115話 試練の遺跡再び
「リューガ。次は、中央大陸に向かって欲しい」
俺の声に答える代わりに、大きな体を望んだ方角へと、向けてくれた。
トランスヴァールを離れた俺達は、再び上空を移動していた。
「中央大陸に行くということは……試練の遺跡ですか?」
察しの良いシズクが目的地に気付く。
「正解。あの場所の奥にいた魔物。今なら倒せると思うし、決戦に向けて皆のレベリングをしたい」
「奥の魔物ってなに? 何の話し?」
「ナエちゃんと出会う前の話しですから知らないと思います。
中央大陸西部にある試練の遺跡の奥に、もの凄く強大な力を持つ魔物がいたのです。当時のわたくし達では敵わない程の」
あの時は中央大陸に来て修行に明け暮れていた日々だったな。
たまたま見つけた遺跡に特級魔物が現れて、最奥にはヤバい魔物がいて勝てないと引き返したんだよな。
「それは、怖そうなの。あの時のお兄ちゃん達でも勝てないなんて」
「あの時でも、ゲラルドを倒せる程のレベルはあったからな。でも、あの遺跡は元々ユーリ達のパーティーが鍛える為に造られた物だと云うし、俺達もそれにあやかろう。最低でも一日は籠りたいと思っている」
「あの場所に一日以上ですか。……それは中々に厳しいですわね」
当時の状況を思い出してか、アルフィンは嫌そうな顔をする。
「ですが、鍛えるにはもってこいの場所です」
「あたしは初めてだから、どんな場所か、少し楽しみなの」
「ワレは、どうすればいいのだ?」
リューガが入るには、遺跡は狭いかな。
「たぶん中に入るのは厳しいと思うから。後になっちゃうけど俺と模擬戦闘しよう。それでもかなり鍛えられると思う」
「頼む。ワレも力を付けたい」
皆にはああ言ったけど、あの奥の魔物はドレアムよりも弱いぐらいだと思う。
色々強化してもらった俺だと修行にならないから、主に三人に鍛えてもらうのが目的。
ドレアム達四天王は倒したけど、安心出来ない。
今度の戦場は、相手の本丸だから何があっても可笑しくはない。
だからこそ、出来ることはキチンとやっておきたかった。
俺の今回の役割は、前の時みたいに皆の戦いを見守り、危なくなったら助けることかな。
リューガに遺跡の場所を案内しながら、中央大陸西部の樹海の上を移動した。
「ここだな。相変わらずこの場所だけ樹木が生えていない」
上からでも分かる。
やっぱりこの場所は、不思議な雰囲気を持つ。
「では、ここに降りるぞ」
上空を少し旋回した後、遺跡前に降り立った。
「不思議な場所だね。魔物も近くにいないし、凄い静かなの」
ナエがキョロキョロと、周りを見渡しながら感じた事を言う。
「この遺跡も、ユーリが造ったのか?」
「400年前にね」
「凄いものだな。この様な物まで造れたとは。色々と器用な男だったが、大したものだ」
リューガも遺跡を見て、感嘆の声をあげる。
「中に入るには、俺の称号が必要だったな。えっと、ああこれだ」
遺跡前に置かれた石碑の文字を読み上げた。
「ここは試練の遺跡。魔王の称号持つ者、その一行のみ中に入るのを認める。だから、とこれで」
石碑に手を翳すと、ガゴゴゴと音を鳴らしながら重厚な扉が開いた。
「それじゃあ、皆入ろう。リューガは……ごめんまた待ってて」
「気にするな。気をつけてな」
中に足を踏み入れていく。
「魔力がいっぱいなの。壁や床にもいっぱいあるよ」
「流石、修行用に造られただけあって長時間戦える仕様になってるんだ。魔物も倒しても少ししたら復活するし」
この遺跡は初めてのナエに説明した。
遺跡の入口から途中までの魔物達は手こずることはなく、たんたんとあしらいながら進んだ先で。
前回引き返した地点に到着した。
「ここの先の扉の手前で、引き返したんだ」
「……いるの。怖い魔物が……」
「以前よりも成長したわたくし達なら、脅威は和らぐと思いましたが……」
「はい……より強さの尺が測れましたね。やはりこの奥の魔物は、強い」
まだ魔物は扉の先にいて姿を見ていないのに、その魔力反応だけでハッキリとヤバい魔物だというのが伝わってくる。
「それじゃあ。皆、強敵に挑もうか」
「ええ。参りましょう」
「己の向上の為に」
「強くなるの!」
扉を開け中に入る。
この遺跡の特徴として魔物が現れる所にはクリスタルが生えている。
魔物の強さが上がれば、上がるほどそのクリスタルの量も増える仕組みになっていた。
そして、この魔物がいるエリアのクリスタルの量は。
この手前の魔物がいた所の軽く数十倍はあった。
そのクリスタルの山を見た皆は、気合いを入れる。
「これだけの……量のクリスタルを……。それだけの相手だということですわね。出し惜しみは致しません! 精霊の集合!」
アルフィン凄いな。
デバフ魔法と、バフ魔法のオンパレードだ。それを何層にも張り巡らせた。
「強敵なのは、分かっていました。私も全力で挑みます! はあぁっ!」
シズクは破魔を解放して、新しくなった聖剣を抜刀する。
「この魔物を倒して乗り越えないと、お父さん達を守れる力を手に入れられないの!」
ナエはおにゅーの杖を小さな手で握り締め、収束スキルを全開にして構えた。
一応俺も魔力を纏っておく。
何かあれば助けられる様に。
「さあ。修行を始めよう」
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(*- -)(*_ _)ペコリ




