104話 ユーリ・ライゼ・トランスヴァール
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ユーリside
「オラァッ! くらえ! クソ野郎!」
「トランスヴァーール!!」
俺の拳とクソ野郎の拳が激しくぶつかり合い、その衝撃波が周囲をかけぬけていく。
どついて、どつかれてと目の前の因縁の相手との、遥か昔に殺し合った相手との再戦は、激しさをどんどんと増していった。
「はああああああああ!」
「おおおおおおおおお!」
至近距離からそれぞれが得意とする魔法を放つと、膨大なエネルギー同士は、爆発を起こし二人とも吹き飛ばした。
「チッ! てめぇも、ドレアムと同じく400年前より強くなってんじゃねぇか」
「そなたに封印されていた間、余が何もしなかった筈がなかろう。この400年間、屈辱と憎しみと怒りを力に変え、蓄えてきたのだ。この時の為にな!」
ドゴンッドゴンッドゴンッと、ぶつかり合う度に派手な音が鳴り響く。
正直タクトのこの体はボロボロだが魔力核以外はまだ動く、それに魔力は俺の今まで溜めてきたのを使ってこのクソ野郎と戦えていた。
だから、俺の思い通りに体は動くんだが、それでもコイツの方が色々な点で有利。
「そなたも、今日まで生き永らえていたとはな! 命根性の汚い奴め!」
「お前が、言うんじゃねぇよ! 何回殺しても、生き返るお前が! 汚ねぇ力使いやがって!」
尚も、拳と蹴りと魔法がぶつかり合う。
しかし、今の俺の力ではコイツに勝てるか微妙だ。
専用装備も、ヒビが入っていつ壊れるかわかんねぇし。
俺が不利なのは、否めない。
何か、もう一枚手札があれば。
「神は、永遠なのだ。たかが、人間が神を殺すなど許される筈がなかろうが! 矮小でどこまでも愚かな存在の人間が!」
「神だから、何をしても言い訳じゃねぇ! この世界の奴等は、お前の為に生きてるんじゃねぇんだよ! それぞれに、一生懸命生きてんだ! お前だって、知ってるんじゃねぇのか!」
「だからこそ。余は、もうとっくに見限った。人間は変わらない。いつまでも、そのままだ。故に! 神が滅びを与え――――……なっ……あがぁぁぁぁ!」
言いかけてる途中でガクンッと、ハーディーンの膝が崩れ、苦しみだした。
「…………何だ? 余の体が……いうことを聞かぬ。ぐぅあぁぁ! ……体の細胞が、傷付いていく……何だ……これは……何が起きている」
このタイミングで苦しみだしたと、いうことは。
タクト。何か仕込んでたな。
おそらく、時間差でダメージに変わる魔力を流し込んでいたか。
「タクトの攻撃。ちゃんと効いてたんじゃねぇか。お前が、見下してたアイツの攻撃には、ちゃんと意味があった」
「あの人間……何をした……。このままでは、余の体が……」
タクトは、コイツの内部にダメージを与える攻撃をしていた。
ただ、コイツの魔力が多過ぎて直ぐには効果は出なかったみたいだが。
その魔力も少なくなってきた事で、効果が現れ始めた。
アイツも、アイツなりにハーディーンの対抗策を考えていたんだな。
だが、これで人類の希望は繋がった。
タクトが与えたダメージと、コイツがまだ完全に力を取り戻していない今なら、時間稼ぎぐらいは出来る。
タクトが必死に作ったこのチャンス。
俺がしっかり繋げてやらねぇとな。
「……マズイ。このまま時間が経過すれば、また復活するまで時間がかかる。早急に治さねば――」
「残念だが。お前はここで、一度退場だ。お前は、まだここに来ちゃいけねぇ! 失せろ!」
神級魔法を放つのに必要な魔力を練り上げて、ハーディーンの胴体に手を添える。
「それじゃあな。もう。お前とは合うことはない。後はタクトがお前を消し去ってくれるだろう」
「……トランスヴァール! 最期まで……邪魔立てしおって!!」
正に最上級の悪党がするような、怨み辛みがたっぷりの眼差しで睨みつけてくるのを無視して、俺の最強の魔法をクソ野郎にプレゼントした。
「ワールド・エイス・ジャッジメント!!」
光の波動を放ち、ハーディーンの体を消滅させていく。
「あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! おのれぇ!! トランスヴァーーーーーーーーーーーーール!!」
体が消え去る最後まで睨みつけてきたが、最後は魔力だけになって暗黒大陸へと飛んでいった。
とりあえずこれで時間は稼げたか。
後は。
タクトを想い泣いている、姫さんに伝えてやらねぇとな。
「うっう! ……タクトさん……タクトさん……」
「姫さん。辛いだろうが、俺の話を聞け。タクトに関わる話だ」
「……ひっく……タクトさん……に?……」
泣きじゃくる姫さんに、目線を合わせる様に地面に座った。
「そうだ。さっきは、ああ言ったが。タクトは、まだ完全に死んでいない。人間は、肉体と精神の両方で成り立っている。肉体は核がかなり損傷しているが、それは姫さんの治癒で治せばいい。問題は……」
そこで一旦言葉を区切った。
姫さんがちゃんと聞いているかの確認だったが、しっかり俺の目を見てくる。
続きを話しても大丈夫だな。
「問題は、精神の方だ。クソ野郎との戦いで、タクトの精神を構成している芯がボロボロになった。
タクトは意識を手放す直前まで、姫さんやシズク達の事を護る事だけを考えて戦い、その結果無理をし過ぎたんだ。タクトが目を覚ますには、その精神も癒さないといけない」
「……ですが、精神を回復するなんて、どうすれば……」
「俺の魂を構成する力をタクトに渡す。俺の魔力と、その力が合わされば命を救える筈だ」
「……それでは、ユーリ陛下が……」
「俺の事はいい。本来なら400年前に終わっている人間だからな」
「…………」
「そんな顔をするな。お前達の力になれるなら、本望だ。
それに……ラクスも長いこと待たせちまってるからな。そろそろ逝かねぇと早く来いと、怒られちまう。
だから、気にしなくていい。
俺はこれから、アイツを起こしてくる。おそらくアイツは、今あそこにいる」
ユグドラシルを見ると、ずっと点滅したままになっている。
女神……タクトを呼んだんだな。
「あそことは?」
「まぁそれはいい。それで、これからやるべき事を話す。
いいか? あのクソ野郎は、ダメージを受ければ受けるほど、復活するまでそれ相応の時間がかかる。あそこまでのダメージを受けたなら、復活するまで一週間の猶予はある筈だ。
それまでタクトの代わりに、王達と連携して決戦の準備を進めろ。色々忙しくなると思うが、姫さんはアイツが帰ってくるまでにやれる事をしておけ」
「分かりました。タクトさんのお帰りを信じて全力で、取り組みます」
涙を拭いて力強く返事した。
もう、大丈夫だな。
アイツは本当に愛されてる。
姫さんを通して、ラクスの事を思いだした。
コイツらには、幸せになってもらわねぇと。
「アイツは必ず連れて帰るから。それまでの間、頼むぞ」
「はい! タクトさんをどうかお願い致します」
「それから、再興まで大変だとは思うが、トランスヴァールの事も頼む。タクトが帰って来たら、婿に迎えいれるなりして、アイツと、うまくやっていってもいいしな」
「ユーリ陛下……」
「じゃあな」
体から、魂だけになって抜け出した。
倒れたタクトの体を姫さんが抱き留める。
タクトを迎えにユグドラシルへ飛ぶ前に、もう一度空から世界を見渡し、別れを告げた。
じゃあな。マギア・フロンティア。
どうか、平和な世界にならんことを。
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