2人の闇
2人の戦いの幕が上がった。 制約には従っていないので、俺達は遠くからでもアドバイスは出来る。 だがそれでは試練を乗り越えることにはならないだろう。 だから口を挟むのは極力無しの方向で、みんなも納得した。
最初のダイスロールで、互いのミルレが「5」を出した。 一対一なら振り直しだが、タッグルールのため、アリフレア同士の出目にかかっている。
本物は「3」なのに対して、影の方は「2」になっていた。 本物側のミルレの先攻になる。
「私のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。 私はコストを7つ支払って「スターサイン スコルピー」を召喚します。」
『モンスター:スターサイン スコルピー レアリティ 紫 コスト 7
種族 昆虫族
このカードは戦闘を行わない変わりに、相手のライフコアに7のダメージを与える。
このカードが戦闘により破壊された時 デッキまたは捨て場からコスト10以下の「スターサイン」モンスターを1枚手札に加える。
ATK 9 HP 9』
出てきたのはサソリ。 ミルレのデッキは星座をイメージしたものが現れているので、その1つだろう。
「タッグルールでは最初は全員戦わせることは出来ないのでしたね。 ですがこのカードならダメージは入れられます。 私の影のライフコアに、スコルピーの効果を使用します。」
相手に対して先制点を入れるミルレ。 幸先は良さそうだ。
「クールタイムに入って、私はエンディングを迎えます。」
「・・・私のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。」
同じ様にミルレの影が喋るが、感情の乏しいロボットのように、虎視眈々と喋っていた。
「・・・私はコストを7つ支払い、「スターサイン スコルピー」を召喚。 スコルピーの効果により、あなたに7のダメージを入れる。 クールタイムに入り、エンディングを迎える。」
ミルレの影も、まるでリピートのように効果を使い、ターンを終える。 相手は彼女達の影。 つまり事実上のミラーマッチ仕様になっている。 そうなれはわ対処の仕方も変わってくるだろう。
「わ、私のオープニング、そして、ドロー。 プラポレーション、タイム。」
凛々しくカードゲームを行うミルレとは対称的に、アリフレアの方はたどたどしい面持ちだ。 経験だけで言うならばおそらく一番未熟だろう。
「わ、私はコストを、4つ支払って、「雲の妖精」を、召喚します。」
『モンスター:雲の妖精 レアリティ 水色 コスト 4
種族 妖精族
このカードを攻撃対象にするとき、相手は手札を1枚捨て場に送らなければならない。
ATK 5 HP 6』
「更にコストを6支払って、「アンブレラメイト」を召喚します。」
『モンスター:アンブレラメイト レアリティ 紫 コスト 6
種族 妖精族
このカード以外の「妖精族」が存在する時、戦闘及び効果の対象はこのカードのみになる。
このカードが戦闘、効果で破壊された時、場の「妖精族」モンスター1体の装備カードとなり、装備されたモンスターは、戦闘及び効果で2回まで破壊されない。
ATK 2 HP 10』
アリフレアは徹底的に防御の構えをとる。 アリフレアの戦術は消極的ではあるが、時間をかければかける程、防御は万全になっていく。 アリフレアと戦う場合は、ある程度の速効性が必要なのだ。
「ク、クールタイムに入って、私はエンディングを、迎えます。」
アリフレアのターンを終えて、今度は影のアリフレアのターンになる。とはいえ先程の流れを考えると
「・・・私のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。 私はコストを4つ支払い、「雲の妖精」を召喚。 更にコストを6つ支払い、「アンブレラメイト」を召喚。 クールタイムに入り、エンディングを迎える。」
やっぱりそこも同じか。 そうなれば互いに手札は同一していると言うことになる。 同じことの繰り返しではジリ貧になるな。 流れを変える方法はあるのか?
「私のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。 ・・・今は戦況を変えるよりも、相手と手元を同じにしないことが大切ですね。 私はコストを9つ支払い、魔法カード「観測地点の変更」を使用します。」
『魔法カード:観測地点の変更 レアリティ 桃 コスト 9
お互いに手札をデッキに戻し、シャッフルする。 その後戻した枚数分ドローする。 この効果を使用したターンプレイヤーは、このプラポレーションタイム時のみ魔法、装備、領域カードを使用できない変わりに、モンスターの召喚コストを1度だけ「3」にする。』
互いに手札交換か。 確かに同じデッキならば、少しでも差異はつけておかなければならないだろう。
手札の交換が終わったようだ。 そしてミルレはアドバンテージとして、次の召喚コストが3になる。 それはどんな強力なモンスターでも関係ない事になる。 ミルレは出せるのか?
「私はコストを3支払い、「スターサイン イルルアルタ」を召喚します。」
『モンスター:スターサイン イルルアルタ レアリティ 銅 コスト 12
種族 天使族
このカードは自分フィールドに「スターサイン テネリブ」が存在しない時、効果を発動できない。
このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、手札を1枚捨て場に送ることにより、破壊したモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手のライフコアに与える。
ATK 15 HP 14』
効果としては心もとないかも知れないが、今なら十分に相手にダメージを与える事が出来る。
「私はスコルピーの効果によって影の私にダメージを与えます。 コンバットタイム。 私はイルルアルタで向こうのスコルピーに・・・」
「コストを6つ支払って、インタラプトカード「誘うそよ風」を発動。 対象をアンブレラメイトに変えます。」
『魔法カード(インタラプト):誘うそよ風 レアリティ 紫 コスト 6
自分フィールドに妖精族がいる場合、対象を任意の妖精族に変更できる。』
攻撃対象をアンブレラメイトに変えられる。 安くなるがアリフレアの影にもダメージは入る。 有利か不利かと問われても難しいが多少でも減らしておくのは戦術上仕方のないことだ。
イルルアルタの攻撃はそのままアンブレラメイトに当たる。 そしてその余波を受けて、アリフレアの影にダメージが入る。 それに加わって2人に繋がれた影の糸に振動が伝わり、その一部が俺達にも水滴のように触れた。
『・・・様と、離れたくない・・・』
なにかが脳内に流れてきた。 誰かの、いや、これは・・・
「アリフレアの、声?」
聞き間違いではない。 確かに今の雫に触れた後にアリフレアの声が聞こえた。 そしてこの雫はアリフレアの影から出てきたもの。
「今のは・・・アリフレアの心の声・・・なのか?」
他のみんなはどうだったのかと反応を見ると、俺と同じ様な反応をしているのが分かった。
「セイジ君。 あれはあの2人の影からの声だとするなら、この声は何を訴えていると思う?」
サヴィの問いに俺は答えきれない。 それは誰がどう言おうと、アリフレアの闇が生み出したものなのだから。
「破壊されたアンブレラメイトの効果により、場に存在する雲の妖精に装備されます。」
「クールタイムに入って、私はエンディングを迎えます。 アリフレアさん。 今は気にする必要はありません。 戦いに集中していれば、気にはなりませんので。」
「は、はい。」
ミルレがアリフレアを鼓舞する。 あの2人はほぼ間近で受けている。 俺達が聞こえなかったなにかも聞こえていることだろう。
「私のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。 私はコストを9つ支払い、装備カード「ナイトスターニードル」をスコルピーに装備。」
『装備カード:ナイトスターニードル レアリティ 桃 コスト 9
このカードを装備したモンスターが相手のモンスターを破壊出来なかった時、装備したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手フィールドのモンスター1体に与える。
この効果でモンスターを破壊した時、互いのライフコアに、破壊したモンスターの体力の半分のダメージを受ける。』
「コンバットタイム。 スコルピーでイルルアルタに攻撃。 そしてナイトスターニードルの効果で雲の妖精を対象に発動。 クールタイムに入って、私はエンディングを迎える。」
一連の流れをまるで受け流すかのごとく淡々とこなすミルレの影。 あれが彼女の本質なのか、それとも闇と共に作り出された性質なのか。あの時聞こえたアリフレアの声も気になる。 この戦い、なにがなんでも五感を研ぎ澄ましていなければ、変化を見逃してしまうだろう。 幼き2人のためにも、見守るしか出来ない。 そんな自分を少しだけ呪った。




