強欲、奪還、末路
『スキル:強欲な強奪
このプラポレーションタイム時の召喚、魔法、装備、領域展開を出来なくする代わりに、相手のフィールドのカードを全て自分フィールドに展開する。』
全ての準備行動を破棄する代わりに相手のモンスターを奪う効果。 そこまで強欲なスキルを所持していたのか。
「お前のものを、全て俺のものとさせてもらうぞ。」
「ぐっ・・・」
そしてこの効果の厄介なところは、放棄するのはあくまでも「プラポレーションタイム時での行動」。 つまり「コンバットタイム時の攻撃や効果を使用する」事は可能な部分にある。 これからベルジアは奪われたモンスター達からの総攻撃を受けることになるのだ。
「コンバットタイム! ふふふっ。 今の今まで仲間だったモンスター達に嬲り殺しにされる気分はどうだろうな?」
「・・・下衆が・・・」
俺も、見えはしないがおそらく零斗さんも同じ感覚だった。 どうやらあいつやダイトを送った神様って奴は、多分自分が楽しめればそれでいいと思ってるに違いない。 他の迷惑なんか考えてないからこそ、与えたスキルも強力であり、相手を困らせることに特化したスキルになっているのだろう。
「ま、なんと言われようと、このモンスター達は俺のものだ。 ダメージが半分になるのが残念だぜ。」
前のターンで使用した「痛みの分散」の効果の事を言っているのだろう。 だが3体分の攻撃力を受け止めるのは、かなりの痛手となる。
「そら行け! お前達の主に攻撃を仕掛けろ!」
向こう側に行ったモンスター達がベルジアのライフコアに攻撃を始める。 攻撃力の半分のダメージとは言え、減るのは確か。 ただでは済まないだろう。
「うっ・・・ぬっ・・・ぐぅ・・・!」
ライフコアを削られつつもまだ膝は挫けないベルジア。 風前の灯火、とまではいかなくてもライフコアはかなり削られた。 そしてモンスター達は奪われたままだ。
「クールタイムに入り、エンディングを迎える。 くくくっ。 本当に楽しいなぁ。 俺よりも優位に立つ奴、俺に対して慈悲を貰おうとする奴、俺の欲しいものを持ってる奴。 そう言った奴らから根こそぎ奪う。 しかも制約に則ってるから破ることも許されない! いい世界に来たもんだぜ!」
こいつが前の世界でどんな生活をしてきたのかまでは分からないが、少なくともまともな人生は送ってきてないだろう。 そんな想いをベルジアは膝が崩れそうになりつつも立つ事だけを考え、そしてデッキに手を添える。 そして
「・・・私のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム・・・」
このターンで対処をしなければ次のターンで決着が着いてしまう。 ベルジアにとっての事実上のラストターンになることは避けておきたいと思っているだろう。 そして引いたカードをベルジアは確認する。 そしてベルジアはカードを見て呟いた。
「信じればデッキは答えてくれる・・・そう言っていたのも、セイジだった。 それが今、私にも伝わった! 私はコストを10支払い、魔法カード「契約主との絆」を発動する!」
『魔法カード:契約主との絆 レアリティ 銅 コスト 10
フィールドの全てのモンスターは本来の所有者のフィールドに戻る。
自分フィールドに戻ったモンスターの種族が「竜族」だった場合、攻撃力を10上昇させる。』
「なに!? 本来の所有者にだと!?」
「貴殿が奪っていった私のモンスター。 私の名の元に、返して貰うぞ!」
そうしてベルジアの所に戻ってきた3体の竜達。 だが居心地が悪い(ように見える)のか、ベルジアに対して落ち着きが見られない。 一度ベルジアの元から離れ、また戻ってきたともなれば、気まずくもなるだろう。 しかもベルジアに対して命令とは言えライフコアを自分達で減らしてしまったのなら、尚更。
「案ずるな。 私はお前達を取り戻せたことだけでも、十分だと思っている。 私とて、あのようなスキルの対処が出来なかった事を嘆きたい位なのだから。」
その言葉に感化されたのか、安堵をしているのと同時に、スキルの効果とは言え、ベルジアのライフコアに攻撃を加えさせられた目の前の敵に、怒りと言う牙を剥き出しにした。
「ああ、分かっているさ。 この行為が本来どれだけ相手が怒りを抑えながらやっているかと言うことが。 だからこそ私も、このスキルをもって全てを終わらせてやる事としよう! スキル「我が命を力に」発動!」
そう叫ぶと砕けかけていたライフコアからエクトプラズマのようなものが放出されて、ベルジア達のモンスターに入っていく。 それに呼応するかのように、力を付けた竜達は、雄叫びをあげるのだった。
「コンバットタイム! バリスタワイバーンよ! その力を持って敵を粉砕せよ!」
ベルジアが攻撃を仕掛ける。 相手の手札は多い。 警戒をしなければならないだろうとは思ってはいるが、それ以上に無理矢理相手のものを奪った、奴の所業に怒りを露にしていた。 そして敵はなにも出来ずに、モンスターを粉砕されるのだった。
「スプレットレックス! 奴のライフコアを噛み砕け!」
スプレットレックスの突進に加え、その獰猛な牙がライフコアを砕いていく。 この状況でも相手はなにもしてこない。 いや、出来ないのだろう。 奪うことだけを考えていたからか、自分を守る術を身に付けていないのが分かった。
「くっそっ! 俺は神に選ばれたんだろ!? 負けるわけが無いんだろ!? こんなはずじゃ無かっただろ!?」
「今さら自分を産み落とした神に対して意味の無い問いを乞うか。 私自身もこうなっていたのだろうと考えれば・・・今となっては吐き気を催す。」
そんなことを話している中で、使い魔の攻撃準備が整ったようで、ベルジアは攻撃命令の構えを取った。
「貴殿は自分の身の丈よりも大きい存在に手を出したのだ。 その償いは、貴殿自身の身で払って貰うぞ! 神からの鉄鎚を、その身に味わえ!」
攻撃命令が下され、使い魔は一撃を放った。 そしてライフコアが「0」になったことを確認して
「クールタイムに入り、エンディングを迎える。 これが、貴殿の末路だ。」
『勝者:ベルジア・アスラン これにより、アリフレア、アリカの所在に変化はありません。』
AI領域が解けていくが、これで完全に終わったわけではない。 奴のような身勝手をこのまま野放しには出来ないが、今回戦ったのはベルジアだ。 この力は使えない・・・そう思っていると、俺の手が光始めた。 しかも前にダイトに使ったような感覚ではない。
「まさか、この力を一時的にベルジアに託せるのか?」
だがこの力をベルジアに託したところで、説明のしようがない。 しかし奴を放置するわけにもいかない。 決断の幅は少ないが、やってもらうしか方法は無い。 俺はベルジアに近付く。
「ベルジア。 お前にこの力を一時的に貸す。」
「これは?」
「俺が本物の神様から授かった力、とだけ思っておいてくれ。 あいつをもう一度神様のところに戻す力を宿してる。 俺もあいつがこの世界に野放しになってる姿を見たくはない。 本来は俺の役目なんだが、ベルジアがやっちまったから、お前が全ての決着をつけるんだ。」
そう言って俺はベルジアの手を取る。 そして力が行ったことを確認して、後はベルジアの行動を見守る事にした。 1つだけ確信があるとするならば、ベルジアはあの力を主の目的以外では使わないだろうということだ。 そもそも俺が授かった力であるため、俺の意思に反するような事は出来ないようになっているだろうが、それを踏まえての意見である。
ベルジアは対戦相手に近付き、そして告げた。
「な、なんだよ? それ。」
「これか? これはな、神の力が宿っているのだそうだ。 あちらに貴殿に似た男が居るだろう? 彼はセイジと言って、貴殿と同じように、神の加護によってこの世界に来たのだそうだ。」
「ってことは、あいつも転生者って事か?」
俺の方を見るなり、なにかを呟き始める。 そして口元がニヒルに笑った。
「なぁ。 あんたの強さを見込んで、あいつをこちらに引き寄せてきてくれないか? 同じ転生者なら話も通じるだろうしな。 あぁ、ちゃんと見返りはやるさ。 俺が今まで奪った来たものを、欲しいものをやるよ。 どうだ? 悪くない話・・・」
完全に話が区切られる前に、ベルジアの右手が煌々と光りだした。 既に覚悟は出来ていたようで、その覚悟に対して油を注いだようだった。
「別に貴殿となど最初から馴れ合うつもりなどない。 それに私はセイジから力を授かっているのだ。 上下関係位は分かって欲しかったものだな。」
そしてベルジアは煌々と光る手を男に向ける。
「もう二度と会うことはないだろう。 神の信託をもう一度よく聞いておくことだな。」
そして2人目の転生者はその場から消えていった。 俺はベルジアに近付き、貸していた力を返して貰う。
「お疲れ、ベルジア。」
「あぁ。 しかしこのようなことになんの価値が・・・」
「あんた! 一体なにしたのよ!」
俺達の会話に割って入って来るように取り巻きだった一人がベルジアにつっかかった。 そこで俺は思い当たった。 前回のダイトの時はいつの間にかギャラリーが掃けていたので、大事にはならなかったが、今回はそう言うわけではないので、向こうからしてみれば俺達が悪者だ。
ベルジアも彼女達の罵詈雑言に困惑している。 と、俺はなにかの気配を感じて空を見ると、いやに黒い雲が不自然に空を覆っており
大きな雷が落ちてくる。 あまりの眩しさに目を開けていられず、次に目を開けると、まるでそんなことが無かったのように街は賑わっており、
「あれ? あたしなんでこんな場所に・・・? お母さんの所へ戻ってお仕事手伝わないと。」
先程までベルジアにヒステリックにつっかかってた女の子達もあちらこちらに散り散りになっていった。
「・・・なにが起きたんだ?」
ベルジアも困惑している。 だが俺にも分からなかった。 あの雷の中になにがあったのか。
一体何が起きたのかは、次回明らかに。
戦闘パートが地味に長いと感じますが、現実でのカードゲームよりはテンポは速い方だと思います。 多分




