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カードゲーム世界で始める下克上  作者: 風祭 風利
第3章 世界の異変と転生者
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未来だったかも知れない姿

「うわぁ、凄い凄い! 本当に空を飛んでる! 上から海が見れるなんて夢にも思わなかったわ!」


 後ろで興奮気味のアリカを尻目に、俺と零斗さんは目的地に必死に飛んでいたベルジアからの伝言が正しいことを信じて。


「まさかベルジア殿の武者修行中に遭遇するとは、よもや想像もつかなかったで御座るよ。」


 探す手間が省けたと言えば、聞こえはいいんだけどねぇ。 こっちとしては少しでも休みたかったというかなんと言うか。


「そんなことをぼやいても仕方ないか。 結局は誰の思い通りになんか動いてはくれないんだ。」

「ものは考えようで御座る。 手掛かり無く膠着状態が続くか、休み無く情報が手に入るか。 セイジ殿にとって、どちらの方が良いかはセイジ殿次第で御座る。」


 零斗さんの言葉に俺は頭を抱える。 元々が元々なだけに、目的が無いよりはマシかとも考えてしまうのは重症かもしれない。


「サヴィさんが、言っていた、座標は、ここなのですか?」

「いや、正確にはもう少し先だ。」


 空を飛んで数分後、ようやく陸地にたどり着いたのだが、先程のカードバトルでの精神的消耗がまだ抜けきっていなかったため、長時間の飛行をあえなく断念した。


「ここは今まで通ってきた大陸とは違うで御座るな。」

「ええ。 おそらくあいつも、前に通ってきたルートじゃ武者修行にならないと考えていたんでしょう。 お陰でこっちの土地勘がさっぱりですよ。」


 奴に対して文句を言うつもりはない。 むしろこちら側にいるというのが分かっただけでも十分な情報量だ。 一度合流して、そこから話を聞くこととしよう。


「それにしてもその肝心の彼がいないわけだけど。 街にいるって話なら、もっと奥よね? なんでこんな森に入っちゃったのかしら?」


 アリカはそんな疑問を洩らすが、俺達には奴が外で待機している理由は分かる。 奴が見つけたのは言わば敵の腹の中のようなもの。 つまり下手に中で合流して悟られてはいけないのだ。 そうこうしながら歩いている内に、一つの気配を感じた。


「セイジ殿。」

「ええ。 下手に動くと的になりますね。」


 そして2人にはしゃがんでて貰うようハンドサインを送る。 アリフレアは何度か俺達とやり取りをしているのですぐに分かるが、アリカの方は分からなかった様だが、すぐにアリフレアがフォローに入り、一緒に身体を屈めた。


 そして俺達が数歩歩いたところに、木々の間から剣先が伸びてきた。 それを俺はすかさず回避する。


「うわっ!? なにっ!?」


 アリカが動揺するが関係無い。 次々と飛んでくる剣先の押収をこれでもかと避け続ける。


「セイジ殿! 加勢するで御座るか!?」

「いや、心配はない。 小手調べだろうし、向こうも本気じゃない。 っていうか、向こうも気付いてやってるだろ、これ。」


 そう言うと剣からの攻撃が止まる。 そして一つの影が姿を現した。


「ふっ。 そちらの腕も、鈍ってはいないようだな。」

「ま、最近はよっぽど野生動物とも戦ってないしな。 刺激にはなったよ。」


 森の中からベルジアが現れる。 武者修行と言って2週間も経っていないので、なんというか変わり映えしないのは当たり前だなと思ってしまった。


「それで? 例の奴はどこにいるんだ?」

「その前に一つ頼みがあるのだが。」


 頼み? とこちらが反応しようとしたと同時にベルジアの腹の虫がなり始めた。 そしてベルジアはその場に崩れた。


「べ、ベルジア!?」

「すまないが・・・食事を取らせてくれないか・・・? 空腹感に耐えられなくてな・・・」


 そんな拍子抜けで間抜けな声が聞こえてきた。


「いやぁすまないすまない。 諸事情で食事がまともに取れなくてなぁ。 良くも悪くも助かった。」

「そいつは良かったよ。」


 緊迫した空気が一気に和やかムードになったことに少しだけ呆れつつ、俺は話をすることにした。


「それで結局お前の見た人物ってのは、一体なんなんだ?」

「それは今の私の現状と重ねて説明をしよう。」


 ん? ベルジアの今の現状?


「この先にそれなりに大きな都市がある。 その人物はその都市で1ヶ月ほどしか暮らしてはいない筈だったのだが、その1ヶ月でとんでもない資産を手に入れた。 しかもカードバトルでの制約によって。」

「・・・っ! いよいよカードバトルでの制約を逆手に取ってきた奴が現れたか・・・!」

「あぁ。 最初こそコソ泥相手にやっていたようだが、その事に味を占めてしまえば、まずは弱そうな市民から狙っていく。 このまま奴を野放しにしてしまえば、ゆくゆくは貴族にも相手をしていき、やがて都市を食い潰す可能性が見えたのだ。」

「それとお前の空腹になんの関係が?」

「外とは連絡をしない約束でもされたのだろう。 都市に訪れた人間に対して、衣食住を提供しないと言うことになっているようだ。 現にここを通った商人が通るためだけに寄ったにも関わらず、制約カードバトルによって、荷物の半分近くを取られていたよ。」


 どうやらよっぽどの暴君が送られてきたようだな。 ちっ、接点を持たせる余裕すら与えないつもりか。 そいつらを送った神は。


「なんたる愚行・・・! よもやそのような者がこの世界に解き放たれたとなれば、拙者も黙って見ているわけにもいかぬで御座る! 御座るが・・・」


 零斗さんの中で一つの葛藤が生まれている。 奇襲からの斬り捨て御免。 これが一番手っ取り早いのは確かだが、それをしてしまえば同じ穴の狢。 それに俺達はあくまでも神のところに送り返すのが目的だ。 簡単には首をはねることなど出来ない。


「零斗さん。 反吐が出そうな気持ちはここにいる全員が思っていることです。 ですが、今回ばかりは親の仇のような態度は改めて下さい。 返す方法はあるんです。 血生臭い事をわざわざする必要なんて一切無いんですから。」

「セイジ殿・・・ すまぬ。 拙者も頭に血が昇ったようで御座る。」

「怒りたい気持ちは分からんでもないですがね。」

「それで結局どうする? セイジが強行突破を狙うのならば、私もそれについて行くぞ。」


 正面突破か・・・ まあどうせ干渉してくるのは向こうからだろう。 こそこそやっても無駄かもな。


「街に入らないことには始まらないからな。 ベルジア。 街には普通に入れるのか?」

「入ることは誰でも可能だ。 ただ入る際にはある程度荷物は無くなることだけは覚悟しておいた方が良いかもしれない。」

「・・・それだけ奴が強いって事なんだろ? お前は戦ったのか?」

「いや、まだだ。 だが私の近くにいたものが暴君と戦った時に観戦していたが、残念ながら全貌は見れなかった。」

「ならお前の見解で構わない。 奴と戦って、勝てるか?」


 これはベルジアにとってかなりいやらしい質問をしたかもしれない。 だが見解を見れなければ、カードゲームに置いては先を見ていないも同然。 さぁ、どう答える?


「引き運、戦略、妨害。 それらを全て取り入れた上で答えるならば・・・」


 ベルジアは考えるために閉じていた目を開け、顔を上げる。


「良くて五分五分。 だが奴の方が上だ。 気を抜けば逆転される、そんな戦力差だと私は思う。」

「その理由はなんだ?」

「あれがセイジと出会う前の自分と少しでも重なったからだ。」


 俺と会う前の?


「私もなにかをするためなら他の犠牲など軽いものだと思っていた。 そう思える時期があった。 だからこそ、奴とはどこか似たようなところがあった。」


 昔の自分と重ねて、今の自分と戦わせたらどうなるか。 そんな結論に至ったわけか。


「ベルジア殿。 ならばそれはひとつの試練とも言えよう。」

「試練?」

「うむ。 人は誰しもが露払いしたい程の過去を一つや二つ持っているもの。 そこに大小は関係無い。 しかし乗り越えなければならない過去があるのならば、ベルジア殿にとってはそれが今なのだ。 その者をお主は自分の過去と捉え、挑みに行けば良い。 それだけで御座ろう。」


 零斗さんの言葉には深い重みがあった。 それもそのはず。 この人は幾多の命に手を掛けたのだ。 重みが違って当たり前なのだ。


「セイジ。 その者とは私が戦うことにしてくれないか? 次期領主として街の民を守ることが出来ることを自分に証明するため。 そして、そんな自分の過去を乗り越えるために。」

「ああ、それは構わないぜ。 今日は休むぞ。 明日に備えよう。」


 そうしていつの間にか寝ていたアリフレア達とは別のところで、俺達は静かに眠るのだった。


 翌日俺達はその暴君のいる街へと入るを 隠れることなどはない。 堂々と入り、街を見渡す。 すると宿屋の店員も、商店を出している店長も、料理屋の店員すら、どこか疲弊しきっていた。


「これは・・・ここまで活気が失われるものなのか。」

「一人の略奪のようなものだからな。 商売どころではないのかもしれぬな。 ・・・む、奴ではないか?」


 零斗さんが指差す方向にそいつは確かにいた。 まるで御輿に担がれているかのように、屈強な男達が上に座っている人物を椅子ごと担ぎ、その男の回りには女性が大勢囲んでいた。


 そしてなによりもその男が俺達の世界から送られてきた異世界人だと言うことが、見たまんまに分かった。 正しく奴だと言わんばかりの存在感である。


「ん? そこの女達はまだ捕まえてなかったか。 おい、そこの旅人共。 こちらにその女達を渡しな。 逆らわない方がいいぞ。 負ける気があるならかかってきても構わないがな。」


 こちらに目があった瞬間に、まるで適当な因縁をつけて、なんでもいいから戦えと言わんばかりの暴言である。 こちらの世界で有頂天になっているのが分かる。 言ってることもやってることも無茶苦茶だ。


「・・・この者達は貴様に渡せる程命は軽くない。 もしそれでも欲しいと言うのならば私と制約カードゲームで勝ったらにするんだな。」

「ふん。 そうやって潔い奴ほど、負けた後の悔しさが生まれると言うもの。 いいだろう、やってやるさ。」


『制約内容:アリフレア、アリカの所在について』


 そしてAI領域が展開される。 俺達は声は届かないが、ちゃんと見える位置に陣取る。


「セイジ。 私は、過去の私を越えて見せる。」


 覚悟は出来ているみたいだな。


『さあ、劇場の始まりだ!』

次回は久しぶりのベルジアでのカードバトルになります。


他キャラのみで戦うのは珍しい事ではないのですが、やはり主人公に目移りしてしまいますよね。

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