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【書籍化】異世界でお兄様に殺されないよう、精一杯がんばった結果【コミカライズ】  作者: 倉本縞


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86.モテ体質(ただし闇属性に限る)

本日、お兄様が王都に正式に帰還する。

と同時に、神殿で挙式の打ち合わせも行われる予定だ。


もちろん私も同行するのだが、その際、お兄様にゼーゼマン侯爵の件について、相談すべきだろうか。

通常なら一も二もなく相談という名の丸投げをするところだが、今回は、情報源が王子様だからなあ……。


午後を回ったところで、お兄様が屋敷に戻ってきた。

神殿との約束の時間まで余裕があるということで、いったん、お兄様の部屋でお茶でもという話になったのだが。


お兄様、目の下のクマがひどい。

ソファで隣に座ると、お兄様がすかさず私の腰に腕を回し、抱きしめてきた。

大人しくその腕の中におさまり、私はお兄様に聞いた。

「お兄様、お忙しいんですか? ちゃんと睡眠とってます?」

「フォールの後始末に手間取ってな。……アメデオが失踪し、行方がつかめん」

「えっ!?」

私は驚いてお兄様を見た。


「え、それって……、あの、お兄様に禁術を使用したことで、なんかキツい罰とか科されたんですか? それで逃げようとしたとか?」

クララも私に禁術を使用したことで、処刑一択、とか言われてたし、もしかしてアメデオも。

「いや」

お兄様が首を振った。


「アメデオがわたしに闇の種子を埋め込んだことを知っているのは、わたしとおまえだけだ。ゆえに、あれを罰しようという話はどこからも出ていない」

私はお兄様をまじまじと見た。


「……ラス兄様、アメデオを罰しようというお考えはないのですね」

この間、アメデオについて話した時も思ったけど、お兄様はアメデオの処罰には気が進まないようだ。やっぱり一緒に働いてると、情が移ったりするんだろうか。


しかし、お兄様は淡々と言った。

「あれは役に立つ。魔力値も高く、魔道具作りにも秀でている。失うには惜しい」

ああー、そういうこと……。

お兄様、清々しいほど仕事第一主義ですね……。


「でも、今回の失踪や、お兄様に禁術を使用した原因がわからなければ、またいつこんなことが起きるか、わかりませんよ」

「……まあ、大体の見当はついている。今回わたしが王都に戻ったことで、何らかの動きがあるだろう。式までに、そうした雑事は片づけておきたいとは思っているが」

雑事って……。

自分に禁術を使用した部下が失踪したというのに、微塵も動揺していないところがすごい。


「……お兄様は、お強いのですね」

私はしみじみ言った。

「どうした、急に」

重用していた部下に裏切られ失踪されたというのに、まったく動じないお兄様の強靭メンタルたるや。

私なんて、お兄様SM疑惑だけで、夜も眠れないほど悩んでいたというのに。


「だって、私だったら耐えられません。例えば、もしリリアが私に禁術を使用して、何も言わずに失踪してしまったりしたら、私、ぜったい立ち直れませんよ」

「おまえの学友は、おまえを裏切りはせぬだろう」

「もちろんそうですけど、そういう事じゃなくて」


お兄様は小さく笑った。

「わかっている。……わたしが言いたいのは、おまえとわたしは違うということだ。もしおまえが相手なら、アメデオとて黙って消えたりはせぬだろう。わたしならさして気にもとめぬとわかっているが、おまえはきっと気に病む。そうわかっているからな」

お兄様は、慰めるように私の頭を優しく撫でた。


「アメデオは、珍しくおまえを気に入っているようだった。通常、塔の魔術師は、研究対象かその成果にしか興味を抱かぬものだが」

「私、間違いなく研究対象にされてましたよ」

会うたび、血液唾液および尿を要求されてたしね……。


「それもあるだろうが……、おまえは何故か、変わった輩に気に入られやすいようだと思ってな」

えええ……。なにそれ、変質者に好かれやすいタイプってこと?

まったく嬉しくないんですが。


「ロッテンマイヤー……、クララもそうだっただろう。アメデオも同じだ。およそ、他人に興味など持たぬ輩が、ことごとくおまえには心を開く。聖女ゆえの特性かもしれぬが……」

いやいやいや、それは違います。

ていうか、なんとなく気づいてしまった。


他人にはまるで興味を示さないのに、私には心を開く変質者って、それ、まさしくお兄様のことでは。

そして三人とも、闇属性の魔力持ち……。


そういえば、アメデオが言ってたっけ。

私の近くにいると、なんか居心地がいいって。


つまり私は、闇属性限定のモテ体質ってことなんだろうか。

嬉しいような、ちょっとコワいような、複雑な気分だ。


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