魔女は命を救う
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気が付くとアラン様を抱きしめていて、なぜか抱きしめ返されていた。
私ったら、なんでこんなことしてしまったのかしら。
急に恥ずかしさが増してしまい、離れようとすると益々強く抱きしめられる。
「あの……もしかして、まだ具合が悪いんですか?」
「いや、ミアのおかげで絶好調だ」
毒を煽るなんて……せめて飲んだふりをして、服の中に仕込んだ袋に流し込むとか方法はあると思うのに。
「今度毒が入っていても、飲んだりしないでほかの方法で乗り切ってくださいね」
そんな当たり前のことを言ったのに、なぜかアラン様は瞠目して動かなくなった。
「……その発想はなかったな」
そうつぶやくアラン様は、命が惜しくないのだろうか。
そういえば、初めて会った時もたぶん死にそうな傷を負っていた。
「私を一人にしたら嫌ですよ……」
「そうか……。ミアを守る人間がいなくなるのは困るな」
なんだか、アラン様の考え方は随分ずれている気がする。
それでも、アラン様が無茶なことをしない理由になれるのだとしたら、これ以上に嬉しいことはない。
聖女の力でも、死んでしまった人間を生き返らせることはできない。だから、アラン様には自分の命をちゃんと大切にしてほしい。
それに、アラン様は国を率いる立場の人間で、私なんかの命の重さとは比べ物にならない。
「そういえばミア……その、砂時計について聞いてもいいか?」
遠慮がちにアラン様が声をかけてくる。むしろここまで聞かれなかったことが不思議なくらいだ。
「……その前に、アラン様は魔女という存在をどう思われますか?」
「────強い力を持つ存在と認識している」
想像通りアラン様は、自分で見たものを信じるタイプなのだろう。世の人たちが持っている魔女への悪感情が返答からは感じられなくて私はほっと息をつく。
「この砂時計は、母の友人の魔女から貰ったものです」
「────っ。支払った対価は」
急にアラン様が私の手を掴んできた。たしかに魔女との取引には正当な対価が必要になる。手にするアイテムや魔法の力が大きければ大きいだけその対価も大きくなる。
とても公平だと思うけれど……。
「今は亡き母が、ドラゴン一頭を渡して払ってくれていました」
「ドラゴン一頭か……なかなかの対価だな」
「そうですね。それから普段はこれ、砂が入っていないんですよ。何が起こるかの説明もなかったし、どうしてアラン様が現れる時だけ砂が現れるのかもわからないんですけど……」
アラン様が砂時計を手にすると、ふんわりと砂時計が光ったように見えた。
「──魔女殿に感謝しないといけないな」
「え?」
微笑んだアラン様が、私の瞳をのぞき込む。
「俺の命の恩人だ。それにミアと出会わせてくれた」
たしかに、この砂時計がなければアラン様も、そして私も命を落としていて出会うことはなかったに違いない。
「いつか魔女殿と会う栄誉を俺も受けられるといいな」
そう言って無邪気に笑うアラン様は、少し子どもみたいで可愛らしかった。
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