表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】異世界でお兄様に殺されないよう、精一杯がんばった結果【コミカライズ】  作者: 倉本縞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/100

57.婚約破棄の危機

「ちょ、ちょっと、お二人とも、ちょっとお待ちください!」


応接室のテーブルの上に、アメデオが鞄から取り出した数々の薬品が並べられていく。

これとこれを組み合わせたほうが、いやこちらのほうが効果は高い、とか勝手にマッドサイエンティスト達が話し合うのを、私は大声をあげて遮った。


「どうした、マリア」

「どうかなさいましたか、聖女様」


二人とも、私の恐怖にちっとも気づいていない。

「あのあの、私が飲む、そのお薬の副作用っていったい……」

「……あー」

私の言葉に、アメデオが気まずそうに視線をそらした。

なになになんですか、その反応はいったいなんなんですか!


「それにつきましては、どうぞレイフォールド様からご説明を」

アメデオに丸投げされたお兄様が、視線をさまよわせた。


「……ラス兄様?」

「ああ。……まあ、稀に体に不調があらわれることもあるようだが」

「どういう副作用なんです?」

「………………」

お兄様はため息をついた。


「……それは、元々は媚薬を改良した薬だ」

「びやく」

「改良を進めた結果、禁術による呪いを排除する効能が、偶然発見された。……副作用というか、元々の薬の効能も残っているため、服用すれば神経が過敏になり、体の自由がきかなくなる」

「………………」

私は半目になって目の前のマッドサイエンティスト達を睨んだ。


オイおまえら、正気か。

一応、嫁入り前の伯爵令嬢を相手に、堂々と改良版媚薬を飲ませようとしてたのか、え?


お兄様がもう一つ、ドロドロの青黒い液体の入った瓶を手に取って言った。

「……この飲み薬とあわせて摂取すれば、副作用も多少は抑えられるはずだ」

多少ってなに。

「そういう問題ではございません」

私は静かに言った。


「しかし、これが一番効果が高く」

「お兄様」

私はぴしゃりと言った。


「どうあってもその薬を飲めとおっしゃるなら、わたくし、お兄様との婚約を破棄させていただきます」


ピシッとその場の空気が凍りついた。


「マリア、待て」

「待ちません。お兄様、お選びください。私にその薬を飲ませて婚約を破棄されるか、薬を飲ませないと約束するか、二つに一つです」

「……わかった、わかった約束する、薬は飲ませない!」

お兄様が叫ぶように言った。


「決して薬は飲ませぬ。だから……、婚約は」

「そういうことなら、ええ、破棄はいたしません」

私の返事に、お兄様が深く息を吐いた。


「良かった。……しかし、何故そんなにこの薬を飲むのが嫌なのだ?」

「逆に、この薬飲むの嫌がらない令嬢がいらっしゃったら、教えてほしいんですけど」


しかし、アメデオは納得がいかないようで、なおも言い張った。

「えー、でも、塔の魔術師特製の媚薬は、社交界で大人気なんですよ。効果が高いうえ後に引きずらないって、非常にご好評をいただいている大人気商品で」

「おまえは黙っていろ」

お兄様がぴしりと言った。


そういえば、闇属性って「アブノーマルな性的嗜好を持っている」とか占いで言われてたっけ。

アメデオもお兄様も、媚薬になんの忌避感も持っていないようだし、やっぱり闇属性って……。


「マリア、薬は飲ませないと言っただろう。なぜ逃げる?」

無意識にお兄様と距離をとろうとしていたようで、隣に座るお兄様が私の腰に腕を回し、体を引き寄せた。


「……おまえの嫌がることはせぬ。だから、マリア……」

なだめるように頬にキスされ、私は大人しくそれを受け入れた。

「愛している、マリア」

抱きしめられ、耳元でささやかれる。


「おまえもわたしを想っていると、そう聞かされて、どれほど嬉しかったことか。……今さら、おまえを失うなど耐えられぬ。それくらいなら、死んだほうがましだ」

お兄様は私を抱きしめたまま、切々と訴えた。


……お兄様……。

死んだほうがましとか、ちょっとそれは……。


ちょっと怒りすぎたかなーと、一瞬、反省しかけたが、


「飲み薬が駄目なら、この呪具はどうでしょう?」

「それは臨床検査数が少なすぎる。効果も限定的だし、それならこちらの魔道具のほうが」

ふたたび白熱した議論を展開する二人に、私はため息をついた。


やっぱりこいつら、闇属性マッドサイエンティストだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ