阻止するための出撃
カンタの言った一言で確信に近いものを得た。 奴が神を通さずに3人も転生者としてこの世界に送り、この世界の秩序が乱れかけた元凶というわけだ。
『皆さんどうもこんにちは。 自分はこのハーキュリーの新たな国王となったものです。 今流れているこの映像はまだハーキュリーにしか流れていません。 ですが直にこの国から他国へと流れ、そしてハーキュリーは世界一の国へと変貌を遂げることでしょう。』
なにやら演説が始まった。 あれは立体映像なので、こちら側からの干渉はほとんど受け付けない事だろう。 多分奴も元ミカラ様の宮殿の内部から放っているのだろう。
『ええ、不安になるのは分かりますよ。 そんなことが出来るのかと。 ですがご安心下さい。 それを現実にするために私がいるのです。 見たくはありませんか? 我が国が他国を先導する姿を。』
別に誰も見たくは無いだろう。 だがこちらからの反応は向こうには受け付けない。 言うだけ言って、後はほぼ丸投げだろう。 面白くなればなんでも言いと思っているのならば、尚更自分から手を下すこともしてこないはず。
『この言葉に同意する者は是非ハーキュリーの宮殿に来て貰えると嬉しいな。 何日でも待ってあげるからさ。』
そうして映像は消えた。 つまり奴はあのハーキュリーの宮殿、ミカラ様達の帰る場所に留まることを宣言した。 挑発のつもりだろうか、それともふんぞり返りたいのだろうか。 どのみち奴とは敵対するのは決まっている。 慈悲も遠慮も神の威厳も知ったことではない。
「ミカラ様。 あいつは俺が何とかします。 今はゆっくり休んでください。」
「・・・君には何から何まで任せっきりになってしまっているな。 忙しさを言い訳に休んでいなかったから、丁度良いのかもしれない。 あの宮殿には私が雇った兵士達が戦っているはずだ。 彼らの援護も、頼もう。」
そう言ってミカラ様は近くの木陰に倒れこんだ。
「疲弊もあるけど、安心の方が近いかも。 息子兄弟もそのうち来るだろうから、このままにしておいても問題ないわ。」
サヴィの状態確認が終わったのを確認して、俺達も出撃準備を整えた。、
「俺達も宮殿を取り返しに行くぞ。」
「でもどうやって行くッスか? あれだけの自信があるなら、敵もわんさかいそうッスけど。」
「いえ、あいつはミカラさんから宮殿を奪って数時間しか経ってない。 つまりいくら人望が、この場合は神の力かしら? があったとしても、あたいたちを食い止めれる程の白兵戦は出来ないはずよ。」
「ならば正面突破を行っても問題はないで御座ろう。 ここから宮殿へはそう遠くない。 すぐにでも戦闘を仕掛けられるで御座る。」
作戦が決定した後、俺達はすぐに動き出したのだった。
「本当に誰もいない・・・」
ゼルダが呟くのも無理はない。 普通ならば王を守るために、守衛隊なんかがいるものなのだろうが、門前はおろか、先の扉ですら誰も配備されていないのだ。
「舐められているようにも感じるッスね。」
「余程自分に自信があるのだろうな。 しかしそれは油断と何ら変わりはない。 そして私達はその油断を見逃す訳もないだろうに。」
ベルジアの言う通りだ。 寝首を取ろうと言うのに警戒心がない。 それともそうなることを予測してないなんて言う大馬鹿な話かもしれない。 とにかく歓迎はされていないだろうが、中まで入ることにする。 最大限警戒はしているし、何かあっても初撃ならサヴィの魔法で防げる。
扉を開ける。 中までは変わっていない。 そしてそこにも誰も配備されていない。 流石に相手を舐めすぎでは? と思った瞬間、またもや立体映像が現れた。 今度は近くなので自分の置かれている現状がハッキリと分かることだろう。
「やぁいらっしゃい。 随分と早いご到着のようだね。 よっぽど僕の意見に同意したかったとみえるね。」
本当にそう見えるのならとんだ節穴だ。 自分が駒のように動かしているとでも言いたげなくらいに、自信に満ちていた。 逆に清々しい位に。
「神様。」
何かを言おうとした時、最初に出たのはカンタだった。
「うん? おお! 君はあの時の! まさか君が先導してきてくれたのかい? いやいや、嬉しい限りだよ! どうだい? この世界は? 毎日が楽しいかい?」
カンタを見た瞬間に奴は大いに喜んでいた。 自分が送った人間なんだ。 簡単に忘れるようでは意味も無いだろう。
「・・・ええ。 前の世界よりも充実しております。 だからこそ聞きたいのです。 僕をこの世界に送った理由を。」
「意味なんて問う必要はない。 だって僕も楽しんで君が楽しめれば、それはとても素晴らしい事だろう? でもふふふ。 僕の目にやっぱり狂いはなかったんだ。 僕にだってちゃんとした世界に魂を送れるんだ。 別に上の神様達を侮辱する気はないけど、もう少し見て貰いたいものだよね。 ああ、君を最初に送って良かった。 ということは、後から送った2人もこの世界を楽しんで・・・」
「そうなる前に元の神の所に送ったぜ?」
狂ったように楽しんでいるところ申し訳ないが、勝手に話のペースを掴まれるのもいい加減癪だったので、流れをぶった切ってやった。
「・・・んん? 折角楽しくなってるところに誰さ? 水を差すのは? ・・・言葉を発した君、転生者? 良く見れば他にも数名この世界の人間じゃない人がいるみたいだね。」
「分かって貰えるなら話が早いな。」
そう言いながら俺は前に出た。
「単刀直入に言おう。 お前を止めに来た。 お前の意見には、少なくとも俺は賛同しない。」
「・・・なるほど、君はあの神様達に送られた人物のようだね。 実に柔軟性の欠けたあの人達らしい人材だよ。」
「お前のそれは誉めてんのか?」
「どちらでもいいさ。 それで? 僕を止めるって? 本気で言ってる? 神様である僕に?」
「神って言っても下級神だろ。 お前。」
その言葉に目の前の神はこめかみを動かした。 お? 図星か?
「きみ、立場分かってる? 神に対してそんな侮辱があるかな?」
「お前だってさっき俺が信じている神を侮辱しただろ? 自分に良くて相手が良くないなんて、あると思うか?」
完全に売り言葉に買い言葉の押収となっているが、こればっかりは引けない理由もある。
「・・・さっきカンタが聞いたな。 この世界に送った理由を。 そして自分が楽しめればそれでいいと。 あの言い方だと他は関係無いと言いたげだったが?」
「僕はそう言ったつもりだけど?」
耳に疑いはなかったか。 ならなおさらこんな自己中な神にこの世界を渡すような事をしてはいけない。
「じゃあまだ呼び寄せるのか?」
「というよりももう呼んでるんだよね。 本当は散りばめても良かったんだけど、僕の目的の達成のために今はこの宮殿で待って貰ってるんだ。 今回は4人も呼んだからね。 ちょっと大変だったけど。」
ほぅ。 つまりそいつらを一網打尽にも出来るわけだ。 こいつはありがたいが、4人か・・・ 完全に大罪が全員送った事になるのか。 大体覚悟は決めていたが7人を一気に相手取らなくて良かったのは幸いだったな。
「・・・ふーん。 とことんまで僕の邪魔をしたいんだ。 その邪魔をしたい理由って何かな?」
「お前みたいな自己中にこの世界を渡してなるものかってな。 お前はこよ奥の部屋か? それとも屋上か?」
「本当に僕と戦うつもり? 君も随分と自信に満ち溢れているようだけど、僕は神様だってこと、本当に分かってる?」
「お前の話を聞く気はないもうないな。 さっさと先に進ませて貰うぞ。」
この先に誰が待っていようが関係無い。 奴を叩くだけの事だ。
「・・・そう言えば知っているかい? 神様がこの世界に送ったってことは、少なからずその神様の加護があると言う事なんだけどさ。」
「ああ、意外と浸透しているぜ? 神様から与えられた肉体だのなんだのって話か。 そりゃ多少たりとも恩恵はあるだろうな。」
「そう、そして僕も神様だからさぁ・・・こんな風にも使えると思うんだよね。」
そう言って指を鳴らした瞬間に、俺はうつ伏せで組伏せられる。
「がっ!?」
「カンタ殿! なにをするで御座るか!?」
どうやら俺を倒したのはカンタらしい。 だがカンタはそんな奇行にいきなり走るような人柄ではない。
「まさか!?」
「はははは! 神様の恩恵は間接的にだけど僕にも繋がっている。 つまり彼を含めて僕が送り出した人達は、みんな僕の言うことを聞くって訳! と言っても距離が離れすぎると使えないのが欠点だけど、逆を言えば近ければ近いほど僕に忠実になるんだよね。」
そう言いながらカンタは俺達の行く手を1人で拒んだ。
「じゃ、彼と遊んでてよ。 僕は僕で忙しいから。」
「ちっ! 神様気取ってんならこんな姑息な真似してんじゃねぇ!」
俺が叫んでも既に奴は消えた後だった。 残ったのはカンタ一人。 その手にはカードバトル用のディスクが握られていた。
「なるほど、戦おうって訳か。 それなら制約カードバトルと行こうか。 勝った方がここを通れるってことでな。」
そう俺がバイザーに手を掛けた時、誰かに手を止められた。
「セイジさん。 ここは私がやります。」
「アリカ? ・・・その理由を聞かせてくれるか?」
「私は、みんなに守られながらこの世界で暮らしていて、そして外に出たときに気が付いたのです。 自分を守るのならば、自分から「守ってくれ」など言わないで、自分自身で戦えばいいと。 そして自分も、相手も守れるようになりたいと。」
「あのカンタは正気じゃないぞ。」
「なら尚更、私も戦いたい。 貴女達はこの先の敵と戦う事になる。 なら、体力は残しておかないといけませんよね?」
アリカの決意に、俺はバイザーの手を離した。 そしてアリカに目を向ける。
「分かった。 ここはお前に任せる。 心配するな。 負けたとしても制約カードバトル上では命のやりとりは余程無い。 カンタを、解放してやってくれ。」
「うん。」
『制約:奥への通行許可。』
AI領域が展開される。 俺は見守り人として、この場に残ることにした。
「「さぁ、劇場の始まりだ(です)!」」
お互いに数回しか戦いを出していないので、次回の戦いは結構やりたい放題するかもしれません




