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【書籍化】異世界でお兄様に殺されないよう、精一杯がんばった結果【コミカライズ】  作者: 倉本縞


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71.衝撃の告白

「さあ急いで、ロッテンマイヤー様!」

私は背負ってきた袋から、ぽいぽいと地味な色目のワンピース、フード付きのローブや靴などを寝台の上に放り投げた。


「これを着て、この塔から出るんです。さっ、立って!」

私の差し出した手を、ロッテンマイヤーさんはまじまじと見た。


「……どうして? もうわたくしには、利用できるものなんて何もないわよ? どうせ遅かれ早かれわたくしは死」

「死んだりしません!」

私は素早くさえぎった。


「ロッテンマイヤー様は、死んだりしません。ここを脱出して、神殿経由で隣国へ逃げるんです。この鞄に、宝石とかお金とか、少しですけど入れておきましたから」

私も貴族令嬢であるから、少しは宝飾品も持ってるし、フォール地方で働いたお金もある。これだけあれば、隣国で小さな家を借りて一、二か月、職探しをするくらいの間はもつはずだ。


あぜんとして私を見上げるロッテンマイヤーさんに、私は急かすように言った。


「早く! 見張りの交代時間まで、そんなに間がないんです!」

「……どうしてわたくしを助けようとするの? あなたが聖女だから?」

「違いますよ!」

私は少しイライラして言った。


ここで逃げなければ命の危機だというのに、ロッテンマイヤーさん、悠長すぎる!


「聖女とかそういうのは関係ないです! ロッテンマイヤーさん、頭に来ないんですか!? よってたかって利用されて、あげくポイ捨てされたんですよ! 見返してやるって、そう思わないんですか!?」

「え? ……え?」

ロッテンマイヤーさんは目を白黒させて私を見た。


「聖女だからとか、そんなふざけた理由でロッテンマイヤーさんを助けるわけじゃありません! 私は、ロッテンマイヤーさんを取り巻く状況すべてに、腹が立っているだけです! 理由なんて、しいて言うなら、ロッテンマイヤーさんが美人で、ステキな名前だからです!」

はあ!?とロッテンマイヤーさんが間抜けな声を上げたが、もう待ってはいられない。


私は床に膝をつき、強引にロッテンマイヤーさんから室内履きをはぎ取り、靴を履かせた。良かった、サイズ合ってた。


「さあ立って! でないと無理やり服を脱がせますよ!」

聞きようによっては18禁なセリフだが、誓ってやましい意図はないので、お許し下さい、世界名作劇場(全年齢対象)!


「わたくし……、わたくしは……」

ロッテンマイヤーさんは、戸惑ったように私を見上げた。

そして、小さな声で言った。


「わたくしは……、本当は、ロッテンマイヤーではないの……」

「え?」

「ごめんなさい……。せっかく褒めてくれたのに、ロッテンマイヤーは、わたくしの本当の名前じゃないの……」


ああー、やっぱそうか……。

私は少し残念な気持ちになった。


ロッテンマイヤーって、どう考えても南方の名前だもんね。

隣国の王族の名前じゃないよね、そりゃそうだよね……。


私は、泣きそうな表情のロッテンマイヤーさん(偽名)の肩を軽くたたいた。

「いや、いいんですよ、名前は違っても、ロッテンマイヤーさんが美人なのに変わりはないんだし」

「わたくし……」

ロッテンマイヤーさん(偽名)が、私を見上げて言った。



「わたくしの本当の名前は、クララっていうの……」


衝撃の告白に、私はグフォッと吹き出し、床に倒れ込んだ。


マジ!?

ちょっと、ウソでしょ、クララって!


「マリア様!? マリア様、大丈夫!?」

お腹を押さえてうずくまる私に、ロッテンマイヤー改めクララが慌てたように声をかけた。


「どこか痛むの!? 誰か……」

「……い、いえ、だいじょうぶ……、です」

ふうーと深呼吸し、私は上体を起こした。


「ク……、クララ、様……」

私はよろよろと立ち上がり、クララに手を差し伸べた。


クララは素直に私の手をとり、立ち上がった。


「……クララが立った!」


我慢できずに言ってしまった。

呼び捨てにしてごめんなさい、でもどうしても、どうしても言いたかったんです……。


こぶしを握り、感動に打ち震える私を、クララが不思議そうな目で見ていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] もーーーー、、面白過ぎて倒れ込んじゃったじゃないですかぁー。゜(゜^ω^゜)゜。
[一言] 「読書ダイエット -笑いのツボは下っ腹を攻撃する-」という妄想サブタイトルが脳内を埋め尽くしてます!嗚呼…腹筋・側筋・背筋が痛いw 
[一言] ゼーゼマン家の娘について主人公がハイジと予想していた時に、え?ゼーゼマンだったら連想するのはクララじゃないの?と思っていました。 すっきりしました(笑)。
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