガもいるから、シズクに加勢するか、ナエと一緒にブレスを放ってくるかで、多少の違いはあるが。
今も、ナエとリューガが遠距離から遠慮無しでぶっぱなしてきた。
それを。
「はあっ!」
魔力でコーティングした両腕で全て弾き、更にハーディーンがやっていたように、拳弾を飛ばす。
魔力がたっぷりと籠められた拳弾は、もはや特級魔法以上の威力を誇る。
多少大怪我を追ってもアルフィンの治癒魔法で全快するので、俺も手加減はなしで、皆と戦っていた。
「キャアッなの!」
「くうぅっ。速くて重い!」
「ぐおおお!」
ナエとシズクとリューガに着弾する。
「直ぐに治癒魔法をかけます! 精霊の保護!」
アルフィンが三人に治癒魔法を使い瞬時に傷を治した。
ハーディーンは、強い。
この間は、ハッキリいって俺に皆を守りきる力が無くてむこうがその気なら……皆は殺されていたと思う。
だから再戦する前に、一人一人を鍛えて少しでも生き残る可能性を高めておきたい。
勿論、俺は皆を今度こそ守りきるつもりだが、ハーディーンはまだ力を隠している気がしてならない。
「俺からいくぞ今度は少し強力だから。耐えてくれ」
纏う魔力の量を増やし、魔法を幾つか造りそれを宙に浮かべる。
足に魔力を集め、爆発的に加速して接近した。
この間戦ったハーディーンと同等の速度で、一人ずつに威力を抑えた拳弾と魔法を一発ずつ当てる。
それを三人分をセットして、叩き込んだ。
「なっ!」
「うわぁ!」
「これは……!」
俺の攻撃は着弾すると爆発を起こし、三人は地面を転がっていく。
「気がつくと……皆が」
アルフィンが後方からそれを見て、呟く。
少しやりすぎだと思うけど、ハーディーンの速度もこれぐらいに速い。
これぐらいは対処出来ないと、次戦う時にも危ない。
「アルフィンごめん。皆にまた治癒魔法を頼む」
「は、はい!」
即座に魔法をかけてくれた。
ダメージを受け倒れていた三人がゆっくりと立ち上がる。
「今の速度は……ハーディーンのと同じですよね?」
シズクが質問する。
「そうだ。今日中にこの速度に対応出来るようになってもらいたい。そうでないと、ハーディーンの前では何も出来ずにやられる」
「では、何がなんでもやり遂げなくてはなるまい」
「うん。もうやられるのは嫌なの。そして、お兄ちゃんがまた犠牲になるのはもっと嫌!」
「私も同じです。敗北は一度味わえば十分です」
「今度こそ、わたくし達でタクトさんを護る為にも。乗り越えてみせます」
四人の決意が全員の戦闘力向上として現れた。
嬉しいなそれだけ俺の事を思ってくれているということ。
だったらその気持ちに俺も応えたい。
「皆辛いと思うけど、乗り越えてほしい。俺も皆が生き残れる様に、心を鬼にしてやらせてもらう。よし、いくぞ!」
それからまた。
繰り返し、繰り返し乱取りを行った。
皆の努力と、学習、そして気持ちは凄まじく、最後には俺の動きに対応してみせ更に反撃までも出来るようになった。
「よし! ここまでにしよう」
「はぁ……はぁ。も、もうヘトヘトなの」
「そう……ですね。もう力が……出ないです」
ナエとシズクが鍛練の終了を告げるとその場に座り込んだ。
「……ここまで、体を酷使するのは、初めてかもしれんな。中々にキツイものがある……」
この中で一番体力があるリューガも、立ったままその場を動けずにいる。
「……もう少し待っていてください。体力が回復しましたら、直ぐに回復致しますので……」
サポート魔法と、治癒魔法を連発していてアルフィンも、流石に限界みたいだ。
間違いなく今迄で、一番魔法を使っていた反動も大きいのだろう。
俺は皆が動けない間、夕食の準備をすることにした。
「今日は俺が作るから、皆は休んでいてくれ」
まだ息が荒い皆に一声かけて取り掛かった。
実はこの世界に来てから、シズク達に教えてもらったりして俺も料理の腕が上がっていたりする。
流石にいつも作ってくれてる二人には敵わないけど、それでもそこそこの料理をそこそこのレベルで調理出来るようにはなっていた。
食材は収納魔法で出して、シチューとスタミナが出る肉料理を作った。
デザートには体の疲れも取れるマギア・フロンティア特産のフルーツもカットして出した。
簡易的にテーブルを作成し、そこに料理を並べて夕食の開始。
俺が作っている間にアルフィンが治癒魔法をかけ、皆も元気を取り戻してくれていて着席も完了している。
その夕食の席で、最初に皆に謝った。
「皆、ごめんな。鍛練とはいえ、皆を攻撃するのはやっぱり嫌なもんだね。こんなに消耗までさせてしまったし」
「いいえ。タクトさんがわたくし達の事を考え敢えて厳しく鍛えて頂いていることは、分かっています。ですから、気にしないでくださいな」
「そうです。お陰で私達は、更に力を得ることが出来ました。ありがとうございます」
「優しいお兄ちゃんの方が好きだけど、怖いお兄ちゃんも嫌いじゃないの」
そう言ってくれるのか、ありがたいな。
でも俺は皆を失いたくない。
ハーディーンに勝てたとしても、皆がいなければ何も意味がないんだ。
「ありがとう。でも皆が頑張ってくれたお陰で何の憂いもなくハーディーンに挑めるよ。今度こそ勝とう」
全員で気合いを入れ直した。
お読み頂きありがとうございました
(*- -)(*_ _)ペコリ




