厄介な敵
カンタのデッキを組み直した後に寝て、そこから俺だけ起きる。 日の出が見えるのできっちりと朝にはなっていた。 カンタはさすがに寝ている。 しかしその成果は確実に出る。 最初の時のデッキに比べれば、代わり映えしてしまったカードも多く存在するが、コンセプトは消えていない。
むしろそのコンセプトに合わせる形でカードを選別し、それを組み込ませた。 その間カンタが乗り気では無かったわけでもなく、俺のカードに対する説明はしっかりと聞いていた。 まだそのデッキで戦ったことはないが、カンタなら操ることが出きるだろう。
本当なら後は彼次第と見送るところだが、昨日のうちに別々とはいえ2回も誘拐未遂が起こっている。 また同じことが繰り返されるのは世の理かもしれない。
そんなわけで彼が起きるのを待っていると、不意にドアからノック音がした。
「どうぞ?」
「師匠。 失礼するッス。」
開けてきたのはファルケン。 珍しくはないが雰囲気がただ事ではない。
「どうした?」
「師匠。 俺っちはこのまま武者修行をして、それで終わった後、どうすればいいッスかね?」
なにを真剣に悩んでいるのかと思ったら。 拍子抜けになった俺は、それでもファルケンなりに悩んでいることを踏まえた上で、こう切り返した。
「そんなものを考えるよりも、自分のやりたいことに真剣に取り組んだ方がいいと思うぜ? 見つからないなら探せばいいんだしな。」
「そう言うものッスかね?」
「今までの自分の役目を果たした後だ。 虚無感に苛まれるのは仕方ない事だろうよ。 お前なりに生きていけばいいじゃないか。 子供達が成長するように、お前だって成長するってところをみせてやらないとな。 いつかあの子供達に抜かれるぜ?」
「それはそれで、嬉しいような、寂しいような。」
そう言いながらファルケンはカンタの方を見る。 起きる気配は一向に無い。 かなり遅い時間帯まで作らせたからな。 あと1時間くらいは起きないだろう。
「カンタ1人に任せられるッスか? 亜人に対する偏見と侮蔑の定着は、そんな簡単には剥がれないッスよ?」
「やってもらうしかないさ。 俺だって一人一人にやってる暇はないんだ。 ならやってもらえる人を増やすしかない。 カンタには荷を背負わせる事になるだろうが、理解して貰えると思う。」
「・・・勝てるんすか?」
「さぁな。 アドバイスはしたがデッキを組んだのは彼だ。 勝手は彼が一番分かっているだろうな。」
「・・・ふぁぁ。」
そう言っていると噂の中心のカンタが目を覚ました。
「おはようカンタ。 目覚めの気分は?」
「・・・あんまりよくないかな。 夜中までデッキを組んでたんだもの。」
「だろうな。 今度からはガッツリと変える気が無いならあそこまで悩む必要はないから、1回目のツラさだけでも味わっておいた方が損はないぞ。」
「そうだね。 もうみんな起きてる? 朝御飯を食べに行こうよ。」
「結構規律正しいんだな。 お前。」
別に否定するつもりは無かったから、出掛けれる準備をして、集合するのだった。
「本当なら王様とかに会いたいところではあるんだがな。」
俺は朝食をとりながらそう呟く。 小国とはいえ、誰かしらは国を統率しなければ、本当の有象無象の亜人の国になってしまう。 が、現実はそう簡単でもない。
「この国には王様はいないよ。 みんな生き生きとしているから、そんな人ごいることを考えられないんだろうね。」
そんなこったろうとは思ったわ。 じゃなかったらカンタを通じてとっとと会ってるしな。
「ここも門番を立てるだけじゃ、ただの檻と変わらないぞ。そっちの対策もなんとかしないとな。」
「・・・そうだね。」
そんなことを繰り返していると、なにやらけたたましい音が鳴り響いた。
「何だ?」
『よく聞け亜人共。』
スピーカーのような声が辺り一面に響く。
『うちのもんが世話になったらしいじゃないかい。 亜人のくせして生意気にも人間に抵抗するとはどういうこっちゃ。 お前らみたいな人もどきにも使い道を与えとるんやないかい。 少し位足りない脳を使えアホンダラ共。』
何の隠し立てもしないどストレートな言葉。 そこまで堂々と言えるのは逆に清々しさを感じる。
『どうせこの国に王なんてもんはおらんのやろ? そこでだ。 この俺 マーチン・オルドローサをこの国の王にする提案を出してやる。 お前らの衣食住は確保してやる。 だから・・・』
「そんだけ亜人を侮辱してる奴が王になるなんて、冗談も大概にしろよ。」
我慢の限界、というよりは矛盾の連続だったので、耳障りな言葉に口を挟む。 馬鹿の演説に付き合っていられるか。
『あ? 何やお前。 部外者は引っ込んどけ。』
スピーカーで喋ってる奴は、一言で言うならヤンキーの風貌だった。 スーツは来ているが、あれではヤクザやギャングとなんら変わらない。
「部外者っていうなら、そっちの人間に対して当たったのは俺だ。 制約上で既に亜人を誘拐及び転売は出来なくなってる筈だけども?」
『あいつは金勘定やっとるわ。 奪えなくなったなら別の手をあげるだけだ。 ま、切り捨てても良かったんだがな。 穀潰しにならなかっただけありがたいと思ってもらわないとな。』
使うものは使う・・・か。 そうなれば尚更
「あんたにこの国は任せられないなぁ・・・」
『なんだ?やるってのか餓鬼? こっちはな、商売で考えとんねん。 仲良しこよしでやるようなもんじゃ無いねん。 さっさと去れい。』
「そこまで言うなら立候補を立ててやるよ。 次代を担うんだ。 ちゃんとした人材がいるのなら、それを引き出すのは勝手だろ?」
『はん! 対した奴も出せなさそうだがな。 で? 誰を出すんや?』
「ここでかなり信頼を得てるカンタを出そう。 俺はこいつを支持するぜ。」
「え!?」
俺が肩を叩いた時にカンタは動揺していた。 それもそうだ。 これは別に仕込んだわけではない。 完全なアドリブだ。 だがこれには訳がある、
「カンタ、これは君のためでもある。 ここで度胸をつけることと、自信を付けて貰う事が君を推した理由だ。 いいか? ここは怖じ気づくな。 必ず勝つ気で挑むんだ。 決して負けることは考えるな。 プレッシャーを押し付けるようだが、どんな状況だろうと、諦めなければ光明は見えてくる。」
「だ、だけど・・・」
「自分の作ったデッキを信じろ。 そうすれば、デッキはちゃんと想いに答えてくれる。」
そう言って俺はカンタの手を取り、デッキケースを触る。 カンタはその言葉に覚悟を決めたようで、俺の手を離し、前に出る。
「僕はカンタ! この国をお前のような奴から守るため! 僕はお前に勝負を挑む! 制約カードバトルでだ!」
『勝った方がここの王だ! 俺にたてついたこと、後悔させてやる!』
『制約:小国イラミーナの王誕生』
対戦者の2人はバイザーを装着し、AI領域が展開される。 領域の範囲内に俺達は入る。 他の亜人の何人か入っている。 恐らくは見物半分、結末を見るのが半分だろう。 人が多いのは悪くない。
『さぁ、劇場の始まりだ!』
2人が掛け声をする。 カンタに先に教えておいて良かった。
ダイスロールが行われ、カンタが「45」、マーチンが「66」。 マーチンが先攻になった。 しかしダイスがかなり紙一重だ。 ダイス運だけで決めるのは早計だろうが、実力としては五分か向こうが少し上、といった感じだろうか。 どのみちそんなもので実力を図れないのは間違いないが。
「俺のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。 俺はコストを10つ支払い、「商人 ドゥーレイ」を召喚。 さらにドゥーレイをコストとすることで、手札から「仲介役職人 カンージョー」を召喚。」
『モンスター:仲介役職人 カンージョー レアリティ 銅 コスト 12
種族 アンチマン
このカードは自分フィールドのモンスター1体を捨て場に送ることで、コストを支払わずに召喚出来る。
このカード以外のモンスターカードが存在する場合、戦闘対象に選択できない。
自分フィールドのモンスターを捨て場に送ることで、捨て場に送ったモンスターの体力分、ライフコアを回復させる。
ATK 9 HP 20』
またドゥーレイかと思ったが、どうやら戦い方は違うようだ。 いや、どっち道ドゥーレイが入ってる時点で、似たり寄ったりなデッキだろうかと考えるべきだな。
しかしドゥーレイには破壊時効果があるが、カンージョーの召喚コストとしたので、その効果は発動されない。 効果処理としては破壊じゃないからな。
「更にコストを4つ支払い、装備カード「回収の手錠」をカンージョーに装備。」
『装備カード:回収の手錠 レアリティ 水色 コスト 4
1ターンに1度、このカードを装備したモンスターよりも、コストの低いモンスターを相手が召喚した時、そのモンスターのコントロールを、エンディングまで得る。』
これによってコスト12以下のモンスター1体は、必ず相手側に行くってことになるか。 かなり厄介なカードだ。
「クールタイムに入り、俺はエンディングを迎える。 さぁ、てめえのターンだ。」
そしてカンタのターンへと移る。 カンタ。 お前が守りたいもののために、お前自身の覚悟を見せるんだ。
今回は敵側だけのターンでしたので、細かい現状は書きません。
次回からまた大変です




