48.お仲間情報
「こちらが現在人気の、最新流行のもので、こちらはクラシカルなタイプの、伝統的なデザインとなります。これらの中から基本となるデザインをお選びいただければ、後日、何種類かデザイン画を作成し、お届けにあがりますので」
紅茶の香りを優雅に楽しみながら、様々なドレスデザインに目を通すとか、どこの有閑マダムですか私は。
渡されたデザイン画はどれも美しく品があり、かつ華やかだ。人気となるのもうなずける。
そして、どれもお高そう……。
お兄様が富裕層なのはわかったが、長年の節約人生が、生活必需品でもない高級品の購入をためらわせる。
だが実際、婚姻を承知した以上、そして効率を重視するお兄様の意向も含めると、最低2着のドレスと、挙式用のドレス1着を注文しなければならない。
1着は宮廷に報告に上がる時に着るから、クラシカルなものを……と思った時、私はリリアの言葉を思い出した。
ゼーゼマン家の養女。
お兄様なら、おそらくリリアより詳しい内情を知っているに違いない。
「あの、お兄様。ゼーゼマン家のことで、ちょっとお聞きしたいことがあるのですが」
お店の人がいるにもかかわらず、私を抱き寄せて嬉しそうに髪を撫でていた恋愛脳ラスカルが、さすがに私の言葉にその手を止めた。
「……ゼーゼマン家か」
「養女を迎えられた、とお伺いしました」
私の言葉に、お兄様はハッ、と嘲るように笑った。
「いよいよ向こうもなりふり構わなくなってきたということだ。……聖女とはな。笑わせてくれる」
「あの、それで、その養女の方なのですが」
私はドキドキしながら言った。
「あの、その方のお名前は……、ひょっとして、ハイジ、とおっしゃるのでは……?」
お兄様は、怪訝な表情で私を見た。
「いや? 違うが」
なーんだ、残念。
「ロッテンマイヤーだ」
ブフォッと私は紅茶を噴き出した。
グホガホと咳き込む私の背を、お兄様がさすってくれた。
「マリア? どうした、大丈夫か?」
「すびばぜん……」
おのれ世界名作劇場、おのれ南方のネーミングセンス!
油断したところで私の腹筋に止めを刺すとは、ぬかったわー!
ロッテンマイヤー……。ひっつめ髪に眼鏡のあの方か……。
私は口元をぬぐい、お兄様を見上げた。
「あのあの、そのロッテ……、ロッテン、マイヤー様なのですが」
「おまえが気にする必要は何もない」
バッサリ斬られたが、ここで諦めるわけにはいかない。
「そう仰らず! せめて髪型と眼鏡の有無だけでも!」
「………………」
お兄様が、私にうろんな目を向けた。
「何を考えているのだ?」
「えっ、いや……、どんな方なのか、気になるなあーと思って」
「……言っておくが、相手は聖女を騙るゼーゼマン家の養女だ。不用意に近づこうなどと考えるなよ」
お兄様に睨まれ、私は首をすくめた。
「いやいや、そんな……。お近づきになりたいとか、そんなことは全くぜんぜん」
考えてないと言えば、ウソになるが。
お兄様はため息をついた。
「まったく、おまえは……」
「すみません」
小さくなって謝ると、お兄様はふっと表情を柔らかくした。
「いや、いい。……おまえが何をしようが、わたしが守れば済む話だ」
うっ……。
お兄様は私のこめかみや頬、口元にちゅっ、ちゅっとキスをくり返し、満足したように私を抱きしめた。
「ドレスは決まったのか?」
耳元でささやかれると、くすぐったいのですが!
「あ、ああ、えーと、一着は宮廷用ですので、ここら辺でどうかなーと」
「……宮廷か」
え、さすがに婚約の正式報告はしないとマズいよね?
地方在住ならともかく、私もお兄様も王都にいるのに報告なしとか、あり得ないよね?
「報告はせねばならんが、決してわたしの傍を離れるな。誰に何を言われても無視しろ」
「……傍にはいますが、無視はちょっと」
私にお兄様の真似は無理です。




