44.仲間が増えた?
私は、マジで屋敷に監禁された。
屋敷の使用人全員、私の監視員になっていた。
私付きのメイドが、「ご主人様にきつく言いつけられまして」とこっそり教えてくれたのだが、
①私には常時、必ず誰かが付いていること。
②私が屋敷を抜け出そうとしたら、即座に渡された魔道具を使用すること。
③私が屋敷を抜け出したら、理由の如何を問わず、その時の見張り人がお兄様直々に処罰されること。
以上、三項目が使用人全員に通達されたらしい。
この通達に、使用人は全員、震え上がった。
特に最後の、「お兄様直々に処罰」という文言が効いたらしい。
私付きのメイドも、「ご主人様に逆らうのはお止めになったほうが」とか、「こんな魔道具、お嬢様に使いたくありません!」と涙の訴えをしてきた。
ちなみに魔道具は、対魔獣用の捕縛魔道具だった。
魔獣を生け捕るために開発された魔道具で、逃げる魔獣に投げつけると、投げ網のように広がって対象物を捕獲し、素早く縛り上げるという優れもの。お兄様謹製で性能もバッチリ!
……いや、魔獣生け捕り用って。
以前からお兄様には人間扱いされてないと思ってたけど、魔獣扱いはさすがに……。
私はため息をついた。
そんなにリーベンス塔に行ったのがマズかったんだろうか。
いや、うん、マズい行動だと言うのはわかってるけど。
でも、そんな怒らなくても。
魔獣用の捕縛魔道具を用意してまで、屋敷に監禁しなくてもいいじゃないか。
魔獣扱いにショックを受ける私を、使用人達が哀れみの眼差しで見た。ツラい。
「あの、お嬢様、リリア様からご連絡がありまして、宜しければ本日、こちらのお屋敷においでになりたいとのことですが、いかがなさいますか?」
「えっ、いいの?」
驚いて顔を上げる私に、メイドが慈愛の表情で言った。
「ええ、ご主人様からは、お嬢様を外に出すなとしか言いつかっておりませんから。それに、リリア様ならば問題ないかと」
「ありがとう~!」
嬉しい。ありがたい。
メイドもリリアも聖女。
喜ぶ私に、メイドが釘を刺した。
「ただし、リリア様とご一緒に街に下りられたり、王宮に行かれたりするのは、いけません。特に王宮は、何があっても駄目です」
「わ、わかってます……」
メイドの目がコワい。
いや、さすがに私だって、この状況で屋敷を抜け出そうなんて思わないって。
「マリア、大変なことになったわ」
私の部屋に通されたリリアは、挨拶もそこそこに言った。
リリア、この前あんなことがあったのに、私のことを心配してくれてるのだろうか。
申し訳ないけど、嬉しい。
「大丈夫よ、リリア! 大変は大変だけど、お兄様も今のところ、命まで取ろうとは考えてないみたいだし、へーきへーき!」
私の返事に、リリアが怪訝な表情になった。
「……なんの話?」
「え、なんのって……、私の今の状況だけど」
私の監禁状況を心配して言ったんじゃないの?
リリアはため息をつき、私の手を取った。
「マリア、ふざけている場合ではないの。どうか落ち着いて聞いてちょうだい」
「え、う、うん」
真剣なリリアの表情に、私も思わず背筋を伸ばした。
「先日、ゼーゼマン侯爵家で、養女を迎えられたのだけど。……この話は聞いている?」
いや、初耳です。
へー、ゼーゼマン家で養女を。
ハイジという名前だったら面白いのにな。
私が首を横に振ると、リリアの表情が曇り、私の手を握る力が強くなった。
「ゼーゼマン家では、その養女こそが本物の聖女だと主張されているの。……王宮はいま、ハチの巣をつついたような騒ぎになっているわ。聖女が同時代に二人も現れるなど、あり得ないことだもの」
「え」
私は目を瞬いた。
「……聖女?」
「そうよ」
「ゼーゼマン家の養女が?」
「そうよ、しっかりしてちょうだい、マリア」
じれったそうに私の手を握り、リリアが言った。
「言ったでしょう?『彼女こそが本物』と主張していると。つまりゼーゼマン家は、あなたを偽者と言っているのよ!」
リリアの言葉に、私は動揺した。
「え、ど、どうしよう? 私、謝罪してフォールに逃げたほうがいいかな?」
「バカ言わないで!」
リリアにまでバカって言われた!
ショックで固まる私に、
「王家はゼーゼマン家の聖女を認めていないし、変わらずあなたを聖女として支持されているわ。当たり前よ、私だってあなたの祝福の光を見たんだもの。……でも、ゼーゼマン家は、この前の襲撃事件で身内を処罰されて、焦っているわ。どんな手段を使ってくるかわからない」
「えええ」
リリアは周囲を見回すと、私の耳元に顔を寄せ、ささやいた。
「わたしが今日、ここに来たのも、王妃殿下のお言いつけがあったからよ。マリア、気をつけてちょうだい。デズモンド伯がいろいろと手を打っていらっしゃるようだけど、それだけであなたを守り切れるかどうか、わからないわ」
な、なんか物騒なこと言われてる気がする。
ていうか、聖女?
リリアじゃなくて、ゼーゼマン家の養女が?
えっと、私が偽聖女で、リリアが本物の聖女だから……、ゼーゼマン家の養女も、やっぱり偽聖女になるんじゃない?
つまり、私の仲間?
うーん、なんだろう。
あまり親近感もわかなければ、嬉しくもない……。
犯罪仲間なんて、増えても嬉しくないものなんだな。




