110話 決戦へ向けて
よろしくお願いします!
「無事生きて帰ってきたか。そなたが帰ってこられて嬉しく思うぞ」
虹色の立派な鱗を付けた老竜が、俺の帰還を喜んでくれる。
仮死状態から甦った後、俺達は、竜王に会いに見透しの塔へと来ていた。
「竜王にもお力を貸して頂いたと、アルフィンから聞きました。ありがとうございます。俺がこうしてここに居られるのは、皆と、ユーリが助けてくれたお陰です」
「そなたの力になるのは当たり前の事だ。
ユーリは、本当に旅立ったのだな……。そなたからはもう、ユーリの魂の反応がしない」
竜王はユグドラシルの方角を向くと、旧友との別れを惜しむかのように一つ小さな咆哮を上げた。
「ユーリは、最後までこの世界の平和の事を考えていました。
マギア・フロンティアを守るようにと言い残し、自身の全ての力まで託してくれました」
「確かに。そなたの力は、二人の力が合わさり、様々な点で大幅に強化されているな。もはや、ハーディーンと同等いや……それ以上かもしれん」
「今度こそ、この力で決着をつけます。それで、アルフィンからも聞いてると思いますが、最終決戦に向けて、五日後に集結するとの具体的な案も出ているようです」
「聞いている。竜王国も全勢力を出して、共に戦わせてもらう。他にも出来ることがあれば言ってくれ」
「ありがとうございます。タイミングとかは、アーロンさんから連絡いくと思います。それと、ここから一気に移動出来るように、ワープの石盤を設置していきますので移動する際は、それを使ってください」
「うむ。頼む」
細かい部分の擦り合わせして見透しの塔を出た後、空を飛びながら次の目的地について話していた。
「これから忙しくなるな。決戦まで、世界を飛び回って準備を進めていかないと。やらなきゃいけないことも結構あるし」
「そうですわね。あと6日間猶予があるとはいえ、準備を進めているとあっという間に過ぎてしまいます」
「それで、どう行動しますか?」
「それなんだけど、専用装備を直したいからエリス王国に行こうと思ってる。皆のは、完全に破壊されたし、俺のもだいぶボロボロになってしまった。
ただ、直すにしても時間がかかる可能性がある。
最低でも、暗黒大陸に乗り込むまでには、修理を終わらせたい所だけどな」
俺の装備を見ると、亀裂が入りもう使える状態ではなかった。
ハーディーンと戦った時に装備にも無理させてしまったから直したいんだけど。
修理をするとして、問題が一つあるんだよなぁ。
「それなら、クララお姉ちゃんに会いにいくの? もう、元気出してくれてれば嬉しいけど」
ナエがいうように、クララさんがまた鍛冶職人として立ち直ってくれてればいいんだが。
「そうだな……。気持ちの整理がついてくれてればいいけどな」
大切な人を亡くした哀しみは、そう簡単に癒えない。
だから不安もあるけど、でも前に会って帰るときには前を向きだしていた。
クララさんは、芯が強い人だ。
大丈夫だと信じよう。
「それでは、エリス王国ですね」
「ああ。その前にリューガと合流してだな。……入口にいるみたいだ」
大きな大樹の間を飛び交い、街の入口に向かうと俺達の仲間のリューガが待っていた。
「タクト。もう大丈夫そうだな。無事にまた会えて嬉しく思う」
「リューガもここまで俺を運んでくれてありがとう」
「ワレもそなたの仲間だ。仲間を救おうとするのは当たり前の事。それに、そなたには恩義がある」
信頼を込めた眼差しで、言ってくれた。
「ありがとう。それで、早速なんだけどエリス王国に行きたい。そこまで、頼むよ」
「了解した。乗ってくれ」
全員でリューガの背中に乗り込み、エリス王国へと向かう。
竜王国にも、ワープの石盤を設置しておいたからこれで後は暗黒大陸に設置すればいい。
突撃をかける前に、どこかで一度暗黒大陸に行かないとな。
そうだ。エリス王国に向かう道中で、アーロンさんに連絡するか。
皆も聞こえるように設定して念話カードを起動した。
《アーロンさん。タクトです。聞こえますか?》
《タクトか? おお良かった! 無事だったか! 良かった良かった》
アーロンさんにしては珍しく、テンションが高い気がする。
それだけ俺の無事を喜んでくれているんだろうか。
それなら嬉しいな。
《ご心配お掛けしました。皆の支えのお陰で、こうして帰ってこれました》
《本当に無事で良かった。それで、タクトの事だから元気な声を聞かせる為に、連絡したわけではないのだろう?》
流石アーロン皇帝。
鋭い。
《アルフィンから、作戦の概要は少し聞いたんですが、詳細を知りたくて連絡しました》
《そうか。タクトが倒れていた間、王達と連絡を取った。最終決戦の隊を編成し六日後にルーデウスに集まる事。それまでに各々出来ることを最大限やりきる事で、見解は一致した。タクトが各王国に置いてきた念話カードは、大活躍だったぞ》
《それは、良かったです。その為に造った物ですから》
せっかく造ったのに、使われないのは寂しい。
この世界は、携帯とかもないからなぁ。
《……それで、念話といえば。タクトがハーディーンと戦い倒れたことを聞いたアリサ女王が、今すぐ駆けつけると言って聞かなかったぞ?
暗黒大陸に行き、ハーディーンをぶっ殺すとも言っていた。
随分と想いを寄せられているじゃないか》
《アハハ……》
あの人なら言いそうだ……。
「あの方なら……本当に来かねません……。
そして、タクトさんに会うとアプローチもしてくる筈。……そろそろ決着を……」
俺の横にいるアルフィンが、念話を聞いてぼそぼそと言っている。
《一応止めておいたから行動しないとは思うが。ものすごく心配している事だけは確かだから、連絡してあげて欲しい》
《分かりました。これから専用装備を直しに、エリス王国にいくのでアリサ女王に挨拶してきます》
《激しい戦いだったと、聞いた。詳しい話しも会った時に聞かせてくれ。また会えるのを楽しみにしているぞ》
《ありがとうございます。では、また》
念話カードをオフにすると。
「アリサ女王と、決着をつける時が来ましたか」
「ええ。絶対に負けられませんわ」
アルフィンと、シズクが臨戦態勢に入っていた。
「あの……君達。アリサ女王に会いにいくのは、決戦に向けて話しをしにいくんだよ? 分かってる?」
「やれやれなの。また始まったの」
「やはり、タクトが戻ると賑やかだな」
エリス王国で、もう一つの戦いが始まりそうな予感がした。
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