僕にもその力を
「クールタイムに入り、俺はエンディングを迎える。 幕は既に降りた。」
『勝者:セイジ ノムラ これにより、誘拐犯は今後の亜人の誘拐を禁ずる。』
AI領域が閉じると、いつの間にか亜人達に囲まれていた。 誘拐犯は居心地が悪そうにこの場を去っていった。 亜人誘拐犯、基奴隷商人の片棒を担ぐ事が無くなった彼は、果たしてどうなることやら。
そんな風に憐れんでいたら、今度は周りの亜人達が、ワッと押し寄せてきた。
「あんた、強いんだな!」
「毎度毎度連れ去られるばっかりだったからなぁ。 成敗しててスカッとしたぜ!」
「ありがとうねぇ。 うちの子を助けてもらっちゃって。」
羊に白熊、ライオンと自然界では絶対にあり得ないだろう組み合わせの亜人達がいっぱい来る。 色々と揉みくちゃにされるのもちょっと勘弁だったので、俺は適当にあしらって囲まれていた集団から抜け出す。 すると今度は目の前にカンタが立っていた。
「セイジさん。 あなたのその強さを見込んで、お願いがあります。」
そう言ってカンタは深々と頭を下げる。
「僕にも、この街の皆を守れる力を教えてください!」
そう懇願してきた。 カードゲームを見て、力を教えてくれと言われたのはファルケン以来なものか。 そう思いながら俺はカンタの肩に手を乗せた。
「カンタ。 この世界じゃ亜人は基本的には蔑みの対象だ。 亜人迫害主義者もいるくらいだ。 そしてお前も見てたように、明らかに亜人を友好的な接し方をしていなかった。 あいつらは恐らく亜人の奴隷商人と繋がってる。」
「そんな・・・ゆ、許せない・・・! なにも悪いことをしていない亜人の人達を、自分達の利益のために捕まえるなんて・・・!」
カンタが怒りを露にしたことにより、お付きの亜人二人がぎょっとしていた。 多分ここに来て彼が怒ったところを見たことが無かったのだろう。 よっぽど優しくしてもらってたんだろうな。
「そうだ。 亜人だろうが言葉が喋れて、心が通じ合えば人と同じだ。 俺は同じ様な光景を何度も見てきた。 だからその理解者が1人でも多くいてくれることに感謝している。 だから」
そう言って俺はカンタに手を差しのべる。
「転生者として、亜人を見守るものとして、この手を取ってくれないか?」
「・・・もちろん。 僕を、亜人の人達を、守れるようにして欲しいんだ。」
考えてはいなかった。 即答してくれた。 意外にも分かりやすい性格なのかもしれない。
「よし、それじゃあ色々と確認しておきたいし、宿を取ろう。 泊まる場所はあるか?」
「それならこの先に宿屋があるんだ。 人族専用だから、そこまで困らないはずだよ。」
「ファルケンはどうする?」
「俺っちは別のところで宿を取ってるんで大丈夫ッス。 それに師匠の話の邪魔は出来ないッスから。」
気を遣われているとはな。 そうして宿屋へと向かう事にしたのだ。
部屋を3つ借り、俺とカンタ、ベルジアと零斗さん、アリカとアリフレアと分かれた。 金勘定についてはこっち持ちにしたので気にするなと言っておいた。
「さて、まず確認なんだが、これは出来るか?」
部屋を借りた後に俺はカンタに自分のデッキを見せる。 カンタは腰部分に手を当てて、自分のデッキを出してくる。 完全に触れてないわけでは無かったのは救いか。
「持ってはいますが、これを使ったことは無いです。 遊びでも、ましてやあんな風に使うなんて事は知らなかったです。」
「・・・お前を送った神様はなんも教えてくれなかったんだな。」
前の二人が知っていたからてっきり教えてるもんかと思ったが、どうやらあいつらの場合は本能的だったみたいだ。 今となってはどうでもいいがな。
「確認させてくれ。 お前がこの世界に来て大体どのくらい経つ? 感覚的なもので構わない。」
「うーん。 多分2ヶ月位かな? 感覚的にだけど。」
カンタがこの世界に来た時間と逆算すれば、世界的に異変が起き始めたのも大体その時期か。 アリカの時には無かったみたいだし、その神が送ったせいで歪みが生じたんだろうな。 そんなことはまぁ、どうでもいいけど。
「とりあえずデッキを確認したい。 バイザーかなにかは持ってるだろ?」
そう言ってカンタは頭を捻ったが、似たようなものならとサングラスを出してくる。 カンタ達を送った神に、送ったこと以外本当に適当な奴だと思いつつもAI領域に入り、カンタと感覚を共有し、デッキを確認する。
『モンスター:ポイズンラマ レアリティ 水色 コスト 4
種族 獣族
自分のプラポレーションタイムに一度、手札の魔法カードを捨て場に送ることで相手のライフコアに5のダメージを与える。
ATK 0 HP 10』
『モンスター:カウンタークラブ レアリティ 桃 コスト 9
種族 甲殻類
このカードが相手モンスターから攻撃を受ける時、ダメージを受ける前の体力の半分のダメージを、攻撃してきたモンスターに与える。
ATK 0 HP 20』
『装備カード:トラバサミの足枷 レアリティ 紫 コスト 8
自分フィールドに存在する獣族 鳥獣族 獣人族の1体に装備が可能。
相手がそのモンスターを攻撃宣言した時、そのモンスターの装備カードとなり、クールタイム時に2のダメージを与える。
手札1枚、もしくは自分のライフコアを3払うことで、このカードを破壊する。』
『領域カード:囲う木の柵 レアリティ 銅 コスト 12
この領域カードが存在する時、獣族は戦闘で1度だけ破壊されない。
自分フィールドに獣族が召喚された時、自分フィールドの他のモンスターの体力を10回復させる。』
「・・・」
俺はカンタのデッキを軽く見て、どういう言葉で言おうか悩んでいた。 しかし言わなければ伝わらない。 俺はカンタに質問した。
「カンタ。 このデッキで誰かと戦ったことはあるか?」
「何回かは。 でも勝ったのは1、2回くらいかな。」
戦っているだけまだましか。 それでただ組んだだけとか言われたら、どこから言おうか迷っていたところだ。
「一応聞いていいか? このデッキはどんな風に作った? そもそもちゃんと考えてデッキは組んだんだよな?」
「も、もちろんだよ。 でも、カードのモンスターとはいえ、互いに傷付くのは、あんまりみたくは無いんだけど・・・そうも言ってられない・・・んだよね。」
どうも感情移入をするのが強いみたいだ。 その心意気は悪いことではないが、強すぎると本当に戦えなくなる。 それだけは避けていかなければならない。 覚悟は決めてもらおう。
「カンタ。 これは俺の経験上だけどな。 ああいった奴等は、1人が失敗しようが、同じ様なことを繰り返すだけなんだ。 だからこそ明日も同じことをするぞ。 で、俺の予想じゃ、俺が追っ払った奴よりも上の奴が挨拶をしに来るだろうな。 「うちのもんが世話になったな」って。」
「・・・!」
「俺は必ずいる訳じゃないし、守ってやれるのがお前だけなら、尚更負けちゃいけないんだ。 ・・・分かってくれるよな?」
「・・・うん。 その為に君に頼んだんだから。」
いい心意気だ。 とはいえこのままじゃ確実にジリ貧で負ける。 だが最初の4枚を見ても、デッキとしてはあまりにもコンセプトが・・・
『魔法カード:マイナスイオン レアリティ 水色 コスト 4
自分フィールドに攻撃力0のモンスターが存在する時、このターン自分フィールドのモンスターは相手モンスターと戦闘を行う時、戦闘処理を行わずに破壊する。』
『モンスター:コンセントワーム レアリティ 紫 コスト 6
種族 軟体生物
このカードがフィールドから捨て場に送られた時、自分フィールドのモンスター全てに攻撃力+5を与える。
この効果を受けたモンスターが、相手モンスターを戦闘及び効果で破壊した時、攻撃力を+3上昇させる。
ATK 0 HP 8』
『モンスター:スクラッチフィッシュ レアリティ 銅 コスト 12
種族 魚族
このカードが戦闘を行う時、自分フィールドに存在するモンスター1体を捨て場に送らなければ攻撃できない。
このカードの攻撃力はフィールドのモンスターの数×4上昇する。
ATK 0 HP 18』
・・・・・・いや、これはこれでデッキが成り立っているかもしれない。 後は効果的な魔法と装備カードを揃えれれば・・・
「セイジさん?」
「カンタ。 パックってこの世界に来てからどのくらい引いた?」
「え? ええっと、初回の10パック位かな? 後はデッキが出来たからもういいかなって・・・」
「よし、それじゃあありったけ引いてもらおうか。」
「い、今から?!」
「心配するな。 俺も最後まで付き合うぜ。 これもお前のためだ。 とことんやっていくぞ。」
そうして俺達は深夜帯になるまで目一杯デッキを組み直した。
久しぶりにカードのテキストを書いたのですが、その一部のカードだけで、勝てるとは微塵にも思っていません。 あくまでも「そういうカードを持っている」というのが前提なので




