両者の最大の油断
「俺のオープニング、そしてドロー! プラポレーションタイム。」
俺は引いたカードを確認する。
「このカードは・・・今の状況にピッタリじゃないですか。 俺はコストを7つ支払い、フィールドのモンスター1体を捨て場に送り、「コレクトトレーダー」を召喚する。」
『モンスター:コレクトトレーダー レアリティ 紫 コスト 7
種族 悪魔族
コストと別に自分フィールドのモンスターを1体捨て場に送ることで召喚できる。
捨て場に送ったモンスターのコストによって、以下の効果を行う。
・4以上10以下 カードを1枚ドローする。
・11以上15以下 カードを2枚ドローし、その後手札を1枚捨て場に送る。
・16以上 カードを3枚ドローし、その後手札を2枚デッキに戻し、シャッフルする。』
「コレクトトレーダーの効果で捨て場に送ったウェブパスのコストは14。 よって2つ目の効果を使用する。」
そろそろ自分のモンスターで立ち向かいたい所だが、奴の「生災」モンスターを乗り切ることが出来ないのならば、こちらから倒せる手段を作るしかない。 さて、来てくれるだろうか? そんな想いを馳せながら引いたカードは・・・
「・・・ふっ。」
「随分と余裕そうな表情・・・ やっぱり君は嫌な奴だよ。」
「はん。 敵対してる奴を好こうなんて、もっと互いの事を知ってからにするんだな。 俺は効果によって手札を1枚捨て場に送る。」
準備は整った。 向こうのモンスターを警戒し続けたお陰というものもあるが
「俺はコストを25使い、魔法カード「希少価値の採掘」を発動! 場のコレクトトレーダー、手札の「生まれたての星屑」、捨て場の「マジシャンドール」を山札に戻し、さっき捨て場に送った「死水霊」を対象に、捨て場より召喚する!」
俺をこの世界に送って最初に神様がくれたカードである「死水霊」。 それこそ最初なんて文字化けが酷かったせいでまともに使えないかと思っていたが、こうして方法を生み出してしまえば、それはとても強力なカードへと早変わりする。
そして現れた人の形をした水の塊。 フィールド的には今まで雨やら津波やらの大水害を全て1つに担ったかのようだ。
「そして死水霊の効果! 俺は手札の「孤高の天馬」を捨て場に送ることで、そのステータスと効果を得る!」
『モンスター:孤高の天馬 レアリティ 銀 コスト 14
種族 獣族
このカードは自分の場に他のモンスターが存在する時、召喚が出来ない。
コンバットタイム時。 自分の場にモンスターが存在しない時、このモンスターの攻撃力は現在の攻撃力の倍になる。
このカードが捨て場に送られた時、このカードのコスト以下のモンスターを、捨て場から効果を無効にして召喚する。
ATK 18 HP 18』
「このモンスターの効果と死水霊の効果を掛け合わせて一気に叩く! コンバットタイム! 俺は孤高の天馬を得た死水霊で、トルホークを攻撃! この時天馬の効果が発動し、攻撃力は倍になる!」
これで攻撃力は78になった。 奴のトルホークは前のウェブパスの攻撃で削られているし、ライフコアもこれが通れば風前の灯火となる。
「・・・! 僕はコストを7つ支払って、インタラプトカード「超細胞分裂」発動! これによって僕のトルホークのHPは現在の倍になる!」
向こうも倍にしてきたか。 だがそれでも攻撃は止まらない。 天馬の姿をした水の塊が竜巻の中に突っ込んでいく。 本来ならば返り討ちだが、水の形が崩れようが再度構築される。 そしてトルホークの腹に水の角を突いて倒した。
「クールタイムに入り「希少価値の採掘」の効果により「死水霊」は捨て場に送られる。 この時天馬の効果は引き継がれない。 よって俺もお前も場はがら空きになるわけだ。 これでエンディングを迎える。」
これで敵は簡単には敵に塩を送れない。 俺も俺でモンスターを召喚したとしても残しておかなければ、奴の「生災」モンスターは場に召喚出来ない。 さぁ、相手はどう出る?
「・・・・・・・・・」
奴はまた黙りを決めている。 なんというか神もここまで来ると芸が無くなるんだな。 いや、そもそも神じゃないからああしてなにも出来ずにいるのかもな。
「どうした? 早く引け。 それとも戦意喪失か? それなら投了しな。 お前には世界を掌握するには早すぎたってことだ。」
これは煽りではなく本音だ。 そもそも自分の都合だけで世界が動くと思っていたのだから、俺みたいな反勢力のことなんか考えてなかったのだろう。 そしてその勢力に対して自分は追い詰められている状態。 黙秘権があると言われようが知ったことではない。
「くくっ くくくくく。」
「その笑い声は聞き飽きたぜ? それとも本当に気でも触れたか?」
あんなのはこの世界に来て散々見てきたんだ。 そんなことで精神力が減る俺じゃない。
「くくくく。 いやいや、君の事を誤解していたよ。 まさかここまで追い詰めてくるとは。 さっきのカードが神からの授け物だとしても、君には関係無い。 どんな強敵だろうと立ち向かうその精神力。 並大抵の事じゃ動揺すらしないようだね。」
「はん。 今更力量の図り違いに気が付いたってか? お前は俺たちを知らなすぎた。 見てる方向が一辺倒だったんだよ。 神ならもっと視野を広げやがれ。 後は敵に対して普通に油断しすぎだ。 寝首簡単に狩れるぞ。」
「そうさ。 君達も同じだろうと思って油断していた。 情報があるとはいえ手も足も出ないと思っていた。 手の打ちようがないじゃないか。」
「知るか。 時間稼ぎは止めてとっとと引け。 降参はあっても時間切れは無いんだからな。」
出来ることならそのままなにもしないで、というか出来ないでとっとと終わらせたい。 こっちだって後始末というものがあるのだから。
「僕のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。 僕は改変領域の効果を発動。 ・・・出目は「5」。 手札を入れ替えよう。 ・・・クールタイムに入って僕はエンディングを迎えるよ。」
不気味な程に奴が淡々と自分の手番を回した。 しかも改変領域の効果でまともにカードが使えなくなっている中で、奴は笑っているのだ。 神様に精神力の云々があるかは知らないが、少なくとも今の奴に負ける要素は無い。
「俺のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。 俺も改変領域の効果を発動する。 ・・・出目は「3」。 手札は前のターンでほとんど使ったが、戻し直す程じゃないな。 クールタイムに入って、俺はエンディングを迎える。」
しかしそんな時だからこそ俺は冷静に立ち回るのだ。 ここで上級クラスのモンスターを出して、奴の「生災」モンスターに使われては元も子もない。 例えそうじゃなくてもインタラプトカードが戦局がガラリと変わる代物を使われたら、下手をすれば負ける。 相手の様子見も予て、俺は召喚しないようにした。
「僕のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。 どうすれば君を屈服させることが出来るのか、どうやったら君の心に動揺が生まれるのか、それを考えないといけないよねぇ。」
「そんなことを考えたところで無駄だぞ。 お前にそんな力はない。」
遠回しに言う気はない。 奴の実力も踏まえて直球に言う。 元々神としての能力が低いのは、俺が神と直接あった事があるから言えることだが、それにしてもデッキに関して言えば、相手への依存率が高すぎる。 現に魔法カードなら使えるタイミングでも使わない事を考えるに、ほとんどが受け身の戦い方なのだろう。 そんなやり方で勝てる程カードゲームは甘くない。
「そう。 僕に君をどうこうできるような力はないかもしれない。 君は神である僕を恐れてない。 人間は自分達にはどうすることも出来ない出来事を目の前にした時、脳が拒絶を起こし、それが恐怖へと転じて身動きが取れなくなる。 それなのに君はその場に立ち止まるどころか真っ向に立ち向かってきた。 困るんだよ。 僕が手にする世界にそんな人間がいたら。」
「お前の理想論なんか知ったことじゃないな。 それに抑圧を掛けすぎたら、その抑え込んでいた蓋はいつかもっと大きな力となって返ってくるぞ。」
こいつの事を表現するのならば「子供のような大人」。 いや「大人の真似をする子供」の方が近いか。 自分中心に世界が動いていると考える思考力しかこいつにはない。 結局の話、こいつも人間のように自分が一番だと思っているだけに過ぎないのだ。
「つーかそろそろカードゲームの方に集中しろよ。 現実逃避したいのか知らねぇけどさ。」
こいつに対して大分当たりがキツくなってきている気がするが、別にこいつに媚びへつらう理由はない。
「・・・ねぇ、この制約に乗っ取った領域の外の人間は干渉が出来ないって話じゃないか。」
「邪魔になら無いようにな。」
「じゃあさ、内側にいる僕達は影響あるんだよね?」
そう言って奴はディスクのついている方の手の人差し指を俺に突き立てる。 まさかと思い俺は身構え、風切り音が聞こえた。 自分の体に痛みはない。 ただの脅しかと思った時
「アリフレア!」
サヴィの叫びに振り返るとそこには
倒れているアリフレアの体から血が地面に広がっている光景が写っていた。
次回は一部の人には精神的にきつい場面になると思いますが、話の進行上では仕方の無い事だと思ってください。
アリフレアはなんだかんだで人気なんですよね。 この小説では




