表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】異世界でお兄様に殺されないよう、精一杯がんばった結果【コミカライズ】  作者: 倉本縞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/100

89.三人の外道と聖女

とりあえずゼーゼマン侯爵の応急手当をせねば、と足を踏み出したところ、


「マリア!」


大声で名前を呼ばれ、振り返ると、お兄様が慌てたように中庭に走り込んでくるところだった。


「マリア、無事か!? 何が……」

言いかけて、お兄様は磔状態のゼーゼマン侯爵に気づいた。


「……この、外道が」

低く言い捨てるお兄様に、怒りのオーラが満ちる。


「あ、いえ、お兄様、指輪のおかげで、私はどこも怪我してませんので! まったくの無事、健康体ですので!」

これ以上ゼーゼマン侯爵に何かされたら、冗談ではなく死んでしまう。

私は必死にお兄様にしがみついて言った。


「お兄様、落ち着いて、ね、ねっ! あ、ほら、そう言えばアメデオ! アメデオがいますよ、ほら!」

お兄様の意識をそらそうと、アメデオの名前を出すと、


「……きさま、ゼーゼマン家の手先となり、マリアに何を」

「あああお兄様! アメデオは何もしてません、何も!」

失敗した。

お兄様の怒りが、今度はアメデオに向かってしまった。


「アメデオには謝ってもらいましたし! なんだか事情があるみたいですし!」

「それが何だ」

お兄様の背景に、渦を巻く黒雲と稲光が見える。


「こやつがゼーゼマン侯爵の手引きをしたのであろう。……わたしをおまえから引き離し、おまえを一人にしてゼーゼマン侯爵に襲わせた」

「あのでも、結果的に怪我したのは侯爵のほうで……」

お兄様に睨みつけられ、私は口を閉じた。


「おまえはいつもそうだ。際限なく人を庇い、許そうとする。……が、今回ばかりはそうはいかぬ」

剣の柄に手をかけるお兄様に、私は思わず叫んだ。


「こっ、ここで人を殺したりしたら、結婚式が挙げられません!」


ピタッとお兄様の手が止まった。


「……なに?」

「いや、だって、ここが殺人現場になっちゃったら、警備兵だの何だのが調査に乗りだしますよ! 週末挙式なんてぜったい無理です! そ、それに神殿側もなんか色々言いだしそう! お清めしなければ、とか言って、結婚式がものすごく延期されそうな気がします!」

「………………………」

お兄様は顔をしかめ、実に不本意そうに剣から手を離した。


た、助かった! お兄様が結婚式を急いでて、ほんとーに良かった!


私が大きく息を吐くと、お兄様が私の腰に腕を回し、抱き寄せた。

「本当に怪我はないのか?」

「はい、まったく!」

「そうか、良かった……」

お兄様はきつく私を抱きしめ、私の顔に頬を擦り寄せた。


「……防御魔術が使われたとわかった時は、生きた心地がしなかった。おまえに怪我がなくて、本当に良かった……」

「……あのー、お兄様。あれって防御魔術なんですか?」

顔中にキスの雨を降らせるお兄様をかわしつつ、私は先ほどの一方的な惨劇を思い出していた。

氷の壁が現れた時は、おお!って感じだったけど、その後が……。


「なんか、壁が槍に変化して、侯爵に襲いかかってたんですけど。しかも、闇の魔術で逃げられないよう、拘束してましたし」

「……まあ、多少は攻撃魔術も組み込んである。防戦一方では、不利だからな」

「……………………」


あれが多少ってレベルなんでしょうか……。私としては、逃げる間の時間稼ぎをしてくれれば、それで十分なんですが。


ともあれ、ゼーゼマン侯爵が即死でなくて、本当に良かった。

私はお兄様の腕からなんとか抜け出し、ゼーゼマン侯爵が磔状態になっている木の前に立った。


ゼーゼマン侯爵は、意識が朦朧としているようで、正面に立つ私も認識できない様子だった。

とりあえず止血しなければ、と私はゼーゼマン侯爵に治癒の魔術をかけた。


青い光が、ゼーゼマン侯爵の槍で貫かれた部分に集まるが、パチッと小さな音をたてて、半分くらい弾かれてしまう。


あー、闇の魔術ってこういうところが面倒なんだよなあ。

禁術じゃなくても、他の魔術と組み合わせると治癒を弾いたりするから、ほんと厄介。


しかし、私には祝福の光がある! と、はりきって祈りの形に手を組むと、

「マリア、まさか、こやつを祝福するつもりか?」

お兄様が不服そうに言った。


「この外道は、何の罪もないおまえに、攻撃魔術をかけたのだぞ」

「いや、それは分かってますが、でもこのままじゃ、本当に死んじゃいますから」

お兄様は不満そうな顔で黙り込んだ。

なんか、小さな声で「死ねば全て丸く収まるではないか」って言ってるの、聞こえてるんですけど。

アメデオまで、「えー、治癒しちゃうんですか?」と残念そうにしている。


おまえら……。


どうしてそう、殺してしまってハイ問題解決! みたいな殺伐とした手段を取りたがるんだ。

やっぱり闇属性だから? 闇属性だからなのか!?

私はため息をつき、とにかくゼーゼマン侯爵の応急手当に集中することにしたのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ